証券会社がピンチ!
金融庁が決定した「手数料の透明化」の衝撃

あの「御三家」が窮地に立つ?
【PHOTO】gettyimages

狙われた「準大手三社」

金融庁(森信親長官・1980年旧大蔵省入省)が9月11日に公表した「金融行政の基本方針」に盛り込まれた監督・検査の課題が証券業界に衝撃を与えている。

金融庁はこれまでも投信の回転売買による手数料の荒稼ぎを厳しくチェックしていたが、それに加えて、「手数料の透明化」が打ち出されたからだ。

というのも、一部は証券会社が販売目標を課して売りさばいている金融商品には手数料が開示されておらず、そのなかで法外な収益を上げているものがあるのだ。

そのひとつがデリバティブを活用したオーダーメイド型の仕組債である。証券業界のなかでは、大和証券(日比野隆司社長)、東海東京証券(生田卓史社長)、岡三証券(田中健一社長)の大手、準大手の3社がこの商品の御三家となっているという。

投信のような販売手数料は設定されておらず、証券会社は自身の組成コストを勘案して、あとは仕切り価格という形態で価格を設定し販売している。

見かけ上、販売手数料は存在しないような恰好になっているが、仕切り価格と組成コストの間の値ザヤが実質的な手数料となっており、「実質的な手数料率は法外に高い」(大手証券関係者)ようだ。

たとえば、この御三家と言われる3社の場合、この一年ほどでも、5%~6%、なかには9%以上の手数料を抜いているケースもある。

仕組債は一般にハイリスク・ハイリターン商品であり、一部には相場変動次第で投資元本がゼロになるような商品もあり、これまでも、そのリスクの高さが問題されてきた。

購入する投資家がそのようなハイリスク性を認識していればまだしも、十分に理解せずに購入し、思わぬ多大な損失を被ったことが大きな社会問題になった過去がある。しかし、その一方ではこれまで実質的な手数料の存在はあまり話題にはなってこなかった。

ところが、金融庁の中には、そうした仕切り販売によって実質的な手数料の存在が隠されていることが、法外な手数利率の横行を助長しているという見方が根強かった。

少なくとも、そうした手数料の存在を投資家に対して説明することが手数料率の適正化やハイリスク商品投資による損失発生のようなケースを抑制するという考え方だ。

証券会社には、投信の回転売買の自粛による手数利用収入の落ち込みを仕組債販売の強化でカバーするという発想もある。

つまり、金融庁がこの間強力に推し進めてきた「投信販売の適正化」が仕組債販売の拡大につながった面もあるわけで、金融庁としても、この事態を見過ごしかねる状況になっていたと言える。

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