母国料理を提供 住みやすく
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出雲市の県立中央病院が今月上旬、ブラジル国籍の産後間もない母親向けに、母国の味付けを参考にした「お祝い膳」を完成させた。約3100人が暮らす市内のブラジル人を見据えた対応だ。
病院側に助言をしたのはその一人で、放課後児童クラブで英語を教えるピレス・ジョージアさん(28)だ。来日前は顧客の注文に応じて調理し、自宅などに料理を届ける仕事をしていた。
母国では、手術後や入院中は海鮮や豚肉を食べてはならないとされ、調味料も日本と違いがある。ピレスさんは、味付けやメニューを考える病院関係者の参考にブラジル人の声を集めようと、事前に20~40歳代の女性58人にアンケートを実施した。
結果は、市内での出産経験者が79%で、出産予定の人が12%いた。入院中の食事で困りごとがあった人は55%おり、味付けや食材、塩分量、海鮮などを挙げていた。カフェインの有無が分からないため、提供されるお茶を飲まない人も38%いた。
具体的には、肉は焦げ目が付くまで焼くのが当たり前のため、ゆでた料理は「火が通っていない」と感じて箸をつけられなかったり、茶わん蒸しもプリンとの区別が付かず、抵抗感があったりするブラジル人が多い。
病院側も、日本の料理への違和感を具体的に聞く機会は少なかったため、ピレスさんのアンケートがお祝い膳作りに役立ったという。
市内では老舗和菓子店が、ブラジル人が栽培した豆で白あんを作り、商品に生かすなど新たな取り組みも出ている。昔から食べ慣れてきた料理や食材があれば気持ちも和らぐ。食で「ほっとできる」場が増えれば、住みやすい地域づくりにつながるかもしれない。(佐藤祐理)