「ITエンジニアの半分はプロ以下,という調査結果に,正直衝撃を覚えた」。2月1日から開催されている「NET&COM」の講演,「2万人の調査で分かったITエンジニアのキャリア,スキル,給与」の冒頭で飛び出たのはこの一言だった。
この講演は,日経ITプロフェッショナル主宰の「iSRF(ITスキル研究フォーラム)」が毎年実施している「ITスキル調査」の結果を基に,スキルやキャリアの現状や動向を解説するもの。調査は2005年夏で4回目。調査サンプル数は2万人強である。
演壇に立った同誌副編集長,平田昌信氏は,スキル・レベルと年齢層,スキル・レベルと職種の関係をグラフで示しながら,日本のITエンジニアの実態を説明。「エントリ・レベル」のエンジニアが4割を占めるという実態を嘆く。ここでいうエントリ・レベルとは,「上位スキル保持者の助けを受けてはじめて業務を遂行できる程度」(平田氏)だ(調査についての詳しい記事はこちら)。
日本のIT業界では一般的に,インド,中国,韓国に比べて国内エンジニアのスキル・レベルは低いと言われている。平田氏は「この見方を強固にするかのように,調査ではスキル・レベルの低さが数字として如実に表れた。日本のIT業界は人材育成に向けて,やるべきことがたくさんある」と語る。
この調査では,スキル,年収,将来の希望職種などいくつかの切り口でデータを収集・分析している。まず平田氏は年収と年齢の関係を示したデータを取り上げつつ,「若手でもスキル・レベルが高ければ高い年収が得られている,という結果に注目してほしい」とコメントする。「『スキルを磨けば年収が高くなる』というデータは,若手ITエンジニアにとって明るい材料だ」(平田氏)。
さらに年収とスキルの関係についても言及した。コンサル,プロマネ,マーケティング職については,スキルが高いほど年収も高くなる,という傾向が顕著に出た。一方,ITアーキテクトについては,それらの職種に比べて年収は高まらない。「重要な職種として期待が高まっているITアーキテクトについて,この現状はもう少し改善されてもよいはずだ」と平田氏は提言する。
NET&COMの最終日,2月3日には,日本経済団体連合会(経団連),経済産業省,ITベンダー,大学それぞれの代表者が,IT人材の育成について議論するパネルディスカッションを開催する。平田氏は「IT人材の育成は一筋縄ではいかない。ただそれでも産官学共同でIT人材の育成をどうするか議論しようとする動きは,明るい兆しと言えるだろう」と結んだ。
日経ITプロフェッショナルは、2006年4月号から「日経SYSTEMS」と誌名を変更し,日経システム構築と統合して紙面を大幅に拡充します。