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- 2025/01/28 掲載
想像力を宿すAI「世界モデル」とは?東大松尾氏語る、仕組み・活用事例
生成AI活用の意外な「手間」
人手だけでは時間がかかる作業を一瞬で片づけてくれる生成AI。ただ、そもそも基本的には生成AIをきちんと動作させるためには、正確かつ十分な量のデータをそろえなければいけません。たとえば無人の自動配送ロボットを動かすためには、道路に関するデータを入力する必要があります。おおまかな地形については既存の地図で十分でしょうが、小さな段差や障害物などの情報については、新たに人手を使って集めなければいけないところもあります。
将来的にはそうした作業もロボットによって自動化されるかもしれませんが、現状は生成AIや自動運転が普及する過渡期にあたり、どうしても人力に頼らざるを得ない部分が残っているのです。
もしデータ自体の条件設定がまちまちだったり、データが不足していたりすると、自動配送ロボットがルート設定や走行でミスをして、立ち往生や横転といったトラブルを起こしてしまうかもしれません。
しかも、仮にデータをそろえたとしても、天候や事故などで道路の状況が変わってしまうかもしれません。
単純作業を肩代わりしてくれるはずのAIが、データを収集した上でさらに常に更新し続けることを人間に要求すれば、社会全体で見た手間暇の総量はかえって増大してしまうかもしれません。
AIの懸念を払しょくする「世界モデル」
そこで、不完全なデータ環境でもできるだけAIを正常に動作させるために考え出されたテクノロジーが、「世界モデル」です。AIが人間と同じように自ら「想像」して情報を補完し、現実世界の複雑な状況を直感的に理解できるというものです。
2024年10月、自動運転などモビリティ分野の官民の関係者間の連携枠組みである「モビリティDXプラットフォーム」のローンチイベントが都内で開かれ、AI研究の第一人者である東京大学の松尾豊教授が登壇。世界モデルの研究を進める意義について語りました。
松尾氏は自ら技術顧問を務める松尾研究所(松尾研)で、ChatGPTの登場で生成AIが話題となる以前の2021年から、世界モデルの研究・人材育成を行う講座を始めています。
松尾氏は、世界モデルの仕組みについて理解しやすいよう、人間が自動車の免許を取得するプロセスを例に取って説明しました。
「たった30時間程度のトレーニングで、ほとんど事故を起こすこともなく試験に合格し、公道を走れるようになる。これって一体、どんなアルゴリズムなのかを考えてみてください」(松尾氏) 【次ページ】生成AIの評価学習とはまったく異なる仕組み、想像力を宿すAI
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