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2020年12月30日水曜日

Aerospace Engine Review Vol.10 SpaceX Merlin Engines, SpaceXのロケットエンジン本の執筆状況

Aerospace Engine Review Vol.10 SpaceX Merlin Engines, SpaceXのロケットエンジン本の執筆状況





SpaceXのロケットエンジンに関する同人誌(SpaceXのロケットエンジン本)の発行を目指して、数年前から、執筆中である。本記事では、執筆の進捗状況等をまとめる。


【関連記事】



        




当初、2020年12月に発行予定でしたが、コロナの影響、執筆状況の停滞等で、執筆活動は更に先に延びそうです。また、そもそも執筆対象のSpaceXの開発速度が速く、執筆が停滞してたら、ゴールポストが先へ先へと移動し、盛り込む内容が更に増えるのではないか…という状況です。調べれば、調べるだけ、調べることが出て来て、更に調べるという感じになっています。


「スカッドのロケットエンジン本で、この本は10年情報が色あせない、あと10年戦える」と書きましたが、実際10年戦えると思いますので、そちらで当分の間、我慢して頂ければと思います。久しぶりに、改めて自分の書いた同人誌を1、2ページ読んでみましたが、気が狂ってるぐらい詳しかった…(自画自賛)今回は、気長に書いて行きたいと思っています。また、本Blogでは、2年前より、ちょくちょくSpaceXの関連情報を掲載していますので、そちらを確認して頂ければと思います。


SpaceXのロケットエンジンについては、完全民間主導の自社開発のため、出てくる情報が少なく、推定に推定を重ねた妄想本になりそうな気がしています。しかし、TRWからのロケットエンジン開発の資料から、手掛かりを得たいと考えています。そういう訳で、本の内容は、TRW時代からの技術説明となっており、アポロ計画~現代まで内包するため、収拾がつかない感じになってきてるかもしれません。目標としては、35万字位の内容量となりそうです。(上下巻になるかもしれない)標準的なエンジン設計教科書とSpaceXの技術動向を融合した2020年代の幕開けに相応しいヤバイ本を書き上げたい…(なお、いつ出来るとは言っていない)



 

冷戦最中に出版された書籍の想像図。情報公開が少ないと、この様な妄想本となる。



年々皆が求める知識レベルは上がってるから、本1冊書くにしても、執筆毎に自分の理解限界を超えてくクオリティに仕上げないと手にとって貰えない訳です。情報なんてネット検索すれば色々出てくるのだから。それに最初から自分が知ってる範囲だけで本を書くなんて、そんなの面白くないじゃないですか… しかし、SpaceXのロケットエンジン本を書くにあたり、かなり広範囲に深くペーパーをサルベージしないといけないから、狂いそう(半ギレ)少なくとも2000ページは、英語を読まなくてはいけない…


調べれば調べるほど、奥深いSpaceX。SpaceXのチートさを日本で例えるならば、孫正義がIHI Aerospaceのロケット部門の部長級及び部下を引き抜き、ベンチャーを立ち上げ、M-Vの技術を転用してロケット開発、顧問として糸川博士もバックアップしてるチート状態です。
(⇒ イーロンマスクがTRW技術者を引き抜き、月着陸船エンジン開発者がバックアップ)





本を書くべきなのに、書かれない風潮への愚痴


以下は、一連の執筆をしてて愚痴を思う事があり、徒然と駄文をブツ切れに書き連ねる。

  • この世の中には、もっと沢山の面白い本が溢れるべきだと思う。しかし、本を書くという行為は皆面倒でやらないのだろう。何故、私が本を書くかというと、存在しないから自分で書くだけであって、本来もっと執筆すべき適任者(引退した当該分野の技術者等)が居るはずである。そういう人達を見つけたら、「あなた、もう本を読む年齢でも無いでしょう、そろそろ書く側に回る年齢では無いですか?」という煽りまくって、本を書かせて下さい。

  • 「生涯学習」という言葉がある。しかし、この言葉は、一方通行っぽくて、あまり好きではない。確かに人間常に勉強は必要なのだが、アウトプットが必要である。そんなことを考えている中、こんなニュース(図書館が「老人の館」に!トラブル続発で逆ギレ、怒号も)を最近みかけました。ご老人の方々は晩年、本でも執筆して、今まで得た知識と経験を社会に還元してほしい。アウトプットがない読書は、映画やTV等の娯楽を楽しんでるのとあまり変わらない。特に、年金生活で上がりを決め込んでる御老人には、言いたい。長く生きて来たのだから、多大な経験と知識がお持ちでしょう。図書館で暇潰すだけでなく、本でも執筆して、未来の日本のために、世間や若者に自身の知見を広めては如何でしょうか。

  • 以前は、あるプロジェクトの資料が情報公開されたら、詳しい書籍が出ると勘違いしていた。例えばアポロ計画が終わり資料を公開されても、昔は膨大な資料を物理的に入手出来ない。せいぜい数~十数の資料が手に入れば良い方で、少ない資料を基に本を書く。これでは、書かれる書籍が詳しくなり様もない。ではネットで電子資料がNASAのサーバー経由で膨大に公開され誰でも入手出来る今現在なら、詳しい書籍が出せるか?それも違う。情報を全部把握し考察、まとめて出版できる「能力のあり、やる気もある人間」が居るのか?商業的にペイ出来るか?そう考えると、詳しい公開資料が出ても、詳しい書籍は出るのは稀である。膨大な資料をまとめれる人間がほとんど居らず、商業的に人力でペイ出来ないなら、話題のAI等が進化すれば、まとめた書籍が将来的に出るのではないかという予測もあるだろう。しかし例え資料が自動的にまとめることができたとしても、その記述内容が本当に正しいかどうかを判断出来る人間が居なければ、出来上がった物は世に出せない。情報化社会となり、簡単に「最高の材料」は手に入るのに、それを調理する「料理人」不在のために、腐らせることはあるのではないか。

  • 大量の詳細資料が倉庫に散逸してても、興味が無い人から見ればゴミ。最後には、大掃除で捨てられる。電子情報が大量に保存されてても、理解できなければゴミデータ。最後には、全部削除される。資料同士の点と点を線に起こし、意味を説明し、料理した形でしか後世には残らない。散逸した書類は捨てられる。散逸したデータも捨てられる。しかし本は残る。何故なら、本という体裁をなして、まとまっていれば価値があるからだ。まとまっていれば、他の人が見ても理解ができる。本を売ることはあっても、捨てる人間はほとんど居ない。

  • 昔なら、自分の著作でなくとも、英語が得意で知見がある人が、外国の有名著作を一から日本人向けに日本語翻訳し、様々な分野で日本語の専門書を読むことができた。しかし、今やそんな世の中ではなくなってしまった。「学びたいなら、己の能力を使って学べ」という考え方が蔓延り、「自分の能力は自分の利益ために使う」時代が到来している。

  • 本を書ける能力がある人間、あるいは本を書くべきプロジェクトの当事者は、ノブレスオブリージュを果たし、本を書くべきである。これは、どの分野に居る人間にも言えることである。その道の第一線で活躍している人達は、その力を自分のためだけに使うのではなく、後輩育成のために、優れた書籍を執筆して下さい。それが社会を良くすると思います。


2020年12月26日土曜日

ロケットエンジンのクリスマスツリー, Rocket Engine Christmas Tree

ロケットエンジンのクリスマスツリー,
Rocket Engine Christmas Tree



Update:2020.12.26




クリスマスの季節、ロケットエンジンでクリスマスツリーを作るのが流行っている。皆さんも、ロケットエンジンを手に入れた際は、是非クリスマスツリーを作ってみて下さい。



        







