放射能汚染した衣類についての東大医科研の坪倉医師の記事「それは内部被曝じゃなかった」がネット上で批判されています。この記事に対する矢ケ崎克馬先生の反論がありましたので掲載します。
衣服についた放射性物質で被曝をしてしまうということは以前にもブログで取り上げました。南相馬の子供のTシャツが130ベクレル、しかも洗濯しても数字が上がったという南相馬市の安心安全プロジェクト吉田邦博さんの報告がありました。↓
福島県では中学生のつるつるしたジャージもこのように汚染されているのが現実です。 しかも洗濯しても落ちなかったという実験結果に、放射能汚染の深刻さを感じざるを得ません。
その衣類の汚染について、坪倉正治氏が朝日新聞の医療サイト「アピタル」に書いたブログ記事(2/2分)
『それは内部被曝じゃなかった』http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013020100003.html
を読んで、まず一般人の私でもこれはおかしいと思いました。「内部被曝じゃなかったらいいのか!服脱げばいいみたいに言うなんて間違ってる!しかも外部被曝してないなんて嘘だ!」と。さらに私はドライクリーニングで有機溶剤を使う仕事も危険だと懸念しています。原発事故前でも白血病になったクリーニング業者を知っているからです。もともと揮発性の有機溶媒の微粒子を吸い込んでしまう危険な仕事です。その上今は、職業的に衣類についた放射性物質を吸う危険が高まっています。追加リスクです。この点に関して坪倉医師はブログ記事で何も指摘してませんでしたが、一般人を騙すこの医師の専門が白血病をよく知るはずの「血液内科」というのも余計に納得いかないと私は思いました。
ネット上で批判されたこの坪倉医師の欺瞞に満ちたブログ記事に、私のような一般人は科学的に反論できずにいましたところ、矢ケ崎克馬先生が反論してくださってましたので是非お読みください。被曝をさせられる市民の側に立つ科学者として反論してくださった矢ケ崎克馬先生に心より感謝致します。ありがとうございました。↓は矢ケ崎克馬先生に私が頂いたことば。
http://blog.livedoor.jp/medicalsolutions/archives/51967777.html より転載↓
矢ケ崎克馬先生の坪倉氏のブログ記事「それは内部被曝じゃなかった」への科学的批判 (太字強調は管理人)
《48》 それは内部被曝じゃなかった 2013年2月 2日を見て「何と情けない」「科学的考察のできない」「安全論者」になっているのだろうと慨嘆しました。少し坪倉氏の論理を批判したいと思います。
去年の夏頃の検査でセシウム134と137併せて、3000Bq/body程度検出する方がいました。40代の成人男性で体格はやや細身、職業は事務でした。
その時は、何かしら高度汚染食品を摂取したのかなと思っていたのですが、腑に落ちないところが少しありました。・・・
その原因は、スーツに残った汚染でした。・・・
今回のことで言えることは、検査前は着替えましょう。というだけです。・・・
理論上、この外部被曝の影響を考える必要はありません。たとえば、1000Bqのセシウム137の(非常に小さい)固まりがあったとして、1mの距離での空間線量は6.2x10^-5(0.000062)μSv/hほど上がる計算になります。3000Bqの服を身にまとったとして、その体の中の空間線量の増加分は0.001μSv/h程度の桁にすらならないと計算されます。空間線量計の精度をご存知であれば、意味がある数字かどうかはお分かりになると思います。
(IAEA資料 IAEA-TECDOC-1162 88ページ参照)
まず、被曝解析について、坪倉氏のあまりにも無知が目立ち、被曝を解析する能力の無いことを自ら暴露していることです。何故このようなむしろ率直すぎる用語を使うかと申しますと、坪倉氏の論理が坪倉氏個人の論理に留まらない、市民の命と健康の切り捨てる陣営の一角を担っているものと判断せざるを得ないからです。
放射線被曝を解析するとき、被曝線源と被曝する人の実際上の位置関係、線源の形態、線種の飛程等々、物理的条件を考慮して初めて実際の危険を数値として反映することができます。
市民の実生活上の被曝で、衣服に付着した汚染による被曝は深刻です。単にスーツだけでなく下着等も汚染されていることが報告されています。
