フォーカスするためには、たぶんどうやってフォーカスするか(前回)に加えて、何にフォーカスするかを決める必要があって、今回は後者、つまり「フォーカスポイントを決める」方の話です。
スタートアップの初期は Y Combinator 的に言うところの Do things that don’t scale (スケールしないことをしよう)をはじめとした明確なフォーカスポイントがあると思います。ただ次第に自分たちでフォーカスポイントを決めなければいけなくなってきて、そのときにどのようにフォーカス先を意思決定すれば良いのか、どうすれば良い意思決定ができるのか、という問いが出てきて、その際に方法論の必要性が生じます。
そこで意思決定の方法論を検討するのですが、スタートアップのような情報不足や資源の制約下では、ゲーム理論をはじめとしたいわゆる規範的な normative 意思決定理論よりは、行動経済学や認知心理学の記述的な descriptive 意思決定からのアプローチが良いのかなと思い、Kahneman をはじめとした行動経済学の研究成果をベースにしています。
11. 11
Do Things That Don’t Scale
スケールしないことをしよう
Writing Code
and
Talking to Users
コードを書いて顧客と話そう
Make Something People Want
人が欲しいと思うものを作れ
最初期のフォーカスポイントは明確
93. 意思決定の際には WRAP フレームワークが便利である。このすべてを行えているか、チェックしな
がら初めて行くと良い。
Heath Brothers, Decisive 93
個人の意思決定のプロセスを持つ
選択肢を広げる
仮説の現実性を確かめる
決断の前に距離を置く
誤りに備える
iden Your Options
eality-Test Your Assumptions
ttain Some Distance
Before Deciding
repare to be Wrong
W
R
A
P
このフレームワークは
Decisive から引用
98. 意思決定は一朝一夕にうまくなるものではないが、様々な経験を通して練習を重ねれば個人のスキル
として身につくものと信じる。
Heath Brothers, Decisive 98
個人の意思決定のプロセスを練習する
選択肢を広げる
視野の狭窄を避けて新しい選択肢を見つける(べきか否かで考えない)、
複数の選択肢を同時検討する、同じ問題を解決した人を見つける
仮説の現実性を確かめる
反対意見など逆を考えて確証バイアスを避ける、ズームアウトとズー
ムイン(外部の視点とクローズアップ)、予測ではなく実験する
決断の前に距離を置く
一時的な感情を乗り越える(10分後、10ヶ月後、10年後を考える)、
後継 CEO ならどうするか考える、優先事項を明文化する
誤りに備える
未来を唯一の点でなく幅(大失敗と大成功)で考える、リスクの上限ア
ラームをセットする、プロセスを信じて しなかったこと を後悔しない
iden Your Options
eality-Test Your Assumptions
ttain Some Distance
Before Deciding
repare to be Wrong
W
R
A
P
107. Photo taken by TechCrunch
http://www.flickr.com/photos/tcdisrupt/4640172908/
107
CEO としての私の経
験からして、もっとも
困難な決断は知性より
も勇気を必要とした
- Ben Horowitz
@ Andreessen Horowitz
Hard Things about Hard Thing
108. CEO は常に不完全な情報しかない状況下で決定をしなければならない。典型的には Harvard
Business School のケーススタディの 10% 以下の情報すら持ち合わせていない (Ben Horowitz)。
そして時には何が正しい選択肢であるか自明なときに、間違った結論に向かわせる圧倒的な圧力を感
じるときもある。「人気があって容易だが間違った決断」と「困難で人気がなく、しかし正しい決
断」のどちらかを迫られたとき、勇気を持って後者を選ぶことが必要になる。
困難だが正しい決断をするたびに、人は少しずつ勇気を得る。
Hard Thing about Hard Things
108
決断には勇気が必要な時がある
知性 勇気