女子アイスホッケー国内大会、無人のAIカメラでネット中継…コスト削減と競技普及に期待
完了しました
世の中にテレビ中継や配信がされていなかった数多くのアマチュアスポーツ、地域スポーツなどの試合を、自動撮影・編集が可能な人工知能(AI)カメラを使って遠隔操作でインターネット配信する取り組みが進められている。日本アイスホッケー連盟と、映像配信事業を行っているNTTスポルティクトは2~3月の女子アイスホッケーの公式戦で、AIカメラなど複数のカメラを組み合わせた「日本のスポーツ映像配信では初の試み」(同社)を行っている。無人カメラによって撮影コストを大幅に削減することで配信を容易にし、多くの試合映像を幅広い層の視聴者に届けることでの競技の活性化にもつなげたいという。(編集委員・千葉直樹)
AIカメラがパノラマ映像、ゴール前のシーンは2台の固定カメラで
2月23~25日に北海道・帯広市で行われた日本リーグ女子ファイナルでは「フルリモートマルチアングル撮影」によるライブとアーカイブでの映像無料配信が行われた。その仕組みは以下の通りだ。
会場のアイスアリーナにはイスラエル社製の無人AIカメラが1台と、固定カメラ(PTZカメラ)2台が設置されている。AIカメラは、複数のレンズで撮影した映像をつなぎ合わせたパノラマ映像を作り、選手やパックの動き、競技ルールを学習したAIがそのパノラマ映像を編集して臨場感のあるシーン映像を切り出す。
PTZは、Pan(パン=水平方向)、Tilt(チルト=垂直方向)、Zoom(ズーム=拡大・縮小)の頭文字をとったもので、遠隔でカメラの首振りを制御できるカメラだ。街中の防犯カメラのような外観で、AI映像と、補完するPTZカメラの映像を組み合わせ、無人の現場から配信した。
コストを8~9割削減、サッカーやバスケなど16競技に対応可能
電源とインターネット回線のある会場にカメラを設置すれば、撮影クルーを現場に派遣する必要がない。AIカメラのメイン映像とPTZ映像の切り替えをリモートで操作する要員が1人必要だが、スポルティクト社の担当者は「今まで人の手で行っていた作業と比較すれば、8~9割のコストが削減できる」と話す。AIの処理速度は、現場レベルであれば3秒ほどでパノラマからAIが切り出し、サーバーを経由してユーザーが視聴する際には40秒ほどの遅延となるという。
このシステムはサッカーやバスケットボールなど16の競技に対応可能で、アイスホッケーではすでに北海道内の5か所アイスアリーナにカメラが常設されている。
今回のライブ配信とは別に、施設の利用者がチーム練習の振り返りや分析のために様々な角度からの映像も見られる専用ビューアーを使えるサービスもある。
1
2