肉や魚、食用油など食品中の脂質や、体脂肪の大部分を占める物質です。単に脂肪とも呼ばれますが、脂肪酸が3本、グリセロールと呼ばれる物質で束ねられた構造をしており、中性を示すことから、この名で呼ばれています。
その構成成分である脂肪酸は、動物性脂肪では飽和脂肪酸が多く、バターやラードのように、常温では固体として存在します。それに対して、植物性脂肪では、不飽和脂肪酸が多く、液状です。
中性脂肪は人や動物にとって重要なエネルギー源であり、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の摂取にも不可欠ですが、とりすぎると体脂肪としてたくわえられ、肥満をまねき、生活習慣病を引き起こします。血液中の中性脂肪の値が150mg/dl以上になると「高トリグリセライド血症」とされ、メタボリックシンドロームの診断基準にも盛りこまれています。
日本人の脂質エネルギー比率(摂取エネルギーに占める脂肪の割合)は戦後、急激に上昇し、これに伴って肥満も増加してきたことから、「健康日本21」では20代〜40代成人の脂質エネルギー比率を25%以下にする目標を掲げています。
ちゅうせい‐しぼう〔‐シバウ〕【中性脂肪】
中性脂肪
別名:トリグリセリド,トリグリセライド
【英】:TG
中性脂肪(TG)【ちゅうせいしぼう】
中性脂肪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/06 10:18 UTC 版)
中性脂肪(ちゅうせいしぼう、neutral fat)ないし中性脂質(ちゅうせいししつ、neutral lipid)とは、脂肪酸のグリセリンエステルを指す。狭義には常温で固体の中性脂質を中性脂肪と呼ぶ[1]。
グリセリン脂肪酸エステル
グリセリン脂肪酸エステルにはモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドが存在するが、血液中に含まれる中性脂肪のほとんどはトリグリセリドなので、中性脂肪はトリグリセリドと同義とする場合も多い。TG、TAGまたはTrigという略号で記されることが多く、脂肪酸とグリセリンが結びついて中性を示すので「中性脂肪」と言う。
中性脂肪の成分である脂肪酸は動物においてはステアリン酸、パルミチン酸など飽和脂肪酸が主であるのに対し植物においてはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸のような不飽和脂肪酸を多く含む。したがって、動物性の中性脂肪は室温で固体であるものが多いのに対して、植物性の中性脂肪は室温で液体の場合がほとんどである。
生体内においては、エネルギー貯蔵物質としての役割が大きい。砂漠に生息するラクダや卵殻内での鳥類では中性脂質を酸化して水分に転化する場面もある。また細胞中では部分的に脂肪酸を失った中性脂質(モノグリセリド、ジグリセリド)が細胞内での情報伝達物質として働くことも分かっている。細胞膜は、中性脂肪から取り出された脂肪酸を原料としたリン脂質から形成されている。
中性脂肪と健康
生活習慣病における中性脂肪の扱いは複雑で、一時期[いつ?]は完全に無視されるに至ったこともあった。つまりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)やHDLコレステロール(善玉コレステロール)が重要とされ、中性脂肪は軽視された。脂質異常症により血清トリグリセリド(TG)値が1,000mg/dLを超えるような場合には急性膵炎のリスクが上昇すると考えられており[2]、それさえ抑えれば良いとされた[誰によって?]。
しかし、世界の脂質異常症治療の最先端・最高峰を示すATP-IIIというステートメントでは、中性脂肪も補正すべき物質へと戻った。特にメタボリックシンドロームの診断基準に取り入れられ注目されている。また、肝硬変や肝臓がんの原因となるC型肝炎ウイルス(HCV)は、細胞内の中性脂肪を利用して増殖しており、さらに、ウイルスの「コア」と呼ばれるたんぱく質の働きで、細胞内の中性脂肪が増加すると報告され、治療に応用されることが期待されている[3][4]。
中性脂肪についての血液検査の参考基準値
中性脂肪についての血液検査の参考基準値は以下のとおりである。
項目 | 被験者のタイプ | 下限値 | 上限値 | 単位 | 最適範囲 |
---|---|---|---|---|---|
中性脂肪 | 10 – 39 歳 | 54[5] | 110[5] | mg/dL | < 100 mg/dL[6] or 1.1[6] mmol/L |
0.61[7] | 1.2 [7] | mmol/L | |||
40 – 59 歳 | 70[5] | 150[5] | mg/dL | ||
0.77[7] | 1.7[7] | mmol/L | |||
> 60 歳 | 80[5] | 150[5] | mg/dL | ||
0.9[7] | 1.7[7] | mmol/L |
脚注
- ^ 岩波理化学辞典(参考文献)
- ^ 日本腹部救急医学会; 日本肝胆膵外科学会; 日本膵臓学会; 日本医学放射線学会 (2021), 急性膵炎診療ガイドライン 2021 第5版, 金原出版, pp. 112
- ^ "C型肝炎ウイルス 中性脂肪利用し増殖"[リンク切れ]、読売新聞、2007年8月27日
- ^ Yusuke Miyanari, Kimie Atsuzawa, Nobuteru Usuda, Koichi Watashi, Takayuki Hishiki, Margarita Zayas, Ralf Bartenschlager, Takaji Wakita, Makoto Hijikata & Kunitada Shimotohno, "The lipid droplet is an important organelle for hepatitis C virus production.", Nature Cell Biology, 9, 1089 - 1097(2007).
- ^ a b c d e f Blood Test Results - Normal Ranges Bloodbook.Com
- ^ a b Adëeva Nutritionals Canada > Optimal blood test values Archived 2009年5月29日, at the Wayback Machine. Retrieved on July 9, 2009
- ^ a b c d e f Derived from values in mg/dl to mmol/l, by dividing by 89, according to faqs.org: What are mg/dl and mmol/l? How to convert? Glucose? Cholesterol? Last Update July 21, 2009. Retrieved on July 21, 2009
参考文献
- 長倉三郎 ほか(編)「中性脂質」『岩波理化学辞典』第5版 CD-ROM版、岩波書店、1998年。
関連項目
外部リンク
「中性脂肪」の例文・使い方・用例・文例
中性脂肪と同じ種類の言葉
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