BMD-1とは? わかりやすく解説

【BMD-1】(びーえむでぃいち)

旧ソ連開発した空挺部隊VDV)向け歩兵戦闘車
開発1960年代前半から始まり1968年から生産開始1969年制式採用となった

BMP-1小型軽量化した物で、主武装BMP-1と同様である。
しかし、重量は7.6トンBMP-1よりも約6トン軽い。
また、輸送機からの投下考えて懸架装置姿勢制御式の液気圧式で、空中投下の際には懸架装置破損を防ぐため、転輪車体下部水平になるように液気圧懸架装置アーム折り畳む

エンジンは、出力240hpの5D20 水平対向6気筒液冷ディーゼルエンジン搭載しており、出力/重量比は戦闘重量が軽い事から31.6hp/tにも達し、かなり良好な機動力発揮できる
路上最大速度は60km/hだが、余剰パワーにより、不整走行能力も高いといわれている。
また、車体後部にはウォータージェット装備されているため水航行も可能で、路上航続距離も500kmと、この種の車両としては十分である。

追加設備として、フィルター式換気装置自動消火装置発煙装置装備する
その外、空中投下された本車空挺兵探し出せるようにビーコン発信機設置されている。
外部との連絡用にR-123M無線機車両内での会話用にR-124戦車会話装置搭載されている。

実戦ではエチオピアソマリア戦ったオガデン戦闘1977年1978年)で初め使用されたほか、1979年カブール大統領府ダルラマン宮殿襲撃作戦1979年12月アフガニスタン侵攻参加し先乗り空挺部隊使用され活躍した
現在でもロシア空挺軍運用されているほか、CIS諸国インド装備している。

スペックデータ

乗員2名+兵員5名
全長5.4m
全高1.97m
全幅2.63m
戦闘重量7.6t
懸架
駆動方式
油気圧式
エンジン5D-20 V型6気筒液冷ディーゼル出力240hp)
登坂70%
堤高0.7m
超壕幅2.0m
最大速度62km/h(路上)/10km/h(浮航)
航続距離500km
装甲16mm最大
兵装2A28 73mm低圧滑腔砲×1門(弾数40発)
9M14M「マリュートカ(AT-3『サガー』)」対戦車ミサイル発射機×1基(ミサイル3発)
PKT 7.62mm機関銃×3挺(弾数4,000発)

派生型


BMD-1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/29 01:57 UTC 版)

BMD-1
ヴェルフナヤ・ピシュマ戦車博物館で展示されるBMD-1
基礎データ
全長 5.4 m
全幅 2.94 m
全高 1.97 m
重量 7.5 t
乗員数 2 名
乗員配置 乗員2名 + 歩兵5名(最大)
装甲・武装
装甲 23 mm(車体前部)
主武装 73mm低圧滑腔砲2A28
9M14(AT-3「サガー」)対戦車ミサイル
副武装 PKT 7.62mm機関銃×3
機動力
速度 70 km/h(整地)
10 km/h(水上)
エンジン 5D-20
V型6気筒液冷ディーゼル
176 kW/2,600 rpm
懸架・駆動 油気圧式
行動距離 500 km
テンプレートを表示

BMD-1БМД-1;Объект 915)は、ソビエト連邦歩兵戦闘車(IFV)。BMDとはロシア語で空挺戦闘車Боевая машина десанта)を意味し、空中投下が可能なように設計された装甲車両である。

開発

従来、ソ連空挺軍(現 ロシア空挺軍)にはASU-57などの自走砲が配備されていた。しかし、こうした空挺車両は既存の装甲車両を流用した車体に過ぎず、また兵員の輸送が考慮されていなかった。

また、1962年キューバ危機ではアメリカ軍カリブ海に迅速に戦力を展開できたのに対し、ソビエト連邦軍は緊急展開に時間を要したため、ソ連は外交的に優位な立場に立つことができず、キューバからのミサイル基地撤去という結末を迎えた。

こうした事態から空挺軍の装備を抜本的に見直す必要が生じ、1965年にヴォルゴグラード・トラクター工場で空挺部隊専用の装甲車両の設計が始まり、1968年に試作車両が完成。翌1969年にはBMD-1として制式化され、量産と配備が開始された。

