スーパーコンピューター「富岳」の正式運用が開始された。開発前の準備期間を含めると、10年半の歳月が流れたことになる。
富岳の開発は、順風満帆ではなかった。毎年のようにいろいろな壁にぶつかり、システム研究開発者と社会的、科学的課題を解決するためのソフトウエア研究開発者とが密に連携し、解決してきた。関係者の皆さまに深く感謝申し上げる次第である。
私という人間は、「趣味は仕事です」という分類に含まれ、「好きなことを仕事にしていて、いいですね」とよく人に言われる。しかし、周りからそう見えても、富岳開発のフラッグシップ2020プロジェクトのリーダー職務は、自分には合っていないと感じていた。
私は生涯プログラマーに憧れており、開発現場全体を見渡して調整するリーダー職よりも、現場でソフトウエアを設計し、自らプログラミングするほうが好きな人間である。
米国大統領の妻、ジル・バイデンさんは、ファーストレディーになっても教鞭(きょうべん)をとるということに関して次のように述べている。
Teaching is not what I do.It’s who I am(教えることは仕事ではなく、自分自身なのです)
同様に私はProgramming is not what I do. It’s who I amと言いたい。