【特集】より良い学校生活のため環境整備を重視した新校舎…京都女子

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 京都女子中学校・高等学校(京都市)は現在、学校施設の全面的な整備を進めており、2025年3月には、新しい第1校舎が完成する。この校舎は、明るく開放感のあるデザインに加え、省エネルギーを実現し、生徒の環境意識を育む設備・システムを導入しているのが特徴だ。また、校舎の随所に書架を配置して、本に親しむ機会を増やすなど、さまざまな工夫も凝らされている。この新校舎の建設プランについて齊藤吉信教頭補佐に聞いた。

自然の光と風を取り入れた開放的な校舎

来年3月に完成予定の第1校舎
来年3月に完成予定の第1校舎

 新校舎の建設計画は2020年に正式スタートし、23年6月に工事に着手した第1校舎は、来年3月に完成する予定だ。さらに、27年には体育館、講堂、カフェテリアを備えた第2校舎、その翌年にグラウンドの整備を終え、一連の整備プロジェクトを完了する計画となっている。

 「京都女子学園全体で総合的なキャンパス整備計画が進められており、その一環として築50年以上が経過して老朽化が進んだ中高校舎の整備が実施されています。時代に合わせた教育を提供し、生徒がより良い学校生活を過ごせるよう、環境整備を重視した建築プランとなっています」

 同校が立つ京都市東山区には、景観を守るために高さ制限などの建築条件がある。このため新校舎は、これまでの校舎よりも規模を縮小せざるを得なかったという。「もともと4階建てだった校舎は3階建てとなりますが、自然の光と風をふんだんに取り入れる設計・仕組みにより、明るく開放感のある空間を創出しています」

 取材に訪れた10月17日、新しい第1校舎の外観はほぼ出来上がっていた。正面に設置された2階まで続く大階段が目を引く。この階段は観客席としても利用可能だといい、階段前のスペースをステージとして、部活動や文化祭の発表時などに幅広く活用していく予定だ。内部にはまだ立ち入れないが、校舎の中央は3階まで吹き抜けで、天窓から差し込む自然光が、空間を広く感じさせるデザインとなっている。この吹き抜け空間を囲んだ校舎の中心部は「 円居(まどい) 」をコンセプトとし、テーブルや椅子を置いたオープンスペースを設ける。「本校は人とのつながりを大切にしてきた学校ですから、生徒が自然と集まるような場所をつくりたいと考えました。そこで語り合い、学習するなど、生徒たちが気軽に利用し、触れ合える場になってほしいと願っています」と齊藤教頭補佐は話す。

図書室をあえて設けず、校舎内の各所に書架を配置

発表の場としても活用が予定される大階段前(完成予想図)
発表の場としても活用が予定される大階段前(完成予想図)

 各教室は「円居」のスペースを囲むように設置されている。1階には職員室や保健室、実験室、クリエイティブルーム、防音室など、多目的に利用できる特別教室を配置。2階と3階に中高の教室を置く。大きな窓ガラスを採用した教室は明るく、快適に学習できる空間となっている。ベランダには外からの視線を遮断するフェンスを設置し、生徒が安心してくつろげるように配慮している。

 中高の職員室は一体化し、廊下にはパーティションで個室化が可能な相談スペースを設置する。2、3階にも教員が在室する「Teacher Lounge(ティーチャーラウンジ)」を設ける。「本校では生徒が教員によく相談に来るという良い関係性が築かれていますが、より気軽に教員のもとを訪れることができるようになるでしょう」

 限られたスペースを有効活用するため、図書室を設けず、代わりに校舎内の随所に書籍スペースを設けるという工夫をした。なかでも1階のオープンスペースには多くの書架を設け、ソファも配置してゆっくりと本が読めるスペースとする。2、3階の廊下の壁際や、第2校舎のカフェテリアにも書架を設置予定で、全体で約7万冊を収蔵できるという。

 「以前から本校では図書館活動が盛んで、図書委員が中心となって本に親しむための取り組みを行っています。すぐ身近に本に触れられる環境を整えることで、生徒がより本に親しむ機会が増えるのではないかと期待しています。書籍は従来の分類ではなく、独自のテーマ別にセレクトして並べる予定です。興味を持った分野について知識を深め、新たな興味を引き出す助けとなり、探究活動にも活用していけると考えています」

 生徒自身が機器を操作して書籍の貸し出し・返却を可能とするICタグを導入するほか、画像や動画をプロジェクターで自由な場所に映し出せるようホワイトスクリーンを教室の壁に採用するなど、校舎新築を機にICT環境の充実も図っている。

エネルギー消費を半分以下にする「ZEB-Ready」認証を取得

「円居」をコンセプトとした校舎中心部(完成予想図)
「円居」をコンセプトとした校舎中心部(完成予想図)

 新校舎は、自然の光や風を積極的に取り入れる設計や、太陽光、雨水、地中熱の利用、断熱素材やエネルギー効率の良い設備機器の導入などにより、大きく省エネルギー化を実現している。これにより、西日本の私立中学校・高等学校では初の「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)-Ready」認証を取得した。

 「ZEB」とは、省エネによって消費エネルギーを削減し、再生可能エネルギーを利用することによって、実質的にエネルギー消費量をゼロにする建物で、経済産業省が普及推進している。新校舎が認証された「ZEB-Ready」は消費エネルギーを50%以下まで削減したものだ。

 「こうした地球環境に配慮した新校舎で過ごすのは、教育的にも意味のあること」と、齊藤教頭補佐は話す。「教室から『円居』は換気ルートとして風の通り道を創出しており、換気が必要になれば、教室に設置したエコランプが知らせます。すると、生徒は自分たちの判断で窓を開け、自然換気を行います。自動で換気するのではなく、あえて生徒自身に行動させることで、生徒の環境意識を育みたいと考えています」

「生徒がより良い学校生活を過ごせるように環境整備を重視しています」と話す齊藤教頭補佐
「生徒がより良い学校生活を過ごせるように環境整備を重視しています」と話す齊藤教頭補佐

 「円居」にはエネルギーの使用状況や発電量が分かるエコモニターが設置され、生徒は学校生活の中で省エネの効果を体感できるようになっている。「自身が地球環境のためにできることを自発的に考えられるようになるための実践的な学びの場となってほしいと思っています」

 第1校舎の完成に向けて工事は順調に進んでおり、来年度から新校舎での学校生活が始まる。特別教室の入り口には教室の用途を示すピクトグラムを設置する予定で、現在、デザイン制作を希望する中高生約20人が取り組んでいるという。

 「京都女子大学の生活デザイン研究所の教授からアドバイスを受けながら、放課後や夏休みにも集まって熱心に制作に取り組んでいます。その姿から、新校舎の完成を楽しみにしている気持ちが伝わってきます。そうした期待に応えられるよう、新たな学びの場を最大限に活用し、より充実した教育を提供していきたいと考えています」と齊藤教頭補佐は語った。

 (文・写真:溝口葉子 一部写真提供:京都女子中学校・高等学校)

 京都女子中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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