イーロンマスクは、2019年のクリスマスシーズンにRaptorロケットエンジンをクリスマスツリー仕様にデコレートした画像をアップロードした。










これが筆者が知る限りで、最初のロケットエンジンクリスマスツリーの事例であった。

アメリカでは、個人がアンティーク的コレクションとしてロケットエンジンを所有する趣味が存在し、マイロケットエンジンを持っている人も少なくない。2020年は、SpaceXのロケットエンジンクリスマスツリーに触発された人が、SNS上で、ロケットエンジンクリスマスツリーを作って披露する人が出て来た。










こちらは、エンジニアでコレクターである、rocketpoweredkeith (@nospamkpb)氏がデコレーションした、ロケットエンジンクリスマスツリーである。Rocketdyne XLR-105 初期のアトラスロケット/アトラスICBMの補助エンジンをデコレーションしている。



これに続き、SpaceXの副社長、ロケットエンジン設計エンジニアであるトムミュラー氏が投稿した画像が下記である。











デコレーションされているのは、開発初期のMerlin1Aロケットエンジンと見られる。このエンジンは、アブレーション冷却式であり、CFRP製の幅広な燃焼室も、エンジンの特徴である。




また、宇宙ベンチャーのFirefly Aerospaceでは、ロケットのフェアリングの中にクリスマスツリーを格納して、投稿している。







ロケットエンジンに限らず、ジェットエンジンでも、車のエンジンでも、本棚でも、TVでも、PCでも、コンピュータでも、何でもLED電飾を巻き付ける事によって、クリスマスツリーにすることが可能である。筆者も、以下2種類のLED電飾をAmazonで買ってみた。




 



このLED電飾は、昔ながらの電球電飾の様にケーブルがきっちりしており、家庭用コンセントで作動する。最大1000球まで連結できる拡張性もあり、しっかりとした作りである。室内で作動させるなら良い品である。





 


この製品は、極めて安価であり、リモコン式、IP67の防水性があるとされている。実際、乾電池で作動するため、屋外でも使用可能である。しかしながら、作りは非常に雑である。2本の銅線をむき出しで製造している。むき出しの銅線に対して、各LED並列につなぐことで、光らせる仕様である。一見感電しそうだが、乾電池2本の電流・電圧だから気にしないといったところか。1シーズンの使い捨てとして、安く済ませたいのなら、この製品でも十分であろう。


References
[2] SpaceX's "Christmas tree" is a Raptor engine for the holidays, https://www.teslarati.com/spacex-starship-engine-raptor-milestone-festive-decorations/








During the Christmas season, it has become popular to make Christmas trees with rocket engines. If you have a rocket engine, please try to make a Christmas tree with it.



       






Elon Musk uploaded an image of a Raptor rocket engine decked out as a Christmas tree for the 2019 Christmas season.






As far as I know, this was the first example of a rocket engine Christmas tree.


In the United States, there is a hobby of owning rocket engines as an antique collection, and many people have their own rocket engines. In 2020, people inspired by SpaceX's rocket engine Christmas tree will be making and showing off their own rocket engine Christmas trees on social media.





This is a rocket engine Christmas tree decorated by rocketpoweredkeith (@nospamkpb), an engineer and collector. The tree is decorated with the auxiliary engines of early Atlas rockets and Atlas ICBMs.



This was followed by the following image posted by Tom Muller, SpaceX's vice president and rocket engine design engineer.






The decorated engine is believed to be a Merlin 1A rocket engine in the early stages of development. This engine is ablative cooled, and the wide combustion chamber made of CFRP is also a feature of the engine.



Also, Firefly Aerospace, a space venture company, has posted a Christmas tree stored in the fairing of a rocket.






Not only rocket engines, but also jet engines, car engines, bookshelves, TVs, PCs, computers, and anything else can be made into a Christmas tree by wrapping LED lights around it. I bought the following two types of LED lights from Amazon.




 


The LED lights have a tight cable like the old-fashioned bulb lights, and can be operated by a household outlet. It is also expandable to connect up to 1000 bulbs and is well made. It is a good product for indoor use.






 


This product is extremely inexpensive, remote controlled, and is supposed to be IP67 waterproof. In fact, it can be used outdoors because it runs on dry batteries. However, it is very poorly made; it is made from two bare copper wires. Each LED is connected to the bare copper wire in parallel to make it glow. If you want to use it cheaply as a disposable product for one season, this product will be sufficient.



2020年7月11日土曜日

SpaceXとノースロップグラマン(TRW)とのロケットエンジン技術訴訟, Rocket Engine Technology Lawsuit between SpaceX and Northrop Grumman (TRW)

SpaceXとノースロップグラマン(TRW)とのロケットエンジン技術訴訟,
Rocket Engine Technology Lawsuit between SpaceX and Northrop Grumman (TRW)







SpaceXは、TRWを買収したノースロップグラマンとの訴訟問題を2004年に抱えていた。2005年、最終的に合意内容は機密として和解したが、買収前にTRWのロケットエンジン開発部門長だったトム・ミュラーがSpaceX創業時に移籍したことが、直接問題となった事例である。


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1. ノースロップグラマンの米国防省での仕事監督請負契約


ノースロップグラマンは、米軍の航空機やNASAの宇宙開発関連事業に関わるメーカーである一方、米国防省内においては、米軍と契約したロケット会社や衛星会社の仕事を監督するための請負契約をしているという2つの顔を持っている。航空宇宙分野の様な、高度な技術プロジェクトを進めるには高度な知見を持った専門家が必要である。しかし、米国防省内に十分な人数の専門家が足りていない。このため、米軍はノースロップグラマンと契約し、技術者を米軍に派遣することで、代理人としてプロジェクトの監督仕事を行わせている。

2004年1月までは、この2面性に大きな問題なかったが、DARPA FALCON計画において、SpaceXがFalcon1ロケットの設計レビューを行っていた際に問題が発生した。SpaceX Falcon1ロケットの設計レビューにおいて、米空軍から雇われたノースロップグラマンの技術者が設計レビューの審査員だったことに問題が起因する。





2. SpaceX Falcon1 ロケットの設計レビュー審査員はノースロップグラマンの技術者


以前の記事で述べた様に、DARPA FALCON計画で、SpaceXのFalcon1ロケットは、打ち上げロケット(SLV)として採択され、設計レビューが進んでいた。

しかし、2004年1月ノースロップグラマンの技術者達が、米空軍の仕事監督請負として、SpaceXのFalcon1ロケットの設計レビューの審査員を行っている一方、同一技術者らがノースロップグラマンのロケット開発にも携わっていることをSpaceXが指摘したのである。

通常、ライバルプロジェクトに従事する従業員は、関連プロジェクトから隔離することが求められているが、米空軍は、DARPAとの共同事業であるFALCON計画において、SpaceXのFalcon1ロケット設計を審査し、評価するために審査員・監督者としてノースロップグラマンを選定していた。2004年1月のFalcon1ロケット設計レビューにおいて、SpaceXの幹部がこの規定をノースロップグラマンが守っていないことを懸念し、SpaceX幹部であるGwynne Shotwell氏が、審査会議を中断、ノースロップグラマン側の参加者に競合する宇宙ロケットプログラムに関与する者がいるかどうか尋ねた所、8人の審査員の内、5人が手を上げる事態となった。