衣服等の汚染を放射線源とすると、点線源ではなく面線源です。面線源の場合、最も単純な解析モデルは、放射線は面の両側に平等に出て、放射線は面に垂直に放射されるというものです。これはあくまで、面は広く、点線源が面上に均等に分布している状態で、放射線が身体をどう貫くかという幾何学的展開を単純化したモデルです。面が平面をなすならば、放射線は平行線と近似できるというモデルです。衣服の場合は、身体の両側から被曝させるので、単位面積当たり放射する放射線の半分ずつの放射線が両側からやってくるのです。衣服を割いて平面にしたならば、そこから出ている面当たりの全放射線量の半分が被曝を与える放射線になります。被曝がさらに線源から被曝する人の体に至る距離関係は、衣服が身体に密着していると考えれば、発射される全量のきっちり半分が身体を被曝するのです。
坪倉氏が点線源で1m離れたところの数値を計算していますが、全く的外れでのモデルを適用しようとしています。おそらく、ご自分で計算などしないものだから、どこかに数値が載っているものを転用しただけなのだと推察しますが、これで一人前の「科学者」ぶりをして安全度を解説しているのだから有害で、迷惑千万な話です。市民の健康を心配するのならば、倫理上絶対に許されない、「現実を理解しない上での「安全論」」をひけらかしているのです。
坪倉氏のモデルとしている点線源の場合だけでも6ケタもの過少評価につながります。なぜなら、点線源から発射される放射線量は単位時間について一定で放射状に発射されるので、計算しようとする「点線源を中心とする球の表面」上でどの場所でも同じ強さになり、単位面積当たりの被曝線量が計算できるのです。ところで衣服が汚染されているのですから、衣服上の一つの点線源は、身体までの距離が1mm程度です。点線源から考えている点までの距離の二乗がそこに描いた球面の面積に比例しますので、この場合半径1mと1mmの距離の比率は1000倍違います。表面積はその二乗に比例しますから100万倍大きさの程度が違います。すなわち6ケタ違います。坪倉さんのどこかの文献で見つけ出してきた線量を100万倍したら、皮膚に密着した場合の線量の目安となります。坪倉氏の出している数値0.000062μSv/hの100万倍は62μSv/hになります。巨大な被曝線量です。そのあと、3000Bqの服を身にまとったとして、と「計算した」と称している数値はまさに被曝計算の物理的設定もできない者が、「専門家」ぶった安全論を説いています。
その上、1mでは届かなくなっているベータ線→アルファ線は1mmでは完全に被曝に寄与しているのです。セシウムだけとっても、セシウムはベータ線を出し、バリウムになり、バリウムがガンマ線を出します。セシウムとバリウムは放射平衡を構成しており、物理的現実は2本の放射線を出しており、「セシウムのガンマ線」という表現は間違いなのです。衣服の被曝を論じるのならば、せめてこの程度は論じてたうえで、どうぞ「安全論」に進めるのならお進みください。
「空間線量計の精度をご存知であれば、意味がある数字かどうかはお分かりになると思います。」とおっしゃっていますが、物理的な条件の違いもわからない方が、「意味がある数字かどうかはお分かりになると思います」は無いでしょう。意味もわからない方が安全論を説くのは、市民としたら有害な厚顔無恥の輩でしかありません。
「今回のことで言えることは、検査前は着替えましょう。というだけです。」という弁にも市民の健康に対する配慮そのものが伺えません。東電事故前は被曝なんてほとんど無縁であった市民が現実に多面的に被曝していることをどう思っているのでしょう? 被曝地の住民に関わっている以上、チェルノブイリの現実を学んでください。WBCの精度が尿検査に比較して少なくとも2ケタ以上は悪く、WBCは被曝の現実を切り捨てて、「検査をしてみましたが被曝はありませんでした」と、原子力ムラのご都合に奉仕しているのではないのでありませんか?
否、これは坪倉さん個人の科学者の資質の問題ではなく、加害者の論理を被害者に強制する「原子力ムラ」の一員を、周囲からほめられて一所懸命演じているのではないのでしょうか?
被曝の「科学」は原爆以来徹底した加害者の都合が「科学的」と称されてきて、実際の被害を切り捨てる論理が放射線学の世界的「原子力ムラ」を形成してきました。こういう歴史も是非学んでください。何よりも現実を市民に寄り添って科学的に考察できる人間として誠実な人になってください。
こんなことをしているのなら、坪倉さん、あなたはホールボディーカウンターの操作はできるテクニシャンではあるかもしれませんが、専門的な判断をする科学者あるいは医者とは名乗らない方が良いのではないでしょうか?
