【ライヴレポート】3組が表現したそれぞれのポップ──peanut buttersレコ発ライヴ〈Peanut Night〉
UK.PROJECTが新設したレーベル〈highlight (ハイライト)〉より第1弾アーティストとして昨年デビューしたpeanut butters。9月22日にバンド名を冠したフル・アルバムをリリースし、新代田FEVERにてレコ発ライヴ〈Peanut Night〉を9月20日に開催。そしてゲストにグデイとシャンモニカが登場した。今回はその3組のライヴレポートをお届けします。
初アルバム『peanut butters』配信中
LIVE REPORT : peanut buttersレコ発ライヴ〈Peanut Night〉
文 : 梶野有希
カメラマン : 前野日奈
peanut buttersの初企画〈Peanut Night〉は、まさに“ポップ”の集大成であった。ゲストは、超自由2人組音楽ユニットのグデイと和風インディーポップバンドのシャンモニカ。どちらもpeanut buttersのコンポーザー、ニシハラが敬愛する2組だ。全く系統の違う3組が新代田FEVERに集結した今回のレコ発ライヴ。チケットは即日完売しており、開始前から期待の眼差しが3組には向けられていた。
グデイ
トップを飾ったのは、昨年7月に始動したユニット、グデイ。パッチワークが施されたキュートなワンピースに身を包み、ミ米ミと室井ゆうのふたりが、重低音とともに笑顔で登場。
最初の曲は、「さいたまスーパーアリーナでライヴをしたい!」という歌詞が耳に残る“GOOD DAY!!!!!!““。結成からわずか1年ちょっとで渋谷QUATTROワンマンをすでに成功させている彼女たち。近い未来、本当にさいたまスーパーアリーナに立つかもしれない、という期待を早々に抱いてしまうようなパワフルなパフォーマンスだった。そして彼女たちの熱意が届いたかのように、すでに観客は思いのままに身体を揺らす。フロア全体が一気にグデイに惹き込まれていた。
グデイのパフォーマンスで最も印象的だったのが、彼女たちの目線だ。パワフルに踊りながらも、終始観客の表情を見逃さないよう、常にフロアのあちこちに目を向けている。これは、オーディエンスと呼応しながらステージを作り上げている証だろう。様々なことが制限されてしまうコロナ禍になってから結成したグデイだが、すでにこの時代のライヴの盛り上げ方を知っているようだった。
そしてこの日、最も印象に残ったのがラストを飾った“Songs from the thistime”だ。ひとりが歌詞を象徴するような振り付けをしながら、ひとりはマイク1本でバラードを静かに歌い上げるというバランスの取れたステージ構成が素晴らしく、乱れた髪や息遣いなど、彼女たちの全てが美しかった。「ありがとう、グデイでした。」と一言残し、ふたりはステージを後にする。歌って踊る30分間のステージをほぼノンストップでやり遂げたグデイ。トップバッターから一瞬も目を離せないようなパフォーマンスを観たと、次の2組への期待も募る。
シャンモニカ
続いて、和風インディー・ポップ・バンドを謳うシャンモニカが登場。作詞・作曲を担当しているサヤカは、なんと2歳から日本民謡の経験者だという。楽曲にもそういったルーツを反映しながら、ローファイやロックを融合させた楽曲を精力的にリリースしている。
結成は2018年。まだキャリアの若い彼女たちのステージはどのようなものになるのか。“和風“なロックバンドとは一体。そんな期待に近い疑問を抱きながら、シャンモニカの姿を心待ちにしていた。SEとともにメンバー4人が登場し、丁寧に音が重なりあう“スカイスカイ“のイントロのあと、ボーカル、サヤカの軽やかで透き通るような歌声がフロアに響き渡る。その瞬間、“和”と“ポップス“の融合を感じた。
続けて、ボーカルのカウントからはじまる“ローテーション“を披露。ハリのあるドラムや滑らかに動くベース、曲にスパイスを加えるリード・ギターといったバランスのよいバック・サウンドが、ボーカル サヤカの純度の高い歌声を支えている。シャンモニカのステージは、時がゆったりと流れるような、柔らかい風がずっと吹いている感覚になる。安らぎのような、そんな心地よさがあるのだ。
千葉の出身という彼女たちは、MCで「今回の企画〈Peanut Night〉ですけど、ピーナッツって千葉の名産ですよね」と、今回のライヴへの親しみを静かに語った。そのまま、住んでいる千葉の街並みを描いたという“愛した街“を歌い終わると、ステージは夕陽色に染まり、“シャンモニカのテーマ“へ。シンプルな構成だからこそ、各パートがより聴きやすく、個々の演奏能力の高さを感じた。