そこで、SpaceX社は審査会議を中止し米空軍にクレームを付けた。数週間後、1人を除いて審査員を全員辞退させ、米空軍は、技術支援以外に開発に携わっておらず、政府が出資しているAerospace Corp.のエンジニアに審査員を交代させた。(Aerospace Corp.は、TRWのロケット開発部門設立以前に、TRWの前身と同一会社であり、米空軍にロケット設計技術のコンサル・評価を行っていたが、政府機関色が強いエンジニアリング企業として分社化した経緯がある企業である)





3. SpaceXの起業経緯とノースロップグラマン(旧TRW)


2002年12月12日、TRWの防衛部門(ロケットエンジン開発部門・宇宙開発部門を含む)がノースロップグラマンに買収された。その約半年前の2002年5月6日、イーロン・マスクはSpaceXを起業している。イーロンマスクは、TRWが買収される以前、TRWのロケ
ットエンジン開発部門の部長であったトム・ミュラー(及び部下)をロケット開発人材としてSpaceXに引き抜き、SpaceXを創業した。つまり、当時のノースロップグラマン社(旧TRW)においてロケットエンジン開発の実績があり、社内内情と技術を良く知って
いる人間を引き抜いていたのである。

このことは、SpaceXのロケット技術開発が、全くの「ゼロ」からの開発スタートではなく、TRWのロケットエンジン技術をベースに開発されたことを意味する。そしてまた、この経緯こそがノースロップグラマンとSpaceXの訴訟問題に関する中核をなしている。





4. ノースロップグラマンに訴えられ、訴え返したSpaceX


この問題は解決せず、ノースロップグラマンは2004年5月に最初の提訴を起こし、自分は被害者であると主張した。ロサンゼルスの州裁判所において、「SpaceXと元TRWの技術者であったトム・ミュラーがロケットエンジン開発のために、ノースロップグラマン(旧TRW)の企業秘密を盗んだ。これは、守秘義務契約違反であり、SpaceX社もそれを知っていた」と法廷で主張した。

ノースロップグラマンは、具体的にSpaceXが「Northrop Gruman / TRW proprietary」と刻印された企業内文書を入手したと主張した。データの他10以上の文書を元技術者のトム・ミュラーがSpaceXに引き渡したと主張。これに対し、SpaceXは完全に否定した。問題となっている文書は数十ページあるが、そのようなマークがついているのは5ページだけである主張して、文書は不適切に所有権が指定されており、これらの文書は誤ってSpaceX社内に持ち込まれたとした。いずれにしても、SpaceXはそれらの資料を使用したことはないと主張したのである。

そして、このノースロップグラマンの訴えに対し、SpaceX側は、2004年6月にロサンゼルス連邦裁判所にて、ノースロップグラマン社の訴訟はSpaceXに損害を与えることを目的とした「反競争的で違法な行動だ」と独占禁止法違反を主張した。更に、ノースロップグラマンが米軍の政府顧問として、その立場を乱用しているとも主張。2003年3月まで遡り、SpaceX社に対する企業スパイ行為を彼らは行ったと主張した。一連の裁判では、Brian D. Ledahl氏がSpaceX側の弁護士を務めている。

一連の訴舩において、ノースロップグラマン社は、SpaceXがロケット部品技術に関する企業秘密を盗んだ(主にピントルインジェクターに関するものとみられる)と主張。一方のSpaceX側は、ノースロップグラマン社が政府の仕事監督請負の役割を乱用し、SpaceX側の機密情報を盗んだと主張した。そして、両社は共にどちらとも不正行為を否定した。





5. 裁判によって、Falconlロケットの発射は延期に


当時イーロンマスクは、「ノースロップグラマンは、我々がこれほど激しく戦うとは思ってもいなかった。自分たちに落ち度がなければ、貢物は払わない」と述べており、若いベンチャー企業にとって、これは気晴らしである一方、財務上の消耗であり、信頼と国防省のビジネスを得る能力が削がれるものだと認めている。この論争のため、SpaceXのFalcon1ロケットは、2005年に打ち上げを予定していたが、米空軍は2004年当時、その許可を出さなかった。





6. 米国防省の管理体制に疑問を投げかけた事件


一連のノースロップグラマンとSpaceXの訴訟問題は、米軍の兵器プログラムの開発において、軍が大規模に民間業者への外部委託、アウトソーシングすること、そしてその利益相反構造について疑問が投げかけられる結果となった。この様な民間外部委託契約によるノースロップグラマンの売り上げは、2004年だけで約7億ドルにのぼり、全体利益の約7%を占めていた。ノースロップグラマンは、他でも同じような利益相反の問題に直面した。2004年8月には、米海軍の対潜水艦プログラムにおいて、その評価について客観性が
欠けていると指摘された。





7. ピントルインジェクター技術を選んだことを一度は後悔したイーロンマスク


2004年当時、イーロンマスクは、「ピントルインジェクター技術を選んだことを後悔している」と述べている。しかし、それは法的問題のためではなく、性能的な問題であった。当時、ノースロップグラマンは自社の企業秘密を転用したがために、SpaceXが数か月でMerlin1ロケットエンジンを開発できたと主張していた。それに対して、SpaceX側の反論は、「求められるロケットエンジン性能が達成されてない」と述べた。

「血まみれのピントルインジェクターに関わらず、我々は目標を達成する」
(We will get to our objectives, in spite of the blood pintle.)

と述べ、当時では性能が出てないプロトタイプピントルをスクラップにし、他の方法がないか模索されていた。(結果として、ピントルインジェクター型のロケットエンジンに落ち着いている)





8. 秘密の和解案


結局のところ、ノースロップグラマンとSpaceXは、不正行為を認めたり、法的手数料や損害賠償金を支払わずに2005年に決着した。両社ともに訴訟を取り下げたが、和解の条件は「機密情報」であると述べた。2020年現在、今もなお、この和解内容は不明である。




        




References

[1] Can Defense Contractors Police Their Rivals Without Conflicts?,
      Jonathan Karp and Andy PasztorStaff, THE WALL STREET JOURNAL
      https://www.wsj.com/articles/SB110419401176710544
[2] Northrop Settles Rocket Dispute With SpaceX, Jonathan KarpStaff,
      The Wall Street Journal, Updated Feb. 11, 2005 12:01 am ET
      https://www.wsj.com/articles/SB110805958574251469
[3] http://www.raklaw.com/attorneys/brian-ledahl.html

2020年7月8日水曜日

SpaceX Merlin1 ロケットエンジンとマルチプルピントルインジェクター, SpaceX Merlin1 rocket engine and multiple pintle injectors

SpaceX Merlin1 ロケットエンジンとマルチプルピントルインジェクター,
SpaceX Merlin1 rocket engine and multiple pintle injectors






Update:2020.12.31




以前の記事で、SpaceXのMerlinエンジンはピントルインジェクターを搭載しており、公開されている特許情報から、ピントルチップ部分にアクティブ冷却機構を搭載している可能性を伝えた。しかし一方で、もう1つの可能性がある。それは、マルチプルピントルインジェクターを搭載している可能性である。


【関連記事】


なお、本記事の内容については、筆者の推定を多く含むことを注意して頂きたい。


        



1. 詳細不明のMerlin1 ロケットエンジンのピントルインジェクター




Merlin1Dロケットエンジンの写真とピントルインジェクター部拡大写真


米空軍(Los Angeles Air Force Base, Home of Space and Missile Systems Center)は、Falcon9ロケットのノズルスカートの中を撮影した写真を2020年1月9日に公開した。しかし、さすがに公開前に検閲を受けているだろうから、その詳細は拡大しても今だ不明である。燃焼時の焼き付きもあり、公開された写真はより不鮮明なものになっている。





2. Merlin1 ロケットエンジンがマルチプルピントルインジェクターを搭載している可能性


以前の記事で、SpaceXのMerlin1 ロケットエンジンはピントルインジェクターを搭載しており、公開されている特許情報から、ピントルチップ部分にアクティブ冷却機構を搭載している可能性を伝えた。一方で、もう1つの可能性がある。それは、マルチプルピントルインジェクターを搭載している可能性である。それは、前回記事にした様に、ノースロップグラマン社のTR-108ロケットエンジン仕様公開の例で明らかになった。

前回の記事でお伝えしたが、TR-108は、「ノースロップグラマンが開発した初めてのマルチプルピントルインジェクター型ロケットエンジン」である。しかしながら、「マルチプルピントルインジェクター」という技術は、TR-108において、世界で初めて実装されたのだろうか?