設計

BMD-1の設計は、同時期に開発されたBMP-1とほぼ同一で、BMP-1を小型化、軽量化して輸送機への搭載と空中投下を可能としている。

車体は、軽量化のためにアルミ合金製になっている。装甲厚は7.62mm弾や砲弾の破片からの防護にとどまるが、上部正面は78度、下部正面は50度の傾斜を有しており、良好な避弾経始となるほか、内部容積の増大にも貢献している。水上走行が可能で、正面に設置されている波除板は、地上走行時に増加装甲となる。

操縦席は車体前部にあり、ここに操縦手が座る。操縦席にはペリスコープが3基装備され、操縦手は前方60度の視界を有する。操縦手の左側に車長が座る。車長席には、外部監視用に単眼式ペリスコープ測距儀1PN22M1が設置されている。夜間はアクティブ式夜間暗視装置(砲塔の右側に設置)を利用すれば400m~900mの視程を得られるが、車長席の位置が中途半端で、砲塔が死角になって全周視界を有しないという欠点がある。操縦手と車長の乗下車には個別のハッチを用いる。

操縦室の後方には戦闘室があり、BMP-1と同型の1名用砲塔がある。主砲は、SPG-9無反動砲と同型の73mm低圧滑腔砲2A28であり、BMP-1と同様、安定装置はついていない。砲塔の旋回、砲身の上下は電気装置で行うが手動操作も可能である。73mm砲弾は40発(HEAT ×16発、破片榴弾 ×24発)が砲塔バスケットに格納される。主砲の上方には9M14 「マリュートカ」(AT-3 「サガー」)対戦車ミサイルの発射レールを有する。9M14は第一世代の対戦車ミサイルで、有線誘導式で砲手が車内から操縦する。予備弾は3発が車体に格納されているが、装填時には砲手が砲塔から身を乗り出して誘導弾を装填し、4枚の安定翼を取り付ける必要があった。また、飛翔速度が遅く、発射時の噴煙が多いなどの欠点を有していたことから、後に9M113 「コンクールス」(AT-5 「スパンドレル」)の発射機が装備された。9M113を搭載した車両は、BMD-1Pとして区別される。このほか、主砲同軸でPKT 7.62mm機関銃を1丁装備したほか、車体前部両端にもPKT 7.62mm機関銃を1丁ずつ装備している。この2丁の操作は、乗車した降下兵が車内から行なう。7.62 mm銃弾は4,000発を格納する。

戦闘室の後方には、空挺兵が乗車する兵員室がある。兵員室には通常は3人、最大で5人の空挺兵が搭乗することが可能だが、乗下車時には天井のハッチから出入りするか、後方の機関室上にある狭い扉から出入りする必要があるなど、迅速な移動に適していない構造になっている。車体後部には3ヶ所のペリスコープと3ヶ所の銃眼が設けられている。

独立懸架式の転輪は個別に油圧式サスペンションと油気圧式ばねを備え、運転席から油圧を調節することで履帯の張力や車高を変えることができる。保管時や輸送時には最低車高が選択される。

このほか、フィルター式換気装置、自動消火装置、発煙装置を装備し、外部との連絡用にR-123M無線機、車両内での会話用にR-124戦車会話装置が搭載されている。また、空挺車両特有の装備として、空中投下された本車を空挺兵が探し出せるようにビーコン発信機が設置されている。

運用

カーブル市内におけるソ連空挺軍のBMD-1(1986年3月25日

世界でも珍しい空挺専用の装甲車両を保有することで、空挺軍は戦車にも対抗できる攻撃力と機械化による機動力を有するに至った。その展開の機動性から、アフガニスタン侵攻では先鋒を務めた。

しかし、実際の運用ではBMP-1と同様の主砲の貧弱性や装甲の脆弱性が露呈した。さらに、あまりに窮屈な車内は長時間の乗車には適さず、部隊によってはBMP-1やBTR-60BTR-70に乗り換えるほどであった。こうした戦訓を元に、1986年には改良型のBMD-2が採用されている。

現在でもロシア空挺軍のほか、CIS諸国で配備されており、一部は治安維持に用いられている。旧ソ連以外では、インド陸軍などが装備している。

派生型

BMD-1K
1971年に開発された指揮車型。無線機2台と電力供給用のエンジン発動機を設置。
1V118 / 1V119
砲兵観測車
BRehM-D
修理回収車
BTR-D
1974年にBMD-1に基づき開発された装甲兵員輸送車
BMD-1P
9M14の発射レールを廃して、9M113の発射機を搭載。

採用国

退役国

脚注

出典

  1. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 182. ISBN 978-1-032-50895-5 
  2. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 205. ISBN 978-1-032-50895-5 

関連項目




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