火攻め
『古事記』上巻 オホナムヂ(=大国主命)が野原に入った時、スサノヲが火で周囲を焼いた。逃げ場がなくて困っていると、鼠が現れて、「内はほらほら、外(と)はすぶすぶ(内部は広いが、入り口は狭い)」と言う。オホナムヂはその地点を踏んで広い穴に落ち、そのままそこへ身を隠す。火は穴の上を焼け過ぎて行き、オホナムヂは無事であった。
『椿説弓張月』拾遺巻之5第56回 蒙雲国師の軍が、鎮西八郎為朝を出口のない森へ追いつめ、火をかける。為朝は「今はこれまで」と、刃(やいば)を腹に押し当てたが、思い直して、倒れた愛馬の腹を刀で断ち割る。馬の血を吸って喉をうるおし、馬の腸(はらわた)をつかみ出してその腹中に隠れたので、為朝は猛火にも焼かれることなく、危うい命を助かった。
『酉陽雑俎』巻12-474 徐敬業は英公(李勣)の命令で、林に入り獣を追った。英公は敬業を殺そうと、風を利用して火をつける。敬業は逃げ場がないと知って、馬の腹を屠(ほふ)り、腹の中に隠れた。火が通り過ぎてから、敬業は血を浴びて立った。英公は、「すばらしいやつだ」と、すっかり感心した。
★3.火攻めにあい、迎え火をつける。
『古事記』中巻 相武(さがむ)の国の国造(くにのみやつこ)が、「野の中に大きな沼があり、恐ろしい神が棲んでいる」とヤマトタケルに言う。「どのような神か見てみよう」と、ヤマトタケルが野へ入ると、国造は野一面に火をつけた。だまされたと知ったヤマトタケルは、姨(みをば)倭比売命から授かった袋を開ける。中に火打(=火打ち石と火打ち金)があったので、ヤマトタケルは、剣で周囲の草を薙(な)ぎ払い、火打で迎え火を打ち出して、迫り来る炎を退けた。
火攻
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火攻(かこう)とは、火を使って敵を攻めること[1]。何らかの方法で敵陣や敵国の市街地などに火を放ちながら敵を攻めること全般を指す。火攻め[2]、火計(かけい)、焼討ち[3]とも言う。
方法
火攻という言葉は、紀元前500年ごろの中国、春秋時代の兵法書『孫子』の火攻編に見ることが出来る[4]。
- 火矢(火箭)
- 先端に火をつけた(もしくは先端に火のついた物体を取り付けた)矢を敵陣に撃ち込む。
- 『日本書紀』の欽明天皇15年12月冬に火箭を使い函山城に城攻めを行った記述がある[5]。
- 古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは、紀元前480年ごろのペルシア戦争でペルシャ人がアテネを攻めるときに鏃に点火したピッチを付けた矢を使用したと記している[6]。
- 火牛の計
- 火のついた物体を牛に取り付け、その牛を敵陣に突入させる。
- 紀元前三世紀、中国の斉国将軍である田単が、牛の尾に油にひたした葦を付けて火をつけて敵軍に放って敵を混乱に陥れた[7]。日本では、源平合戦を描いた『源平盛衰記』に木曽義仲が牛の角に松明を付けて放つという描写が書かれる[8]。
- 火のついた物体を直接投擲
- 火のついた物体を直接手で敵陣に向けて投げ込む。投擲物に含まれる可燃性・引火性の液体により、火災を発生させる。
- 紀元前9世紀のアッシリアで作られたレリーフには、油が入った容器や松明を敵に投げつける様子が描かれている[6]。
出典
- ^ "火攻". 精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2022年12月31日閲覧。
- ^ "火攻め". デジタル大辞泉. コトバンクより2022年12月31日閲覧。
- ^ "焼討ち". デジタル大辞泉. コトバンクより2022年12月31日閲覧。
- ^
(中国語) 孫子兵法#火攻第十二, ウィキソースより閲覧。
- ^
(中国語) 日本書紀/卷第十九, ウィキソースより閲覧。
- ^ a b Loyola, Benjamín Ruiz (June 18, 2019). “Smoke and Incendiary Weapons”. LOJ Pharmacology & Clinical Research (Lupine Publishers) 1 (3): 76–79. doi:10.32474/LOJPCR.2019.01.000115 .
- ^ "火牛の計". 故事成語を知る辞典. コトバンクより2022年12月31日閲覧。
- ^ 山口敏太郎 (2019年5月12日). “木曽義仲の使った火牛の計は嘘だった?”. リアルライブ. 2022年12月21日閲覧。
- ^ "火船". 精選版 日本国語大辞典, デジタル大辞泉. コトバンクより2022年12月31日閲覧。
関連項目
- 火攻めのページへのリンク