調査した所、「マルチプルピントルインジェクター」がTRW時代に開発されていたことを裏付ける資料は公開されたものは無く、特許情報についてもヒットしなかった。(具体的なアイデアが公開されていないだけで、単一のピントルインジェクターの特許情報の定義に含有される可能性もある)しかし、TRWがノースロップグラマンに買収される2002年より以前から、マルチプルピントルインジェクターの概念設計は実施されていた可能性が高いと筆者は考える。その理由は、以下の理由による。


  1. TR-108の開発では低コストの新規開発を目指していたため、新規開発要素を持ち込むのはリスクが高いこと。
  2. ピントルインジェクターは、他のインジェクターに比べて単純であるが、単一のピントルインジェクターにより推進剤を供給するには、サイズが大きくなりすぎる場合や、単一のピントルインジェクターで十分な能力を達成するのが困難と判断される場合が出てくると考えられ、その際に、複数のピントルインジェクターを持つ、マルチプルピントルインジェクターというコンセプトが開発されてもおかしくはない。
  3. インジェクターを単一のコンポ―ネントで実現する、通常のピントルインジェクターの方が、ロケットエンジンのインジェクターの方式の中では、異色であること。



他方、SpaceXが、マルチプルピントルインジェクターの技術を使用しているかどうかについての言及は、Web上で2020年7月現在、検索した結果、単なる「噂レベル」ですら存在しない。(下記画像参照)



Google USAの完全一致検索結果(2020年7月)






3. Merlin1Dのインジェクターに関する考察


以前記事にした中で紹介した、公開されているFalcon9ロケットを真後ろから撮影した画像を確認してみよう。解像度が荒いが、Merlin1Dロケットエンジンのピントルインジェクター部と思われる部分に、5カ所周辺と異なる色が存在する。(銅合金色)




Merlin1Dロケットエンジンのピントルインジェクター部


解像度が荒いため、これらの5点が立体形状か平面形状かは判断が付かない。(平面形状ならアクティブ冷却機構または治具取り付け部、立体形状ならマルチプルピントルインジェクターの可能性が高いと考える)以前の記事では、これを「平面形状」と考え、図の部分全体がピントルインジェクターだと考えた。従って、周辺と色が異なる5カ所の部分は、「アクティブ冷却機構または治具取り付け部」と判断した。

しかし、この配置は、中央点を取り囲むように4つの点が四角形を形成するように配置されている。これは、TR-108の様に(TR-108は7点の全体6角形形状)、マルチプルピントルインジェクターが配置されていると考えても違和感はない。また、最初に示した米空軍が公開した画像では、不鮮明ながら、TR-108と同じ6角形形状にも見える。この様に、Merlin1ロケットエンジンにマルチプルピントルインジェクターが搭載されている可能性は大いにあり得ると言える。



単一のピントルインジェクターを持つ Merlin1A エンジン


少なくとも、Falcon1ロケットのMerlin1A(推力34.67t (340kN))については、単一のピントルインジェクターであることが画像から判明している。(上記画像参照)下記の画像の様に単一のピントルインジェクターであり、中心には銅合金系の金属色が確認でき、ピントルチップ自体を冷却するアクティブ冷却機構あるいは治具取り付け部か固定具等ではないかと推測される。あるいは周囲がユニットになっており、この部分自体がピントルインジェクターの可能性もある。


Merlin1Dロケットエンジンをマルチプルピントルインジェクター化する利点は、筆者が考察した範囲で以下が考えられる。

  1. Falcon9に使用するMerlin1Dのロケットエンジン規模(推力:100t(981kN))では、当初開発したMerlin1Aの約3倍の推力に達している。この推力増強に追随して、フェイスシャットオフ機能を備えた単一のピントルインジェクター用の大型アクチュエータ-を搭載・動作させるよりも、5つまたは4つに分けたマルチプルピントルインジェクターに対して、それぞれフェイスシャットオフ機能を持たせた方が、システムの重量低減につながる可能性がある。
  2. マルチピントルインジェクターに、フェイスシャットオフ機能を持たせることで、新たに大型のフェイスシャットオフ機能を持つ、単一のピントルインジェクターシステムを開発する必要がない。ロケットエンジン推力から想定すると、システムの大きさ的には、以前の規模のピントルインジェクター設計の資産を引き継げ、最小の変更で、新型ロケットエンジンの開発が対応可能となる。
  3. Falcon9の第1段目の様に、地表着陸用のスロットリング機能を持たせる場合は、マルチプルピントルインジェクターシステムが有利に働くと考えられる。その理由は、単一の大型ピントルインジェクターでスロットリング制御するよりも、複数に分けて、それぞれを制御した方が、はるかに細かく容易に推力制御が可能と見られるからである。例えば、60%の推力で運用したい場合、単純に考えると、5つマルチプルピントルインジェクターの内、3つを開度100%、2つを開度0%で運用すれば良い。
  4. 複数のピントルインジェクターを持つために、故障時の対処手段の選択肢を持つことが出来、エンジンの信頼性が高くなる。


この様に推定を考えていくと、マルチプルピントルインジェクターを採用したTR-108よりも前に開発され、トム・ミュラーが開発に関わっていた、TR-106ロケットエンジン(LOX/LH2, 推力:294.9t (2892kN))、TR107ロケットエンジン(LOX/RP-1, 推力:499.66t (4900kN))のインジェクターの方式が気になるところである。

調査した所、少なくともTR-106については液体-気体混合型インジェクターであるが、単一の大型ピントルが使用されていた。しかしながら、TR-107については不明である。推力500tに迫る大型ブースターのTR-107が、マルチプルピントルインジェクター化されていたとすれば、トム・ミュラー率いるSpaceXがこの技術を用いる可能性は高い。



TR-107 ロケットエンジンの断面図と単一ピントルインジェクター


一方で、以前の記事に示した様に、Merlin1Dの該当部分は、アクティブ冷却機構や取付用の治具接続部だという可能性も捨てきれない。その理由としては以下が挙げられる。

  1. ピントルを増やすことで機構が複雑化する。
  2. TRW時代に開発された、大型のTR-106は、Merlin1Dの約3倍の推力規模に相当する。しかしながら、単一の大型ピントルを用いていた。


