職場の音ハラとは?不快なブツブツ、ズーズー、ッターン!への対応策

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机が近い同僚の独り言や、パソコンのキーボードをたたく音がうるさくて、仕事に集中できない――。SNSでは最近、このような職場での「音ハラスメント(音ハラ)」に悩む人の投稿が多く見られます。音ハラスメントとはどんな行為で、どう対処すればいいのか、日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要さんに聞きました。

不快な音にも「我慢してほしい」と上司

写真はイメージです
写真はイメージです

40代の会社員A子さんは、職場の同僚の男性が仕事中、さまざまな音を出すのに不快感を覚えています。

不快な音の一つめは、独り言。パソコンで作業をしながらぶつぶつと話していて、時々、独り言とは思えないくらいの声量になるので、驚いてしまいます。

二つめは、鼻をすする音。とりわけ花粉が飛散する時期にはいつも鼻をすすっていて、すすった後には、「ふあぁ」「ウッ」などと変な声を出します。

三つめは、パソコンのキーボードをタイピングする音です。キーを壊したことがあるくらい強くたたくため、うるさくてたまりません。

A子さんは上司に相談しましたが、「がまんしてほしい」と言われました。他の同僚たちは「どうしようもない」とあきらめている様子で、問題解決に至っていません。今は少しでも仕事に集中できるようにと、耳栓をして仕事をしていますが、「我慢する以外に、どのような対策を取ればいいのか」と、A子さんは思案に暮れています。

ハラスメントの線引きが難しい

音ハラスメントについて村嵜さんは、「配慮なく過剰な音で周囲を不快にさせる行為」と説明します。多いのは、周りに聞こえる独り言、タイピング音、鼻歌、私語、指の関節をポキポキ鳴らす音、ノック式ボールペンをカチカチ鳴らす音など。「仕事に関係する話でも、大声で長時間話したり、手をたたいて笑ったりして就業環境が害される状況になれば、音ハラに当たるでしょう」

せきやくしゃみ、鼻をすする音などは、風邪や花粉症など体調不良と関連しているため判断が難しいといいますが、「特定の人だけが長期間にわたって繰り返している場合は、音ハラになる可能性がある」と、村嵜さんは指摘します。

音ハラの加害者には、自分がこのような音を出していることを意識している人もいれば、無意識の人もいます。意識的に行う人は、自分の感情を言葉に表すことができず、周囲に間接的な形で伝えるという「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」と似た意図があります。これに対し、無意識に行うのは、音に関して鈍感な人や、感情のコントロールがうまくできない人に多い傾向があるといいます。

音ハラの被害者は、仕事に集中できずイライラしてしまい、それを放置していると、業務のスピードが落ちたり、ミスが増えたりと、仕事の質の低下につながりかねません。そのため、村嵜さんは「音ハラはパワハラに匹敵するぐらい深刻なハラスメントかもしれない」と、見ています。

しかし、音ハラの場合は、パワハラやセクハラと違って、厚生労働省がハラスメントと見なされる基準を明示しているわけではありません。村嵜さんも「音による不快感は人によって違うため、判断が難しい。被害者も『自分が細かいと思われてしまうかも』と懸念し、相談しにくいといった状況があります」と、話します。

音ハラか否かを判断するには、<1>繰り返し行われていたか<2>長時間、長期間にわたって行われていたか<3>業務に必要な音なのか<4>大多数が音ハラだと同調しているか――の四つを基準にして考えると、判断を導きやすいと村嵜さんは考えます。

そして、音ハラと判断されたら、改善できる音か、改善できない音かを区別して対応を考えるべきだといいます。「独り言やタイピング音などは改善できる音なので、加害者へ注意を促す必要があります。鼻をすするなどの改善できない音は、相談を受けた上司が個人的な判断を下すのではなく、被害者の話をそのまま経営者へ伝えること。経営者は、社員の仕事の質の低下に影響することだと理解したうえで、イヤホンの使用を認める、固定席を持たずに好きな席で働ける『フリーアドレス』を導入するなどの対応が必要です」

音ハラが注目されるようになると、「自分が加害者にならないか」と心配する人が増えてくるかもしれません。「せき、くしゃみ、鼻をすするなどの症状がある場合は、手で押さえるなど周囲への配慮を示すこと。そのほかに、音が出てしまう理由を『花粉症なので』などと周囲に伝えておいた方が安心できるなら、そうしてもいいと思います。周りの人が『仕方がない』と思えれば、お互いさまという認識に変わるはずです」と、村嵜さんはアドバイスしています。

(読売新聞メディア局 長縄由実)

プロフィル
村嵜 要(むらさき・かなめ)
1983年生まれ、大阪府出身。会社員時代にパワハラを受けた経験があり、パワハラ撲滅を目指して2019年2月に一般社団法人日本ハラスメント協会を設立。ハラスメント専門家として、報道番組などテレビ出演多数。多くの企業からハラスメント研修の依頼を受けている。

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