投資詐欺巡る凍結口座の資金狙い簡裁書面、虚偽主張で取得し引き出し図る…最高裁が情報収集へ

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 投資詐欺の被害回復のために凍結された銀行口座から資金を引き出そうと、東京都内の会社が裁判所に虚偽の内容の書面を発行させて強制執行手続きを行っていたことがわかった。会社は「凍結口座の名義人に金を貸した」と主張していたが、被害者との訴訟で、「ダミー債権だった」と認めた。代表が同じ同名の会社が別の凍結口座から資金を得ていたことも判明。類似事例も起きており、最高裁は実態を把握するため、情報収集を進める。

東京地裁
東京地裁

 SNS型投資詐欺や特殊詐欺の被害額は年間で計700億円を超える。振り込め詐欺救済法に基づき詐欺に使われた口座を凍結し、残金を被害者に返す仕組みがあるが、不当に引き出されれば救済が進まなくなる。

 問題の訴訟では、被害に遭った60歳代男性が、代表と社名が同じ都内のコンサルティング会社2社による強制執行を認めないよう東京地裁に求めている。

 訴訟記録などによると、男性は2023年、著名な経済アナリストをかたる人物からLINEで投資を持ちかけられ、計1億2400万円を20口座に振り込んだ。警察に相談し、資金移転先の一部となっていた3人のベトナム人名義の口座が凍結された。

不当な強制執行のイメージ
不当な強制執行のイメージ

 2社のうち、品川区の会社は24年、この3人に「10万円ずつ貸し付けた」とし、東京簡裁から、判決と同様に強制執行が可能となる「支払い督促」の書面を取得。これを根拠に凍結口座から資金を引き出す強制執行を東京地裁に申し立てた。

 もう一つの渋谷区の会社も、同じ3人に計2650万円を貸したとして強制執行をかけたが、銀行側は不審に思っていずれも応じなかったという。

 被害者側は訴訟で、出入国記録などから、品川の会社が各10万円を貸し付けたとする時期に3人は日本にいなかった点などを挙げ、執行は不当と主張。品川の会社は16日の口頭弁論で「ダミー債権だった」とし、虚偽の内容で簡裁から支払い督促の書面を受けたと認めた。渋谷の会社は「執行は正当」と主張した。

 これとは別に、渋谷の会社は24年、別の詐欺で凍結された口座の残金約1億円を得ていた。口座名義人の広告関連会社に1億3000万円を貸したとする「公正証書」を取得。公正証書にも判決と同様の効力があり、これを基に強制執行をかけていた。2社の代表は17日、虚偽の書面を使ったことについて「裁判中なので話せない」と話した。

 凍結口座からの資金引き出しを巡っては過去、強制執行の根拠とされた公正証書の内容が虚偽だと裁判所に認定された例もあった。最高裁は取材に「裁判手続きが悪用されているとすれば遺憾。情報収集を進めたい」としている。

 ◆ 強制執行手続き =裁判所が、資金を貸した側の申し立てによって、借りた側の財産を強制的に差し押さえ、回収する手続き。根拠となる書面には、賠償を命じた判決のほか、簡裁が出す支払い督促、公証人が作成する公正証書などがある。

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