見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

歳末二題/セザンヌ主義(横浜)・青磁と染付(戸栗)

2008-12-30 23:50:34 | 行ったもの(美術館・見仏)
 年の瀬に入り、ようやく自分の身辺が落ち着いたら、多くの美術館も年末休みに入ってしまった。その直前に、慌しく見てきた展覧会が2つ。

■横浜美術館『セザンヌ主義-父と呼ばれる画家への礼賛』(2008年11月15日~2009年1月25日)
http://www.yaf.or.jp/yma/index.php

 12/22(月)に休暇を貰うことになったので、月曜に開館しているこの美術館に行ってみた。そうでなかったら、敢えては見に行かなかったかも知れない。でも、今よりもっと西洋絵画に関心が高かった10代~20代の頃、セザンヌは好きな画家だった。面白みのないところがいいのである。全く面白みはないのに(色彩と形態を積み上げるようにして作っただけの画面なのに)滲み出すような情感が感じられるところもいいのである。

 私が心惹かれた作品は、キャンパスの一部を白く残したままの風景画。榊原悟さんがいう「即画(即席画)」みたいで、一瞬の即興性を封じ込めたような魅力を感じた。なお、本展は、セザンヌに影響を受けた多くの画家の作品を一緒に展示していて興味深い。日本画家とは、特に相性がいいような気がする。会場の最後に、南仏プロヴァンスに残るセザンヌのアトリエの大きな写真パネルが飾られていた。これが、なんというか、セザンヌ作品の、即物的な雰囲気とは異なり、文学的なディティールに満ちているのが面白かった。

■戸栗美術館 『青磁と染付展-青・蒼・碧-』(2008年10月5日~12月24日)
http://www.toguri-museum.or.jp/

 「青」をキーワードに青磁と染付の優品を展示する。『japan 蒔絵』展によれば、マリア・テレジアの好みは「ダイヤより蒔絵」だったそうだが、私は断然「ダイヤより青磁」である。日本・中国・朝鮮の青磁には、それぞれ特徴があるが、私は中国(元代)の「玉壺春」がいちばん好きだ。限りなく翡翠に近い深緑色をしていて、翡翠の暖かみが手のひらに伝わりそうな感じがする。高麗青磁は「やや灰味がかった」と解説にいうけれど、ほとんど灰色である。これが朝鮮の好みなのだろう。

 日本では17世紀前半から青磁の制作が試みられた。しかし、初期伊万里の青磁を見ると、全面に貫入(ひび)があったり、白っぽい色ムラが見られたり、古い飴玉みたいで美しくない。17世紀後半には日本でも安定した青磁の生産が可能になる。中国の青磁が、伝統的な器形に限られているのに比べると、日本の場合は、イミテーションの気安さなのか、バリエーションが豊富で、時には染付け文様を加えてみたり、「カジュアル青磁」の楽しさがある。

 染付けは、いちばん日常生活に馴染む様式だと思う。展示ケースに並ぶ器を見ながら、このお皿には厚揚げとオクラを載せたいとか、こっちの小鉢にはイクラと大根おろしとか、盛り付ける料理をいろいろ想像してしまった。
コメント
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