あけましておめでとうございます。今年は、落語協会誕生から100年の節目の年です。関東大震災の翌年、1924(大正13)年2月25日、落語家たちが大同団結して発足、当時の都新聞(東京新聞の前身)が写真付きで報道しています。協会では、数々の記念の企画を準備中。百年実行委員長の林家正蔵副会長(61)に、協会の歩みを振り返りつつ、落語の魅力などをたっぷり語っていただきました。 (聞き手 ライター・神野栄子)
◆落語家がまとまる!
-実行委員長就任の経緯は?
協会の事務局から委員会を立ち上げる話が出て、お声掛けがありました。断れない体質なんです。協会員の皆さんに「手伝ってもらえませんか」と声をかけたら、80人以上の方が「委員になるよ」と言ってくださった。忙しい(柳家)喬太郎さん、(春風亭)一之輔さんも手伝ってくれています。
刊行物の発行、興行の顔付け、式典の手配…。先輩方の意見を聞きながら、若手の面白みのある発想力、俊敏な行動力に頼っています。個人商売で、まとまらないと言われている落語家が一つになって作業をしてくれている。うれしい限りです。
もう一つ大きなイベントとしては、現会長の柳亭市馬さんが5期10年の任期満了となり、6月には新会長が誕生します。
◆分裂騒動と人間国宝
-この100年の歩みの中で、大きな出来事は?
(三遊亭)円生師匠が協会を脱会(1978年)されて大騒動になりました。私は15歳で見習いでした。後に(立川)談志師匠も脱会(83年)し、落語立川流を創立しました。
大きいのは人間国宝です。(五代目)柳家小さん師匠が落語家で最初に認定され、柳家小三治師匠、五街道雲助師匠と、くしくも落語協会の師匠方(他には、上方の桂米朝さんが人間国宝)。能狂言や歌舞伎と違い、大衆芸能の落語が認められたのは特筆すべきことです。
◆芸を否定しない
-若手の落語家をいかに育てていく?
(古今亭)志ん朝師匠は(三遊亭)白鳥師匠が出てきたとき、「なんで客が笑うんだか分からないけど、面白そうだね」と否定しなかった。「こんなことをしたら師匠に叱られる」なんてことはないですから、どんどん面白いことをやってほしい。若い感性で落語を作り直してみるのもいい。人気がある若手、中堅は寄席を大事にしてくれている。寄席のお客さまに鍛えられるんです。
◆生きてるのも悪くない
-正蔵師匠にとって、落語の魅力とは?
落語に出てくる人たちは大酒飲みや間抜けな泥棒など、ダメな人ばかり。「生きてるっていうのはまんざら悪くないよね」と感じてもらえるのが落語の魅力。笑い事で済まない世の中だからこそ、せめてひとときでも笑ってほしいと思うから、こっちは本気で落語をやるしかないんです。
◆年に...
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