ロート製薬、女性育休取得率・復職率ほぼ100% 妊娠検査薬発売きっかけに取り組み進む

3・8 国際女性デー 半径5mからの一歩

大阪工場で妊娠検査薬の製造ラインを確認する副工場長の金松美さん(ロート製薬提供)
大阪工場で妊娠検査薬の製造ラインを確認する副工場長の金松美さん(ロート製薬提供)

目薬や塗り薬、基礎化粧品などでおなじみのロート製薬。創業126年の老舗だが、従業員の女性比率は約60%、女性の育児休暇取得率や復職率はほぼ100%という女性活躍の先進企業でもある。

ロート製薬の取り組みポイント
✔ 妊娠検査薬をきっかけに出産、育児への理解が進む
✔ 社員同士の交流機会が産休や育休を取りやすくする
✔ 外部相談窓口の設置やセミナーなど介護支援を本格化

仕事の継続に迷いなし

女性が働きやすい環境がつくられ始めたのは最近のことではない。妊娠検査薬を1992年に日本で初めて一般用医薬品として発売したころから、環境づくりが進んでいる。結婚、出産、育児を経て働き続けてきた多くの女性たちの経験の積み重ねが、今の状況に反映されている。

化粧品などを生産する大阪工場で副工場長を務める金松美さん(54)が初めて育児休暇を取得したのは2000年。出産後に復職する女性はその頃まだ10人に1人もいなかったが、「仕事は続けることを決めていたので迷いはなかった」と振り返る。

当時は品質部門に所属しており、妊娠中は胎児に悪影響がないよう、品質検査などに使える薬品に制約があったという。だが、「上司の男性がうまく仕事の配分をコントロールしてくれたので不安はなかった」と話す。

社内で運動会や慰安旅行、誕生会も

基礎研究に従事していた高木恭子さん(46)は11年に出産。産休・育休後は残業の少ない部署に異動する女性が多かった中で、高木さんは研究を続けることを選んだ。「育休明けも仕事を制限されることはなく、スムーズに復帰できた」という。

産休や育休の体験を語るロート製薬の金松美さん(左)と高木恭子さん=大阪市生野区
産休や育休の体験を語るロート製薬の金松美さん(左)と高木恭子さん=大阪市生野区

2人が口をそろえる「出産、育児に対する周囲の理解」は、1992年の妊娠検査薬発売が一つのきっかけになっている。当初はなぜその薬が必要なのか理解してもらえず、社員が全国の薬局に足を運んで説明して回ったという。発売を主導した社員は、後にロート初の女性役員に就任しており、大きな影響を与えたことは間違いない。

さらにもう一つの要素が、昔ながらの「アットホームな職場環境」だ。ロートでは現在も社内で運動会や慰安旅行、誕生会を開催しており、規模の大きい企業であるにもかかわらず「顔と名前が一致する社員が非常に多い」(金さん)という。産休・育休だけでなく、復帰後も子育て中は急な早退などが避けられないが、相手のことを知っていると「頼る方も、頼られる方も負担を感じにくい」(高木さん)という利点がある。

介護のセミナーに141人参加

そんなロートが近年注力しているのが、仕事と介護の両立を支援する体制づくりだ。ロート社員の平均年齢は42・3歳と比較的高いため、親世代の介護が始まる社員が増えてきている。昨年には介護に関する外部相談窓口を開設。昨年7月に開いたセミナーには141人が参加した。人に寄り添う地道な取り組みを続けることで、男女問わず働きやすい環境が育まれている。(桑島浩任)

会員限定記事

会員サービス詳細