米国の税金が投入されているプロジェクトの契約を多数勝ち取っているとはいえ、SpaceXは、NASAと異なり、純粋な国の研究開発機関ではない民間企業である。自身のロケット開発も、自由市場の中で研究開発している。以前、「SpaceXの特許戦略と中国の特許情報無断使用例」の記事でもお伝えした様に、SpaceXのロケット開発の競争相手は、企業だけではなく、ロシア、中国を含めた世界各国と捉えており、特許という枠組みを踏み倒される相手も含まれる。従って、技術をパクられない様に、基本的にあえて特許を取らない道を選んでいる。

この特許を取得しない方針は、コカ・コーラやKFCの製造法と同じく技術内容を秘密にすることで他者よりも優位性を確保する手段であり、この手段を取っている以上、今後もMerlinロケットエンジンの技術的中身に関する詳細が公開されることは、ほとんど可能性がないだろう。

従って、これらの推論の検証を行う機会が今後あるかどうかは分からないが、現状の公開資料からは、Merlin1Dエンジンには、アクティブ冷却機構または、マルチプルピントルインジェクターを搭載している可能性は高いのではないかと筆者は考えている。



        



References


[1] Los Angeles Air Force Base, Home of Space and Missile Systems Center, 9th January, 2020
   https://www.facebook.com/SpaceandMissileSystemsCenter/posts/2933925223304839
[2] TRW's ultra low cost LOX/LH2 booster liquid rocket engine
     https://arc.aiaa.org/doi/abs/10.2514/6.1997-2818
[3] orbit seals, http://orbitseals.blogspot.com/

















In a previous article, It was reported that SpaceX's Merlin engine has pintle injectors, and based on publicly available patent information, it may have an active cooling mechanism in the pintle tip section. But on the other hand, there is another possibility. It is the possibility that the device has multiple pintle injectors.


【関連記事】



Please note that the contents of this article include many estimates by the author.


        



1. Merlin1 rocket engine pintle injector with unknown details




Merlin1Dロケットエンジンの写真とピントルインジェクター部拡大写真


The U.S. Air Force (Los Angeles Air Force Base, Home of Space and Missile Systems Center) released this photo of the inside of the nozzle skirt of a Falcon 9 rocket on Jan. 9, 2020. However, as expected, it would have been censored before being released, so its details are still unclear even after being enlarged. Due to the burning process, the photos released to the public are more indistinct.




2. Merlin1 Rocket Engine May Have Multiple Pintle Injectors



In a previous article, It was reported that SpaceX's Merlin1 rocket engine has a pintle injector, and based on publicly available patent information, it may have an active cooling mechanism in the pintle tip section. On the other hand, there is another possibility. That is the possibility that it has multiple pintle injectors. This is evident in the case of Northrop Grumman's TR-108 rocket engine specification release, as described in the previous article.

As It was reported in my previous article, the TR-108 is "the first multiple pintle injector rocket engine developed by Northrop Grumman. However, was the "Multiple Pintle Injector" technology implemented for the first time in the world in the TR-108?

In my research, I found no published material to support the fact that "multiple pintle injectors" were being developed during the TRW era, and no hits on patent information. However, it is my opinion that the conceptual design of the multiple pintle injector may have been implemented prior to the acquisition of TRW by Northrop Grumman in 2002. However, it is very likely that the conceptual design of the multiple pintle injector was in place before TRW was acquired by Northrop Grumman in 2002. This is because of the following reasons.


  1. Since the development of the TR-108 was aimed at low-cost new development, it was risky to bring in new development elements.
  2. Although the pintle injector is simpler than other injectors, it is expected that there will be cases where the size of the injector becomes too large to be supplied with propellant by a single pintle injector, or where it is deemed difficult to achieve sufficient capability with a single pintle injector, at which point the concept of multiple pintle injectors could be developed.
  3. The normal pintle injector, in which the injector is realized with a single component, is more unique among rocket engine injector systems.



On the other hand, there is no mention of whether SpaceX is using the Multiple Pintle Injector technology, even at a mere "rumor level" as of July 2020, after a search on the web. (See image below)




Google USA exact match search results (July 2020)






3. Merlin 1D Injector Considerations



Check out the image of the public Falcon 9 rocket taken from directly behind, which  mentioned in previous article previous article. The resolution is rough, but there are five different colors on what appears to be the pintle injector of the Merlin 1D rocket engine. 



Pintle injector section of Merlin 1D rocket engine


Because of the rough resolution, it is not possible to determine whether these five points are three-dimensional or planar shapes. (If they are flat, they are likely to be active cooling mechanisms or jig attachments; if they are three-dimensional, they are likely to be multiple pintle injectors.) In the previous article, I considered them to be "flat" and thought that the entire area in the figure was a pintle injector. In the previous article, I considered this to be a "flat shape" and thought that the entire area shown in the figure was a pintle injector. Therefore, I judged that the five areas with different colors from the surrounding areas were "active cooling mechanisms or jig attachment areas.


However, this arrangement is such that the four points form a rectangle around the central point. It is not incongruous to think that the multiple pintle injectors are arranged like the TR-108 (the TR-108 has an overall hexagonal shape with seven points). Also, in the image released by the U.S. Air Force shown first, it looks like the same hexagonal shape as the TR-108, although it is unclear. Thus, there is a great possibility that the Merlin 1 rocket engine is equipped with multiple pintle injectors.



Merlin1A Engine with Single Pintle Injector


At least for the Merlin 1A (34.67t (340kN) thrust) of the Falcon 1 rocket, the image shows that it is a single pintle injector. (See the image above.) It is a single pintle injector as shown in the image below, and the center of the pintle injector has a copper alloy metallic color, which may be an active cooling mechanism to cool the pintle tip itself, or a jig attachment or fixture. There is also a possibility that this part itself is a pintle injector, as it is surrounded by a unit.


The advantages of converting the Merlin 1D rocket engine to multiple pintle injectors are as follows, as far as the author has considered.

  1. At the Merlin1D rocket engine scale (thrust: 100 tons (981 kN)) used for Falcon 9, the thrust is about three times that of the originally developed Merlin1A. Rather than installing and operating a large actuator for a single pintle injector with a face shutoff function to keep up with this increased thrust, it would be better to install a face shutoff function for each of the five or four multiple pintle injectors. This may lead to a reduction in the weight of the system.
  2. By providing the face shutoff function to the multiple pintle injectors, there is no need to develop a new single pintle injector system with a large face shutoff function. Based on the rocket engine thrust, the size of the system can take over the assets of the previous scale pintle injector design, and the new rocket engine can be developed with minimal changes.
  3. If a throttling function for surface landing is to be provided, as in the case of the Falcon 9 first stage, a multiple pintle injector system will be advantageous. The reason for this is that rather than using a single large pintle injector to control the throttling, it would be much easier to control the thrust by dividing it into multiple injectors and controlling each of them. For example, if you want to operate at 60% thrust, you can simply operate three of the five multiple pintle injectors at 100% throttling and two at 0% throttling.
  4. Having multiple pintle injectors gives you more options in case of failure, and increases the reliability of the engine.


Considering these estimates, we can see that the TR-106 rocket engine (LOX/LH2, 294.9t (2892kN) thrust) and the TR107 rocket engine (LOX/ RP-1, 499.66t (4900kN) thrust) were developed before the TR-108, which used multiple pintle injectors, and Tom Muller was involved in their development. RP-1, thrust: 499.66t (4900kN)).

From my research, I found that at least for TR-106, a single large pintle was used, although it was a liquid-gas mixed injector. The TR-107, however, is unknown. If the TR-107, which is a large booster with a thrust approaching 500 tons, is a multiple pintle injector, it is highly likely that SpaceX, led by Tom Muller, will use this technology.



