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軸から人体を描く美術解剖学

加藤公太:著者

「棒人間」が描ければ「人体表現」は難しくない

「棒人間」だから誰にでも簡単に描ける!

■はじめに

以前、「人体を最も単純化したら何が残るのか?」という質問が出て、私はとっさに「軸ですかねぇ」と答えました。

自分としては、なんでそんな答えが出てきたのか、驚きでした。骨や筋肉の形についての答えが出るか、と思っていたのです。

答えた直後になぜそう思ったか整理すると、最も単純化した人体像を想像したとき、頭の中に棒人間がイメージされたからだと思います。解剖学的にいうと、棒人間のは腕や脚、骨格など長軸の中心を通る仮想軸に該当します。それでと答えたのです。後から加えると、フレーム です。

軸は、幾何学的なと同じで、形も量もありません。意識しないと見えない概念です。フレーム は、頭蓋骨のような丸いボリュームを捉えるときに球を使うなど、幾何図形に置き換えて捉えるような場面で使われます。美術大学の授業で、学生さんの「全身骨格を描く」という課題を見ていたとき、「骨の軸がずれているな」とか「フレームがないのかな」と思うことがけっこうありました。意外に軸を意識していない人がいらっしゃるのかなと思ったのです。

棒人間は旧石器時代の壁画から現代人まで一度は描いたことのある、最もシンプルな人体像といえますが、プロの作家でも意識する普遍的な概念でもあります。プロが作る写実的な表現でも軸がしっかりしていないと歪んで見えるため、彫刻やフィギュア造形では、粘土で人体を造形するときに、体の長軸を通過する軸に似たを針金や木材で作ります。

本書では「棒人間」を美術解剖学の専門家が本気で解説することで、軸から全身を表現するための目と知識、すなわち美的感性 を養っていきます。本書を学習していくことによって、アタリがすばやく取れるようになったり、作画や造形の歪みが少なくなったり、形や姿勢の違和感に気がつくようになったりするでしょう。
輪郭から描く方法ではなく、芯から作るプロセスを体験して、中身が詰まったような人体像が表現できるように、描きながら練習していきましょう。

2025年1月 加藤公太

■第1章 人体の骨を理解する
胴体の骨
脊柱
椎骨
第2頚椎または軸椎
第1頚椎または環椎
仙骨・尾骨
頭蓋骨
胸郭
胸骨と肋軟骨の連結
鎖骨
上から見た鎖骨と肩甲骨の配置
肩甲骨
上腕骨
尺骨、橈骨
手の骨格
骨盤(男性)
骨盤(女性)
大腿骨
脛骨、腓骨
足の骨格
胴体の骨格
腕の骨格
脚の骨格

■第2章 骨を単純化してみる
脊柱の描き方
頭蓋骨の描き方
胸郭の描き方
鎖骨の描き方
肩甲骨の描き方
上腕骨の描き方
前腕(尺骨と橈骨)の描き方
手の骨格の描き方
骨盤の描き方
大腿骨の描き方
脛骨と腓骨の描き方
足の骨格の描き方
胴体の骨格の描き方
腕の骨格の描き方
脚の骨格の描き方

■第3章 他にもある骨の描き方を学ぶ
脊柱の描き方
頭蓋骨の描き方
胸骨の描き方
胸郭の描き方
仙骨の描き方
鎖骨の描き方
寛骨の描き方
肩甲骨の描き方
腓骨の描き方
上腕骨の描き方
尺骨の描き方
橈骨の描き方
手の骨の描き方
大腿骨の描き方
脛骨の描き方
足の骨の描き方

■第4章 実際に軸から人体を描く

定価:6,050円(本体5,500円+10%税)

書籍情報

  • 発売日:2025年2月28日(金)
  • ISBN:978-4-8156-2521-4
  • サイズ:B5判
  • ページ数:432
  • 付録:-

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著者紹介

著者・加藤公太

1981年東京都生まれ。美術解剖学者。2008年、東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。2014年、東京藝術大学大学院美術解剖学研究室修了。博士(美術、医学)。「伊豆の美術解剖学者(@kato_anatomy)」としてX(旧Twitter)や各地の講習会で美術解剖学を広く紹介している。Xフォロワーは41万人超。主な著書は『ポーズの美術解剖学』『名画・名彫刻の美術解剖学』。

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