医師の肩書持った「安全論の官僚」は医師の仕事はしていないのだと思います。医師ならば、市民に寄り添って、健康を最大限防護する心が無ければならないと思うのです。以前、講演会で鼻血を出した市民の話を聞いたとき、たちどころに「それはでたらめな情報だ」という意味の言を発し、切り捨てたと聞いています。何故もう少し丁寧に科学的に考察する姿勢を持てないのでしょう?バンダジェフスキーの臓器解剖結果をどう読み解きますか? 条件記載が明示されていない論文は論文として認めないから、その事実は無かったことにするというお考えですか。少なくとも被曝の結果の解析の背後にある可能性として受け止めれば、でたらめ情報と切り捨てる権威主義は出てこないでしょう。
矢ケ崎克馬
追記
(管理人個人より~素人なりに汚染衣類について考える)
まずはじめに、当ブログ記事について「私なら人に紹介しない」という、指摘をされました。「私なら人に紹介しない」という言葉に潜む問題は、「自分はそういった物理の知識がなくてわからない。無責任になるので紹介しません」という意識を市民に植え付けようとしていることにある、と思っています。「物理がわかってない人は誰かに言っちゃいけないんだ」と市民が自粛するのを狙っているのです。さらに追い討ちをかけて市民を馬鹿にし揶揄してくる人間も出てきます。東電の会見でも、技術論に持っていって記者や見ている人をおいてけぼりにするというのはよくあったパターンです。がれき問題でも見られました。空間線量のみに着目させたり、シーベルトに換算するあたりでごまかしてきます。東大話法も使われるでしょう。「わかってないやつはだまっておけ」という人間が原発ムラを作って原発をはじめたのです。そして「わからないやつをだまして危険な作業をさせて」原発を続けてきたのです。
http://togetter.com/li/452430
このツイッターまとめでは汚染衣類のシーベルトに換算した数字が正しいか正しくないかを問題にしています。結果的に矢ケ崎先生と、先生を信じる市民への攻撃・中傷になっているまとめです。私たち市民は被曝をさせられている側です。ですから市民にとっては、自分の被曝が追加されるかどうかが問題なんです。本来体調が悪い人、体が弱い人にとっては、避けなければいけないリスクが分かれば十分なわけです。計算した衣類の汚染の数字が仮に低くても、子供の体調が悪くなっていくなら、その数字は意味がないということです。
学習院大学理学部物理学科の田崎 晴明氏も汚染された服を着た時に受ける被ばく線量を計算されています。
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/ContaminatedClothing.html
こういった被曝線量の計算は、理系の学者が少なく見積りたいと考えれば数字を変えることは可能だと思います。
しかも、市民側でない立場の学者、あるいは中立?の立場を維持したい学者であればあらゆる数値を少なく見積もってくるという実態は3.11以降、市民もたくさん見てきました。立場で数字は変えられてしまうのだなと素人でもわかりましたし、またショックを受けました。
私の素人一般人としての個人的な考えですが、まず、放射能防御に関して被曝をさせられる側=市民側にたった学者の意見を参考にする。被曝自体を過小評価していないかどうかその科学者のその他の意見も調べる。自分なりに限界まで調べ学習し、最終的に母親の責任として限界までリスクを減らす。
内部被曝の計算にしても同じだと思います。御用学者は未だにカリウム40の話をするし、実効線量の話に持っていきます。3.11以降、御用から脱原発になった学者には「極端を避けろ」という論調もあります。ちなみに日本でもっとも内部被曝を危険だと言っておられる学者は矢ケ崎先生です。http://www.acsir.org/regulations.php
衣類に付着した放射性物質も水道水や食材に含まれる放射性物質も、すべての核種の検査はされていません。いわゆる御用学者・専門家が係数をあれこれかけて数字をいじって素人を煙に巻き、机上の計算で被曝影響を少なく見積もることに私は意味を感じません。害悪しかない。仮に少なく見積もった数字を信じて、自分が放射能防御を怠った結果、自分や子供が病気になったとしたら、自分にとっては100%だからです。被曝による病気は白血病やガンだけではありませんし、病気でQOLが下がることは避けたい。当然治らない病気もあります。
結論として、着ている衣服が高線量となるような、空気中に放射性の浮遊物が多い地域で、「衣類が汚染されていたせいだ、内部被曝じゃないから良かった、計算したら大したことない」という論など、意味がないだけでなく、これこそまさに被曝蓄積、リスクの追加、現に出ている健康被害実態を無視した暴論です。311以降、汚染地域では、汚染空気の吸入、汚染水道水、汚染食品の摂取で、住民は相当の内部被曝をしています。計算の数字がどうであれ、汚染衣類を身にまとっていれば被曝はさらに追加で加算されるということは、文系素人でも誰でもわかることだと思います。
しかも衣類の繊維に付いている放射性物質の微粒子をホコリとして、着ている人が常時吸い込んでいることの危険性を、学者がなぜか指摘していません。内部被曝・ゼロ距離の被曝を否定したい学者だから言わないのは当然だけど。
汚染衣類の件でこれだけ御用学者、ネット工作員を含めてネットが騒がしくなるということは、「衣類の汚染を過小評価したい」、いろいろな数字を出してきて難しい説明を加え、一般素人が「なんだか難しくてよくわからないから棚上げ」となるように誘導したいという意図を感じます。なんとしても汚染衣類の影響を一般市民に隠したい勢力と、「衣類を気にしていたら服を全部捨てなきゃいけなくなるのでそれは困る」という市民側の単純な願望が結びついているような気もします。想像ですが。
それではその汚染衣類を捨てるとどうなるのでしょうか?衣類は燃えるゴミです。ごみ焼却場で燃やされ、バグフィルターを抜けた核種は、空気中に浮遊し、土壌や水源を汚し、環境中にループします。
問題は「汚染された服は着なきゃいい」ではとどまらないということです。
すぐさまゴミ問題となって私たちに跳ね返り襲いかかってくるということは、鮫川村問題、汚染焼却灰問題、震災がれき問題を見ればわかることです。
長時間消えない汚染毒物を出して、その危険性を過小評価し、燃やして目の前から消し去り、見えない毒を何世代にもわたって撒き散らすという行為を、もうやめなければならないと思います。
関連
http://blog.livedoor.jp/medicalsolutions/archives/51966467.html#comments
http://memogoldentama2.blog.fc2.com/blog-entry-159.html
http://ameblo.jp/megumi-jk/entry-11454629919.html
http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/254.html