TR-107 Rocket Engine Cross Section and Single Pintle Injector



On the other hand, as shown in the previous article, there is a possibility that the part of the Merlin 1D is an active cooling mechanism or a jig connection for mounting. The reasons for this are as follows


  1. Increasing the number of pintles makes the mechanism more complex.
  2. The large TR-106, developed during the TRW era, was equivalent to about three times the thrust scale of the Merlin 1D. However, it used a single large pintle.


Although it has won a number of contracts for projects in which U.S. taxpayer money has been invested, SpaceX is a private company that, unlike NASA, is not a purely national research and development organization. It is also researching and developing its own rockets in the free market. As I reported in my previous article, "SpaceX's Patent Strategy and China's Unauthorized Use of Patent Information," SpaceX's competitors in rocket development are not only corporations, but also countries around the world, including Russia and China, including those who would overstep the framework of patents. Therefore, SpaceX has chosen not to patent its technology in order to avoid being taken over.

This policy of not obtaining patents is a means of securing an advantage over others by keeping the contents of the technology secret, just like the manufacturing methods of Coca-Cola and KFC, and as long as this policy is taken, it is unlikely that the details of the technical contents of the Merlin rocket engine will be disclosed in the future.

Therefore, I am not sure if there will be an opportunity to verify these inferences in the future, but from the current public data, I think it is highly likely that the Merlin 1D engine is equipped with an active cooling system or multiple pintle injectors.




        



References


[1] Los Angeles Air Force Base, Home of Space and Missile Systems Center, 9th January, 2020
[2] TRW's ultra low cost LOX/LH2 booster liquid rocket engine
     https://arc.aiaa.org/doi/abs/10.2514/6.1997-2818
[3] orbit seals, http://orbitseals.blogspot.com/




2020年7月4日土曜日

TR-108 ロケットエンジンとマルチプルピントルインジェクター, TR-108 Rocket Engine and Multiple Pintle Injectors

TR-108 ロケットエンジンとマルチプルピントルインジェクター,
TR-108 Rocket Engine and Multiple Pintle Injectors





Update:2020.12.27




TRWがノースロップグラマンに買収された後の最初の大型ロケットエンジン開発となったTR-108ロケットエンジンには、極めてユニークな、「マルチプルピントルインジェクター」が搭戦されている。これは、単一のピントルインジェクターから推進剤を供給するには大きすぎたり、単一のピントルインジェクターでは十分なエンジン能力を達成するのが困難な場合に、複数のピントルインジェクターを搭載する技術である。


【関連記事】


      




1. 開発背景:MDAの液体ロケットブースター開発プログラム


米国ミサイル防衛庁(MDA)は、ミサイル防衛(MD)評価のため、弾道ミサイルを模擬する標的用弾道ミサイル開発も行っている。ノースロップグラマン TR-108ロケットエンジンは、標的用弾道ミサイルの液体ロケットブースターとして開発が開始された。

標的用弾道ミサイルには、固体燃料ロケットモータのものが大半を占めるが、ここで液体ロケットブースター変更する理由は、東側の弾道ミサイルを模擬したかったからである。東側の伝統的な弾道ミサイルの多くが液体燃料の推進剤を使用しているため、将来のテストと評価のため、液体ブースターの弾道ミサイル模擬を目的として、液体ロケットブースターステージを欲しがった。この様に、TR-108は、ミリタリーユースの上段エンジンとして開発された。ノースロップグラマンは、3年間で3000万ドルの契約を獲得している。

TR-108が、どの標的用弾道ミサイルに搭載されたか、その後情報はない。しかしながら、MDAが運用している標的用弾道ミサイルの中に、「Hera」という標的がある。Heraは、標的用弾道ミサイルとして、1992年に開発開始、1995年に最初の打ち上げが実施された。Heraは、退役したMinutemanII ICBMの第2段、第3段のロケットモータ、Pershing IIの誘導部を流用した標的機であり、過去には、PAC-3やTHAADの迎撃標的として使用された実績を持つ。Heraはまた、米空軍のサウンディングロケットとしても使用されている。





 


Hera 標的用弾道ミサイル


全   長:11.9 m (39 ft)
直   径:1.32 m (4 ft 4 in) (1st stage)
重   量:11300 kg (25000 lb)

第2段目:Hercules M57A1 固体燃料ロケットモータ 156kN (35,000lbf)
第3段目:Aerojet General SR19-AJ-1 固体燃料ロケットモータ 268 kN (60,300 lbf)


Heraで第2段目には、Hercules M57A1ロケットモータが使用されており、推力は15.6kNである。これは、TR-108の推力とほぼ同じである。従って、Heraの第2段目を液体ロケットブースターに置き換えるために、TR-108開発計画が実施されたとみられる。





2. ノースロップグラマン初のピントルインジェクター型ロケットエンジン


TR-108は、TRWのロケットエンジン開発部門がノースロップグラマンに買収・吸収されてから、初めて開発された大型のピントルインジェクター型ロケットエンジンであった。

2002年にTRWからSpaceXに移籍した、トム・ミュラー(Tom Mueller)は、以前にTRWにて、部門長、リードエンジニアとして、TR-106とTR-107 ロケットエンジンの開発に携わっていた。ナンバリングを見ても分かる様に、TR-108は、トム・ミュラーがTRW(現ノースロップグラマン)を去ってから、開発されたロケットエンジンである。

TRW時代とのロケットエンジン開発の異なりとして、主にスラスタに使用されてきた過酸化水素をグリーンプロペラントとして採用し、大型化を図っている。特に、過酸化水素をガス化するためのメイン触媒ベッドは、下請けとして開発にかかわったゼネラル・キネティクス社が製造した中で最大のもので、ベッドへの負荷と運転圧力の面で課題があった。

一方で、TRWを買収したノースロップグラマンは、米軍のレーザー兵器の開発の主な開発会社であり、エアボーンレーザー:YAL-1A、戦術高エネルギーレーザー:MTHEL等の実績があった。その中でも、YAL-1Aの開発においては、レーザー方式が、化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)であり、レーザー発生源の酸化剤として過酸化水素の豊富な取り扱い経験を有していたことから、その知見が、TR-108の開発に生かされている。





3. Northrop Grumman TR-108 ロケットエンジン






推   力:15.6 t (34,500lbf)
真空比推力:271 s
燃 焼 圧 力:6.2MPa(900psia)
推 進 剤:91% 過酸化水素/トルエン
混 合 比:5.84
C*燃焼効率:93~94%(最大96%程度)
ノズル比 :15.4
最 大 直 径:2.6 ft
全   長:4.9 ft


標的用弾道ミサイルの上段ステージとして開発されたため、形状としては、既存の機体のスペース内に収まりきる様に、短縮構成で設計されている。配管の取り回し、ターボポンプの配置も狭い中に設置するための配置をした形になっている。

TR-108は、タービン回すのが、単元推進剤のみで、システムとしてとても簡素である。酸化剤ポンプ出口から過酸化水素をタップして、ガスジェネレータに入れてやる。制御はその経路にある1つの高圧バルブ制御のみで良い。

TR-108開発時のMDAからの要求は、経常的なコストを抑える事であった。ターボポンプハウジングの鋳造、アブレーティブ燃焼室、他のシステムで飛行資格を得たCOTSハードウェア、高圧バルブの代わりにバーストディスクを採用。TRW時代から実績のある堅牢な技術と材料、製造方法を最大限用いて、コスト、スケジュール、リスクを最小限に抑えた。

