靱性とは? わかりやすく解説

じん‐せい【×靭性】

読み方:じんせい

固体のもつ性質の一。材質粘り強さ外力によって破壊されにくい性質


靱性


靱性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/05 09:09 UTC 版)

靱性(じんせい、英語: toughness)とは、物質脆性破壊に対する抵抗の程度[1][2]、あるいはき裂による強度低下に対する抵抗の程度のことで[3]、端的には破壊に対する感受性や抵抗を意味する[4]材料粘り強さとも言い換えられる[1]

「靱」の文字が常用漢字に含まれていないことからじん性という表記や[5]、「靱」の異体字を使用した靭性という表記もある[6]。本記事では学術用語集に準じて「靱性」の表記で統一する[7]

評価方法

平面ひずみ状態の破壊靱性KIC試験に用いられる三点曲げ試験片の概要[8]

定性的には、上記の定義のように、靱性は破壊に対する感受性や抵抗を意味する[4]。靱性を定量評価する指標としては、衝撃試験を用いた材料の衝撃吸収エネルギーがある[1]。特に、シャルピー衝撃試験が靱性の簡便な評価方法として普及している[9]。ただし、これらの値は靱性の絶対値的評価に用いるには難しく[9]、主に材料選定や品質管理における靱性の比較として用いられる[1]

同様に比較試験としてだが、引張試験から得られる特性からも靱性の評価ができ[9]、靱性の大小は応力ひずみ線図における曲線の面積に相当する[2]

き裂や鋭い切欠きを有する材料の靱性を評価する指標としては、破壊力学パラメータを使用した破壊靱性値がある[1][3]。これらの破壊靱性値には、応力拡大係数KIC、き裂開口変位のCODCJ積分JICが用いられる[1]。上記の衝撃試験値などと異なり材料定数として取り扱うことができ、脆性破壊の発生基準として用いられる[8]。小規模降伏応力条件と平面ひずみ条件を満たす場合の破壊靭性値KICの試験方法としては、ASTM規格によるものが知られている[8]ガラスのような脆性材料には試験が簡便な圧子圧入法も採用される[10]

材料別の一般的傾向

靱性が大きいとは、材料の強さ(引張強さ降伏点)と延性が共に大きいことを意味する[11][12]。強さがあっても延性が小さい材料は脆性破壊が問題となり、延性があっても強さが小さい材料は何かを支える構造用材料として使いにくい、という欠点があるため高靱性材料が求められる[13]

材料の高強度化に伴い、一般に靱性が低下する傾向にある[13]セラミックス材料などと比較して金属材料は高靱性であることが長所である[14]。セラミックスは高強度だが延性が小さい典型的な脆性材料である[15]。ただし、ジルコニアの一種である部分安定化ジルコニアはセラミックス材料ながら高い靱性を有しており、セラミックス材料の高靱性化も研究されている[16]。金属材料の中でも、鉄鋼材料は安価ながらに強度と靱性を備えており構造材料として広く使用されている[17][14]

脚注

  1. ^ a b c d e f 機械工学辞典 2007, p. 631.
  2. ^ a b 機械材料学 2014, p. 102.
  3. ^ a b 基礎機械材料学 2008, p. 65.
  4. ^ a b 材料強靭学 2000, p. 63.
  5. ^ コンクリート委員会・規準関連小委員会「コンクリート工学の分野における用語・用字の表し方に関する検討(報告)」(pdf)『土木学会論文集』第466巻第19号、1993年、17-19頁。 
  6. ^ 日本材料学会 用語集 索引-し”. 日本材料学会. 2014年10月7日閲覧。
  7. ^ オンライン学術用語集検索ページ”. 学術用語集. 文部科学省・国立情報学研究所. 2014年9月21日閲覧。
  8. ^ a b c 基礎機械材料学 2008, p. 92.
  9. ^ a b c 材料強靭学 2000, p. 48.
  10. ^ ガラス特性の測定方法 破壊靭性”. ニューガラスフォーラム. 2014年10月11日閲覧。
  11. ^ Toughness”. NDT Education Resource Center. The Collaboration for NDT Education, Iowa State University. 2014年10月7日閲覧。
  12. ^ 材料強靭学 2000, p. 12.
  13. ^ a b 材料強靭学 2000, p. 11.
  14. ^ a b 材料強靭学 2000, p. 5.
  15. ^ 機械材料学 2014, p. 245.
  16. ^ 機械材料学 2014, p. 247.
  17. ^ 材料強靭学 2000, p. 2.

参考文献

関連項目

外部リンク


靱性

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/24 07:14 UTC 版)

ダイヤモンドの物質特性」の記事における「靱性」の解説

引っ掻き対す硬さとは異なりダイヤモンド破壊靱性はあまり良くない。靱性とは落下衝撃による破損耐える性質である。ダイヤモンドは完全な劈開有するため、損傷しやすい。実際ダイヤモンド通常のハンマーで打つと、粉々に砕かれる天然ダイヤモンドの靱性は2.0MPa・m1/2で、その他鉱物の靱性よりも大きい値であるが、多く工業的な材料比較する幾分小さい。ダイヤモンドそれ以外鉱物にもいえることだが、鉱物巨視的な幾何学構造破損対す耐性強さ決定づけている。ダイヤモンド劈開面を有しそれゆえ他の鉱物よりも幾つも方向割れやすい。 多結晶ダイヤモンドバラスカーボナード例外で、単結晶ダイヤモンドよりも遥かに靱性が大きく、これらはドリルの刃などの産業的に利用されている。宝石カットされダイヤモンド損傷しやすく、保険会社保険を掛けられないであろう。しかしブリリアントカットは他と異なり宝石損壊粉砕可能性低減させるために考案されカット技術でもある。 ダイヤモンド内には無関係な固体物質紛れ込んでいることもある。主にカンラン石ガーネットルビーなど様々な鉱物内包物ダイヤモンド構造的完全性損なう。透明性向上させるために、超音波洗浄宝石ブローランプに耐えられないガラス破損部分埋めたダイヤモンドは非常に脆い。このようなダイヤモンド不適切扱えば粉砕する可能性がある。

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「靱性」を含む「ダイヤモンドの物質特性」の記事については、「ダイヤモンドの物質特性」の概要を参照ください。

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