Linuxシステムを適切に管理するには,Linuxの知識だけではなく,ネットワークやセキュリティなどの幅広い知識が必要です。それらを効率よく得るには,良質な書籍を読むのが早道です。システム管理に役立つ書籍50冊を厳選し,6ジャンルごとに分けて紹介します。今回はネットワーク分野です。
インターネットなど,現在のネットワークで主流となっている通信規約(プロトコル)が「TCP/IP」です。ネットワークを管理する場合は,このTCP/IPについて知っておく必要があります。また,LAN接続などで使われる「イーサネット」という通信方式の知識も不可欠です。
ところで皆さんは,Webブラウザなどで送受信するデータが,どのようにネットワークを伝わるかをきちんと説明できるでしょうか。何となくは理解していても,改めて説明を求められると案外難しいものです。
「ネットワークはなぜつながるのか」は,まさにこの問いに答えた書籍です。Webブラウザからのリクエストに応じて,Webサーバーがデータを返送するまでの通信の仕組みを,TCP/IPのレベルから電気信号のレベルまで,やさしく解説しています。1つのストーリーに沿って解説が進みますので網羅性には欠けますが,他書では得にくい横断的な知識が身に付きます。また,一種の謎解きのような面白さも得られます。
Linuxにおけるネットワーク管理に役立つのが,「萌え萌えうにっくす!UNIXネットワーク管理ガイド」です。同書では「萌え系」のイラストや,キャラクタの掛け合い形式の導入文などに目が行きがちです。しかし,カバーする情報の広さや深さ,解説文の豊富さなど,内容は(見た目の印象に比べ)意外に充実しています。障害発生時の問題切り分け方法も基本が紹介してあり,これ一冊を完全に理解すれば,かなりの実力が身に付きます。前述した「遊び」の部分に抵抗がなければお勧めです。
写真2●基礎からわかるTCP/IPネットワークツール活用(オーム社) 代表的なプロトコルの解説から,基本的なネットワーク・コマンドの利用方法,パケット解析やセキュリティ向上のためのソフトウエアなどを紹介しています。 |
ただし同書の内容は比較的高度です。もっと基本から学習したい人には,「基礎からわかるTCP/IPネットワークツール活用」(写真2)などが役に立つでしょう。同書は,代表的なプロトコルの解説から,基本的なネットワーク・コマンドの利用方法,パケット解析やセキュリティ向上のためのソフトウエアなどを紹介しています。
セキュリティ対策や負荷低減などの高度なネットワーク管理を施すには,ソフトウエアがどのようにネットワーク接続を実現するかを知っておく必要があります。それには,実際にネットワーク・ソフトウエアを作成するのが近道です。「基礎からわかるTCP/IP アナライザ作成とパケット解析 第2版」では,Linuxで動作するパケット解析ツールを実際に作成し,それを使ったパケット解析を実施します。ただ読みこなすには,C言語の知識が必要です。
TCP/IPについて,より詳細な知識を得たい場合は,「マスタリングTCP/IP 応用編」が役立つでしょう。サーバーで使われるアプリケーション・プロトコルも詳しく解説されています。
また実用化が進む次世代ネットワーク・プロトコル「IPv6」に関して知りたいのなら,「マスタリングTCP/IP IPv6編」がお勧めです。
表1●Linuxシステム管理に役立つ書籍 | ||||||||||||||||||||||||||||
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