主な開発要素としては、以下がある。

  • メイン触媒ベッド
  • 燃料用マルチプルピントルインジェクター
  • アブレイティブ燃焼室
  • モノプロペラントターボポンプ


TR-108の試験は、カリフォルニア州サンクレメンテにあるノースロップグラマンのカピストラーノ試験場において、完全に統合された構成でエンジン試験が実施され、成功を収めた。





4. マルチプルピントルインジェクター



TR-108のマルチプルピントルインジェクター


TR-108ロケットエンジンには、極めてユニークな「マルチプルピントルインジェクター」が搭載されている。上記の写真の様に、通常の単体のピントルインジェクターとは異なり、合計7個のピントルインジェクターを推進剤噴射側に配置している。7個のピントルインジェクターは、1個を中心とした6角形型の配置である。

これにより、混合比をより均一にするとともに、102個の燃料膜冷却孔を備えており、フィルム冷却を提供している。奥側に見えるメッシュは、91%の過酸化水素をガス化するメイン触媒ベッドである。

単一のピントルインジェクターにより推進剤を供給するには、サイズが大きくなりすぎる場合や、単一のピントルインジェクターで十分な能力を達成するのが困難と判断される場合には、複数のピントルインジェクターを持つ、マルチプルピントルインジェクターを採用する場合があると見られる。(公開文献においてはTR-108以外に、実用化レベルにあるマルチプルピントルインジェクター型ロケットエンジンは見受けられない)

特に、TR-108では、推進剤が液体-液体ではなく、液体-気体であるが故に、単一のピントルインジェクターでは、目標性能が達成できないとみなされたため、マルチプルピントルインジェクターが採用されたと考えられる。複数のピントルインジェクターを均一配置することで、燃料ジェットの貫通距離を稼ぐことができ、燃料によるフィルム冷却も可能になる。

TR-108においても、ピントルインジェクターは、燃料噴射特性を変化させるために容易に交換可能な仕様であった。実際、短期間の間に、13種類の異なるピントルインジェクター構成が試験された。ピントルの先端を見ると、2点の穴が開いており、この部分に治具を挿入し、ピントルチップ部を締め付けると考えられる。金属色の違いから、伝熱特性の良い合金で製造されることがうかがえる。

TR-108は、ノースロップ・グラマンが開発した最初のマルチプルピントルインジェクター型のロケットエンジンだが、TRWでこの様なピントルインジェクターが以前に開発されていたかは、資料が無く不明である。しかしながら、TR-108は、新形式のインジェクターを新規開発で使うことはハードルが高く、またコストを下げるために、「TRW時代から実績のある堅牢な技術と材料、製造方法を最大限用いた」とあることから、TRW時代から、マルチプルピントルインジェクターの技術は開発されていたと考えるのが妥当であろう。

TR-108のプログラムを支援するために、この液体-気体混合のピントルインジェクターの燃焼性能を予測するモデルが作られた。TR-108は、過酸化水素を使用しているため、触媒で気化させたガス中に液体の炭化水素燃料をジェット噴射させる形式である。つまり、TR-108のインジェクターは、液体-気体混合型である。

この燃焼性能を予測するモデルには、ガスのクロスフローにおける液体ジェットの貫通距離の相関関係が重要である。ピントルインジェクターで放射状に噴射された燃料ジェットが、燃焼室壁面に到達する前に、酸化剤のクロスフローにどの程度の噴霧・貫通できるかが重要になっている。この様の問題は複雑な性質を持っており、現在でも活発な研究がなされている。

ほとんどの実験では、ガスの模擬として空気のクロスフローを用い、ジェットの模擬として水を用いた水流しによる相互作用の結果から解析を行っている。そのため、ロケットエンジンの燃焼や異なる流体特性(粘性、表面張力)などの要素の影響を無視して研究がなされている。この事前模擬の不確実性のため、TR-108の開発においては、マルチプルピントルインジェクターについて、かなりの数の燃焼試験が必要だった。しかし、先に述べた様に、ピントルインジェクター特有の設計の柔軟さと単純さのおかげで、13種類の異なるピントル構成が比較的短い期間で試験された。試験から相関関係モデル構築がなされた。

最終的には、TR-108は、93~94%のC*燃焼効率が安定的に実証された。(インジェクターの微鯛整を行えば、さらに1~2%の性能向上が期待される)



次回は、TR-108を踏まえた上で、SpaceXのMerlinロケットエンジンのピントルインジェクターについて考察する。(続く)

SpaceX Merlin1 ロケットエンジンとマルチプルピントルインジェクター, SpaceX Merlin1 rocket engine and multiple pintle injectors




      



References


[1] Design and Development Testing of the TR108 - a 30Klbf-Thrust-Class Hydrogen Peroxide / Hydrocarbon Pump-Fed Engine,
      https://arc.aiaa.org/doi/abs/10.2514/6.2005-3566
[2] MDA BOOSTER COST ANALYSIS, Joint ISPA/SCEA Annual Conference June 24 – 27 2008
      http://www.iceaaonline.com/ready/wp-content/uploads/2017/09/AN10.pdf
[3] Hera / PLV, Directory of U.S. Military Rockets and Missiles
     http://www.designation-systems.net/dusrm/app4/plv.html
[4] Theater Missile Defense Hera Target Systems EA, January
[5] ACQUISITION OF THREAT-REPRESENTATIVE BALLISTIC MISSILE TARGETS,
      Jerry E. Esquibel, December 2002
     https://www.hsdl.org/?view&did=450767









The TR-108 rocket engine, the first large rocket engine developed after TRW was acquired by Northrop Grumman, is equipped with a very unique "Multiple Pintle Injector". The TR-108 rocket engine, which was the first large rocket engine developed after the acquisition of Northrop Grumman, features a very unique "multiple pintle injector" technology, which allows multiple pintle injectors to be installed when the propellant supply from a single pintle injector is too large or when it is difficult to achieve sufficient engine capacity with a single pintle injector.



【Related Articles】


      




1. Development Background: MDA's Liquid Rocket Booster Development Program


The U.S. Missile Defense Agency (MDA) is also developing a targeted ballistic missile to simulate a ballistic missile for missile defense (MD) evaluation. The Northrop Grumman TR-108 rocket engine has been developed as a liquid rocket booster for targeted ballistic missiles.

Most of the target ballistic missiles have solid-fuel rocket motors, but the reason for changing to a liquid rocket booster was to simulate the ballistic missiles of the East. Since most of the traditional ballistic missiles in the East use liquid fuel propellant, they wanted a liquid rocket booster stage to simulate a liquid booster ballistic missile for future testing and evaluation. Thus, the TR-108 was developed as an upper stage engine for military use. Northrop Grumman was awarded a three-year, $30 million contract.

There has been no information since then on which target ballistic missile the TR-108 was installed on. However, among the target ballistic missiles operated by the MDA is the Hera target, which was first developed as a target ballistic missile in 1992 and was first launched in 1995. Hera is the second and third stages of the retired Minuteman II ICBM. Hera is also used as a sounding rocket by the U.S. Air Force.







