東京都多摩地域における井戸水の有機フッ素化合物(PFAS)汚染は、長期間にわたって広範囲で続いてきた可能性が出てきた。水道水に使われる水は、人々の健康や生命の安全に直結するはずだが、市民団体の再三の指摘にも都の動きは鈍い。背景には、国内ではPFASの明確な健康基準が定められていないことや、汚染源の可能性がある米軍基地への立ち入り調査が難しいことがある。(松島京太)
有機フッ素化合物 PFOSやPFOAなど多数あり、総称はPFAS(ピーファス)。水や油をはじく性質があり、泡消火剤や塗料、フライパンのコーティングなどに幅広く使われてきた。環境中でほとんど分解されず、人や動物の体内に蓄積されやすい。がんや心疾患による死亡リスク上昇との関連や、出生体重が減少する恐れが指摘され、近年、国際的に使用の禁止や規制が進む。日本の水道水などの暫定目標値はPFOSとPFOAの合計が1リットル当たり50ナノグラム。
◆ドイツの基準値を超える住民も
国は水道水におけるPFASの暫定目標値として1リットル当たり50ナノグラム以下としているが、健康影響に関する基準は示していない。一方、ドイツでは人の血中濃度の基準値が定められており、血液1ミリリットル当たりPFASの一種PFOSが20ナノグラム、PFOAは10ナノグラムを超えると影響が出る恐れがあるとされる。
米軍によるPFAS汚染が確認された沖縄県では昨年、基地周辺などの住民387人を検査し、27人がドイツ基準を上回った。2020年には都内のNPO法人が府中、国分寺の2市の住民22人を対象とした検査を実施し、基準を超えた住民がいた。
NPOは大規模検査を求めたが、都化学物質対策課の担当者は「コストに限界があり、PFASの知見も集まっておらず、血液検査は考えていない」と説明する。市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」が600人規模を目標に血液検査を開始したが、スタッフの手当などは寄付で賄...
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