写真:島塚 渓
地図を見る普門院は今から約400年前の江戸時代初期に、松江の城下町の造成とともに創建された天台宗の寺院です。当初は別の場所に建てられていましたが、延宝4年(1676年)に火災で焼失すると、元禄2年(1689年)に松江城の鬼門の方角にあたる現在の位置に移されました。
写真:島塚 渓
地図を見る松江は内掘や外堀として開削された水路が縦横に広がり、城の防衛のみならず物資の輸送や漁場としても利用されてきました。その情緒は今でも感じることができ、「堀川めぐり」と呼ばれる屋根付きの小さな船を使った観光遊覧船を楽しむことができます。江戸時代に松江を治めていた大名茶人の松平不昧もしばしば城から舟を使い普門院を訪れ、茶の湯を楽しんでいたと伝えられています。
写真:島塚 渓
地図を見る普門院の見どころの1つが境内に建つ三斎流の茶室「観月庵」です。享和元年(1801年)に当時藩主を務めていた松平不昧からの信任が厚かった荒井一掌(あらいいっしょう)という三斎流(さんさいりゅう)の宗匠が建築に携わったと言われています。
三斎流は肥後熊本54万石の大名となった細川三斎を流祖とする流派で、歴代の普門院の住職によって松江藩で受け継がれてきました。
写真:島塚 渓
地図を見るこの茶室で最も印象的なのが天井近くまで開いた大きな円窓です。山にかかる月がこの窓から見えたことから観月庵という茶室の名称になったと考えられています。
2枚の障子を開けると床前の座席から月が見える仕掛けになっており、分厚い茅葺の屋根とともに独特の雰囲気を醸し出しています。
写真:島塚 渓
地図を見る屈まないと出入りできない茶室特有の「にじり口」から室内に入ると、四畳半と二畳が組み合わさっただけの極端に狭いスペースとなっています。
茶室は亭主と客がお互いの心を通わせることができるように設計されており、限られた広さの空間で飲食を共にすることによって心理的な距離を近づける工夫が施されています。
写真:島塚 渓
地図を見る普門院の庭園は玄関戸から観月庵にかけて飛び石を配置し、丸石を中心としながらも短冊状に寄せ集められた延段がアクセントになっています。樹木と苔が多く見られる庭園は静寂な雰囲気に包まれ、茶室への通り道としての役割を担っており、灯籠や手を洗う蹲踞(つくばい)が置いてあります。
また、庭には鯉が泳いでいる池があり、その池に映り込んだ月を眺めることができるというオシャレなスポットでもあります。
写真:島塚 渓
地図を見る観月庵と露地を挟んで向かい合うように構成された腰掛待合(こしかけまちあい)も、松江市の文化財に指定されている貴重な建物です。腰掛待合とは、お茶会で客が亭主の準備が終わるまで待つ場所で、小さな庵の側面にベンチのような腰掛が設置されています。
普門院の腰掛待合は、天井の材料に松江の宍道湖で盛んなシジミ漁で使われていた舟板を利用した珍しい施設となっています。
住所:島根県松江市北田町27
拝観時間:9:00〜16:00(1、2月は前日までに要予約)
観覧料:300円(観月庵拝観料)
2021年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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島塚 渓
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(2025/1/27更新)
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