 


Hera 標的用弾道ミサイル



Length: 11.9 m (39 ft)
Diameter: 1.32 m (4 ft 4 in) (1st stage)
Weight: 11,300 kg (25,000 lb)

Second stage: Hercules M57A1 solid rocket motor 156 kN (35,000 lbf)
Third stage: Aerojet General SR19-AJ-1 solid rocket motor 268 kN (60,300 lbf)


The Hercules M57A1 rocket motor is used for the second stage on the Hera, with a thrust of 15.6 kN. This is almost the same as the thrust of the TR-108. Therefore, it is likely that the TR-108 development program was implemented to replace the second stage of the Hera with a liquid rocket booster.





2. Northrop Grumman's First Pintle Injector Rocket Engine


The TR-108 was the first large pintle injector rocket engine developed after TRW's rocket engine development division was acquired and absorbed by Northrop Grumman.

Tom Mueller, who moved from TRW to SpaceX in 2002, had previously been involved in the development of the TR-106 and TR-107 rocket engines at TRW as a division manager and lead engineer. As you can see from the numbering, the TR-108 rocket engine was developed after Tom Mueller left TRW (now Northrop Grumman).

One of the differences between the TRW era and the TR-108 was the use of hydrogen peroxide as a green propellant, which had been used mainly for thrusters, to increase the size of the engine. In particular, the main catalytic bed for gasifying hydrogen peroxide was the largest one manufactured by General Kinetics, which was involved in the development as a subcontractor, and there were problems in terms of load on the bed and operating pressure.

On the other hand, Northrop Grumman, which acquired TRW, was the main developer of laser weapons for the U.S. military, and had experience with the airborne laser: YAL-1A, and the tactical high energy laser: MTHEL. In the development of the YAL-1A, the laser system was a chemical oxygen iodine laser (COIL), and the company had extensive experience in handling hydrogen peroxide as an oxidizing agent for the laser source, and this knowledge was utilized in the development of the TR-108.





3. Northrop Grumman TR-108 rocket engine







Thrust: 15.6 t (34,500 lbf)
Vacuum specific impulse: 271 s
Combustion Pressure: 6.2 MPa (900 psia)
Propellant: 91% hydrogen peroxide / toluene
Mixture ratio: 5.84
C* combustion efficiency: 93-94% (up to about 96%)
Nozzle ratio: 15.4
Maximum diameter: 2.6 ft
Length: 4.9 ft


Since it was developed as the upper stage of a targeted ballistic missile, it was designed in a shortened configuration to fit within the space of an existing aircraft. The layout of the piping and turbopumps was also designed to fit into the narrow space.

The TR-108 is a very simple system, with only a unit propellant to turn the turbine. Hydrogen peroxide is tapped from the oxidizer pump outlet and fed into the gas generator. Only one high-pressure valve in the path is needed to control it.

The requirement from MDA during the development of the TR-108 was to keep the recurring cost down. Cast turbopump housings, ablative combustion chambers, flight-qualified COTS hardware in other systems, and burst discs instead of high-pressure valves were used to minimize cost, schedule, and risk by using the maximum amount of robust technology, materials, and manufacturing methods proven since the TRW days.


Key development elements are following,

  • Main catalyst bed
  • Multiple pintle injectors for fuel
  • Ablative combustion chamber
  • Monopropellant turbo pump


The TR-108 was successfully tested at Northrop Grumman's Capistrano Proving Ground in San Clemente, California, where engine testing was conducted in a fully integrated configuration.






4. Multiple pintle injector



TR-108's Multiple Pintle Injector


The TR-108 rocket engine is equipped with a very unique "Multiple Pintle Injector". As shown in the photo above, a total of seven pintle injectors are arranged on the propellant injection side, unlike the usual single pintle injectors.

The seven pintle injectors are arranged in a hexagonal shape with one pintle injector at the center. This provides a more uniform mixing ratio and 102 fuel film cooling holes to provide film cooling. The mesh visible at the back is the main catalyst bed, which gasifies 91% of the hydrogen peroxide.

If the size of the propellant is too large to be supplied by a single pintle injector, or if it is deemed difficult to achieve sufficient capacity with a single pintle injector, multiple pintle injectors with multiple pintle injectors may be employed. (In the published literature, TR-108 is used. (Other than the TR-108, there is no other multiple pintle injector rocket engine at the practical use level in the published literature.

In particular, the TR-108 is considered to have adopted multiple pintle injectors because the propellant is not liquid-liquid, but liquid-gas, and therefore a single pintle injector was not considered to achieve the target performance. The uniform arrangement of multiple pintle injectors allows the fuel jets to increase their penetration distance and also allows for film cooling by the fuel.

In the TR-108, the pintle injectors were also designed to be easily replaced in order to change the fuel injection characteristics. In fact, in a short period of time, 13 different pintle injector configurations were tested. Looking at the tip of the pintle, there are two holes, and it is believed that a jig is inserted into this area to tighten the pintle tip section. The difference in the metal color suggests that it is manufactured with an alloy with good heat transfer properties.

The TR-108 was the first multiple pintle injector rocket engine developed by Northrop Grumman, but it is not known whether such a pintle injector had been developed at TRW before. However, it was difficult to develop a new type of injector for the TR-108, and in order to reduce the cost, "the robust technology, materials and manufacturing methods proven in the TRW era were used to the maximum extent. It is reasonable to assume that the multiple pintle injector technology had been developed since the TRW era.

To support the TR-108 program, a model was created to predict the combustion performance of this liquid-gas pintle injector, which uses hydrogen peroxide to jet liquid hydrocarbon fuel into a catalytically vaporized gas. In other words, the injector of the TR-108 is a liquid-gas mixture.

The correlation of the penetration distance of the liquid jet in the gas cross flow is important for the model to predict the combustion performance. It is important to know how much of the fuel jet injected radially by the pintle injector can spray and penetrate the oxidizer cross flow before reaching the combustion chamber wall. Such problems are complex in nature and are still the subject of active research.

Most experiments use air cross-flows to simulate gases, and water cross-flows to simulate jets, and analyze the results of the interaction. Therefore, the studies ignore the effects of factors such as rocket engine combustion and different fluid properties (viscosity, surface tension). Due to the uncertainty of this pre-simulation, a significant number of combustion tests were required for the multiple pintle injector in the development of the TR-108. However, as mentioned earlier, due to the inherent flexibility and simplicity of the pintle injector design, 13 different pintle configurations were tested in a relatively short period of time. A correlation model was built from the tests.

In the end, the TR-108 demonstrated a stable C* combustion efficiency of 93-94%. (A further 1-2% performance improvement is expected with fine tuning of the injectors.)



In the next article, we will discuss the pintle injector of SpaceX's Merlin rocket engine in light of the TR-108. (To be continued)

SpaceX Merlin1 ロケットエンジンとマルチプルピントルインジェクター, SpaceX Merlin1 rocket engine and multiple pintle injectors




      



References


[1] Design and Development Testing of the TR108 - a 30Klbf-Thrust-Class Hydrogen Peroxide / Hydrocarbon Pump-Fed Engine,
      https://arc.aiaa.org/doi/abs/10.2514/6.2005-3566
[2] MDA BOOSTER COST ANALYSIS, Joint ISPA/SCEA Annual Conference June 24 – 27 2008
      http://www.iceaaonline.com/ready/wp-content/uploads/2017/09/AN10.pdf
[3] Hera / PLV, Directory of U.S. Military Rockets and Missiles
     http://www.designation-systems.net/dusrm/app4/plv.html
[4] Theater Missile Defense Hera Target Systems EA, January
[5] ACQUISITION OF THREAT-REPRESENTATIVE BALLISTIC MISSILE TARGETS,
      Jerry E. Esquibel, December 2002
     https://www.hsdl.org/?view&did=450767