昨年12月に右肘クリーニング手術を受けた影響を考慮され、2軍の宮崎・西都で春季キャンプをスタートさせたヤクルト・村上宗隆内野手(25)が11日に1軍キャンプ地の沖縄に入った。今季から副主将を務める主砲が2022年以来3年ぶりに西都で過ごした10日間。将来を担う若い選手にとっては目に映る全てが、成長への〝教材〟になっただろう。
練習前の念入りな準備、率先して声を出す姿、圧倒的な打撃…。村上も自身がヤクルトの先輩を見て学んできたことを後輩たちへ継承していく意思を持っており、塩見や宮本、北村拓ら中堅選手に「僕らで盛り上げましょう」と声をかけ、周囲をも巻き込んで明るい雰囲気をつくった。
ときには「もっとガツガツしてほしい。やっぱり人の一歩先、二歩先を練習の中からやっていかないと、2軍の選手は上には上がれない。そこに早く気づくことも大事」などと、厳しい言葉も発信してきたが、その思いはしっかりと後輩に伝わっていた。
ドラフト4位の田中陽翔内野手(18)=群馬・健大高崎高=は、ノック中に遊撃のポジションで声を張り上げるようになった。「村上さんを見て、自分も声出しを頑張ろうと思いました。チームを盛り上げることも大事。チームに貢献するためにもそういうところからやっていきたいと思った」。意識を変え、さっそく実行した。
ドラフト2位のモイセエフ・ニキータ外野手(18)=愛知・豊川高=は、村上から体の柔軟性を高めるストレッチを教わった。村上が、師匠である青木GM特別補佐から教わったもので「ノリさんから(モイセエフに)教えてって言われたので」と受け継がれた。モイセエフは「自分は体がかたいので、柔らかくして体をちゃんと使えるようにしたいと思っていた。ありがたいです」と感謝。教わった通りに朝、昼、夜と一日3回、取り入れるようになった。
2年目を迎えた育成の高野颯太内野手(19)はキャンプインした2月1日に村上から打撃に関する助言を受けた。打つときに頭が前に動く悪癖を指摘してもらったといい「自分では気にしていなかった部分。そういう見方があるんだと勉強になった。(声をかけてもらい)うれしかったです」と尊敬のまなざし。通算224本塁打を誇る偉大な先輩と接し、「ムネさんみたいなホームランを打てるバッターになりたい」と改めて決意表明した。
25歳の誕生日を迎えた2日には「なかなか若い選手がついてきてくれない。もうちょっと僕のことを知ってもらうのもそうだが、僕も彼らのことを知れるようにコミュニケーションをとっていきたい。チームがいい方向にいくように、やれることはやる」と話していた村上。背中で見せるだけでなく、寄り添うこともして若手を引っ張った。
背番号55の一挙手一投足を、目を輝かせながら真剣に見つめる〝若燕〟を見て感じた。村上が2軍で過ごした10日間は未来のスワローズに大きな意義をもたらすだろう。(武田千怜)