第2回 生きものの「巧妙な体」をロボットに活かす

 スイスのチューリッヒ工科大学で、生物からアイデアを得たロボットの研究室長を務める飯田さんは、およそ15人のスタッフを統率し、日本にいる我々から見ると奇抜なコンセプトのロボット開発を続けている。1974年生まれだから、30代後半であり、研究者として最前線に飛びだした気鋭という立場でもある。

 では、飯田さんはどうやって、今の立ち位置にたどり着いたのだろうか。

「子どもの時に興味は、もう飛行機だとかロケットだとかでした。まあ、父の影響です。父が航空宇宙関係の仕事をしていたので」

 父上は、NASDA、旧宇宙開発事業団に勤めていたそうだ。それなら、確かに、少しでもそっち方面の興味がある子は、「飛行機だとかロケットだとか」に引き込まれるだろう。さらにお祖父さんがエンジニアでもあり、一族が、乗り物・機械の専門家だったのだという。

「大学院でたまたまロボットに出会って、ああ、これちょっとおもしろいかなっていうので始めたのが、運の尽きというか。ただ、飛行機とかロケットとか、勉強すればするほど細部に入っていくんです。でもロボットは、かかわっている研究者全員がほかの部分も分かっていないといけない。まだ全体を見られる学問だったというのがよかったんです」

 もっとも、飯田さんは、やがて日本のロボット研究に違和感を抱くようになる。

「修士で研究をかじってみて、これちょっと違うなと直感的に思ってしまったといいますか。日本でロボットっていうと、例えば鉄腕アトムにしろ、ドラえもんにしろ、そういう完成形のイメージが最初にあるじゃないですか。でも僕は、もっと違う角度からやってみたいと思いまして。若くてエネルギーと時間があるうちに外に出てみようと、日本を飛び出したんですね。生き物を見て、ロボティクスに活かす、ということはその時点で意識していました」

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