加藤一二三という生き方(上)盤上の激闘
完了しました
77歳なのにカワイイ。この表現が似合うのは、先ごろ現役を引退した「ひふみん」こと将棋の加藤一二三九段しかいない。藤井聡太四段(14)の活躍もあって、最近はテレビでその姿を見ることも多くなった。テレビのひふみんは、早口過ぎて時に話の内容を聞き逃してしまうこともある。でも、そこで「面白いからいいか」と通り過ぎてしまったら、もったいない。やはりスゴイ人なのだ。加藤一二三という男の生き方をこれまでの取材をもとに紹介する。
この子、凡ならず
「この少年、なかなかすごい」
加藤九段がそう思ったのは2016年12月24日に行われた竜王戦6組、藤井四段との対局中のことだった。
局面が終盤に入った時、藤井四段が加藤九段の方に視線を飛ばしてきた。「加藤先生、あなたは自分の方が面白い(有利である)と思っているんでしょ。でも、この将棋は私、藤井聡太が勝っているんです」と語りかけているようだった、と加藤九段は述懐する。
この対局は、藤井四段にとってデビュー戦だった。緊張していてもおかしくないのに、最年長棋士の加藤九段に自信に満ちた視線を送った。そこに加藤九段は将来性を感じたのだ。
いつの時代も才能ある若者はまぶしい。今から65年ほど前、小学6年生の時の加藤九段もそうだった。
「この子、凡ならず」
発言の主は升田幸三八段(当時)である。大阪の関西将棋会館で、板谷四郎八段(同)に飛車香落ちのハンデをもらって指した加藤少年の将棋を見て、「凡ならず」と評したのだ。
「升田先生は将棋の才能を見抜く抜群の眼力があったと思います。言葉の使い方も印象的で、当時の私にもだいたいの意味はわかりました。とにかくうれしかった」
全国から集まった俊英の中でも、加藤少年の才能はひときわ輝いていたのだろう。升田八段との運命的な出会いを経て、本格的に将棋の道を志すようになった。
ちなみに、愛知県瀬戸市出身の藤井四段の師匠は杉本昌隆七段。そのまた師匠は長年、中京棋界の発展に尽くした板谷進八段で、四郎氏はその父親である。
【あわせて読みたい】
・「ひふみん」引退、レジェンドは終わらない
・将棋界のレジェンド・加藤一二三九段引退
・藤井フィーバー、指すだけではない将棋の楽しみ方
・19連勝の藤井四段、プロはどう見ているのか