「半導体ウエハー洗浄装置は、確実にバッチから枚葉に移行している」――。
SCREENホールディングス傘下で半導体製造装置を手掛けるSCREENセミコンダクターソリューションズ社長の後藤正人氏は、同社がトップシェアを誇るウエハー洗浄装置についてこう語る。
ArF露光装置の登場で一気に逆転
半導体製造におけるウエハー洗浄は、製造における不良率を下げてウエハー1枚当たりの歩留まりを高める重要な工程である。かつてウエハー洗浄は、ウエハーを一度に複数枚処理する「バッチ式」が主流だった。ところが、2000年代後半から1枚ずつ処理する「枚葉式」に徐々に注目が集まり、現在では同社において枚葉式の出荷比率が7割を超えている(図1)。
転換点となったのは、2000年代後半に起こった露光技術の革新だ。このころ、露光装置に使う光源がそれまでの波長が365nmのi線や同248nmのKrF(クリプトン・フッ素)線から、より波長が短いArF(アルゴン・フッ素、193nm)線へと置き換わり、半導体の微細化が一段と進んだ。「半導体デバイスの微細化に伴って、洗浄に要求されるウエハーの清浄度も高まり、より精密に洗浄できる枚葉式の洗浄装置が主流となった」(後藤氏)という。
洗浄力で枚葉式に軍配
バッチ式と枚葉式の洗浄方式の違いを説明しておこう。バッチ式では、薬液や純水が入った洗浄槽が複数並んだ「ウエットステーション」と呼ぶ装置を用いる(図2)。多数のウエハー(通常50枚)が入ったカセットを槽に浸して汚染物を除去する。
基本的な装置の構成は、汚れを溶かす薬液槽や薬液を洗い流す純水槽が並び、ウエハーを順番に浸していく(図3)。ただし、目的の洗浄内容によって洗浄のレシピが変わるため、洗浄槽の数も異なる。例えば、窒化膜除去は4~5槽に対して、フォトレジスト剥離には10槽以上の工程を重ねる。各洗浄槽には、水流を起こしたり超音波をかけたりして汚れを落としやすくする工夫がある。
バッチ式は、一度に大量のウエハーを処理できるため生産性が高く1枚当たりの処理コストも抑えられる利点がある半面、洗浄力は枚葉式に劣る。槽内に拡散したゴミ(パーティクル)や汚染物質がウエハーに再付着したり、槽から槽へ移す間にウエハーに空気中のゴミが付着したりするリスクがあるからだ。微細化が進む先端半導体では、こうしたリスクでさえも許容できなくなってきた。