トップバッターのグデイに続き、最後まで飽きることのないパフォーマンスを見せてくれたシャンモニカ。彼女たちのライヴは、飽きるどころか、時間が経つにつれ、魅力が増していく。それは、高い演奏能力が故にだろう。今後の活躍にますますの期待感を抱かせてくれるようなステージであった。
peanut butters
さぁ、いよいよpeanut buttersの出番だ。“Peanut butter 2021”の軽快なドラムロールとともに、サポートメンバー含む5人が入場した。
人気曲“びーちQ”や「メロディ僕らは 歌ってたいよ君と」という歌詞から音楽への想いが伝わる“メロンD”を披露したあと、「ありがとう!こんにちは、peanut buttersです!」と紺野メイがフロアに手を振りながら、元気に挨拶をした。
この日のライヴは、レコ発というだけでなく、二度とない貴重な日であった。peanut buttersは当初ニシハラのソロ・プロジェクトだったが、これまでサポートメンバーであったボーカル、紺野メイの正式加入が発表されたのだ。もともと所属しているバンド、あみのずと二足の草鞋でやっていくという決断は簡単なものではなかったと思うが、彼女の歌声を聴いていると、「これから私はpeanut buttersの紺野メイとしても音楽活動をしていく」という決意を感じた。
ステージの中盤では、ニシハラが「コラボゲストがいます!」と発表。 peanut buttersのグッズTシャツにズボンというカジュアルなスタイルでグデイが再登場し、peanut buttersの楽器隊による演奏とともに、ニシハラがグデイへ書き下ろしたという「pyoin」を披露した。今回の企画だからこそ、実現した貴重な約3分間だ。
紺野がステージに戻ってくると、軽快なリズムが心地よい“グットモーニングおにぎり“やSoundCloudで2019年に公開されている“スーパーハイパー忍者手裏剣“、peanut buttersでは珍しいバラード調の曲“夕焼けハローワーク“、サーフロック調のグルーヴが心地よい“波乗りnammy”、その盛り上がりのまま“ツナマヨネーズ”を披露。そしてアンコールでは“夕方5時“を歌いあげ、ライヴは終了。
peanut buttersの軸である“ポップ“を存分に感じた50分間のステージであった。初々しさもありながら、peanut buttersは全力で初企画を成功へ導いたのだ。それを証明するかのように、物販にはこの日先行発売されていた初アルバム『peanut butters』のCDを求め、長蛇の列ができていた。
シャンモニカは、今回の企画〈Peanut Night〉のことをMCで“弾けるような企画“だと語っていたが、本当その通りである。パワフルで元気いっぱいなグデイ、しっとりとした透明感のあるシャンモニカ、そして日常のネガティブを明るいサウンドに乗せるpeanut butters。本企画は、まさに3組のアーティストがそれぞれの“ポップ“を表現したライヴであった。そしてその様々な“ポップ“に呼応するかのように、観客はマスク越しからも伝わるくらいの眩しい笑顔を終始ステージへ向けていた。この観客の表情こそ、グデイ、シャンモニカ、そしてpeanut buttersがライヴを通して伝えたかったメッセージなのだろう。
レコ発ライヴ〈Peanut Night〉
2021年9月20日(月) 新代田Fever
■セットリスト
【グデイ】
M1.GOOD DAY!!!!!!!
M2.ロマンチックに自滅して
M3.せかいのはじまり
M4.SayHelloグデイ
M5.ばななしぇいくばけーしょん
M6.ミッドナイトレディオ
M7.のも
M8.ブラスター
M9.ググる or DIE
M10.Songs from the thistime
【シャンモニカ】
M1.スカイスカイ
M2.ローテーション
M3.3拍子の曲
M4.愛した街
M5.シャンモニカのテーマ
M6.ナイトマーケット
M7.フロート
M8.スターチス
【peanut butters】
M1.Peanut butter 2021
M2.びーちQ
M3.メロンD
M4.パワーポップソーダ
M5.pyoin(グデイ提供曲)
M6.グッドモーニングおにぎり
M7.スーパーハイパー忍者手裏剣
M8.夕焼けハローワーク
M9.波乗りnammy
M10.ツナマヨネーズ
en.夕方5時
最新アルバム『peanut butter』についてのインタヴュー
LIVE INFORMATION
〈PEANUT FIGHT!!!〉
12月23日(木)下北沢 BASEMENTBAR
18:30/0PEN 19:00/START(予定)
出演 : penut butters / ステレオガール
■チケット
全自由席 ¥2,500 +ドリンク代
チケット: https://eplus.jp/sf/detail/3493630001-P0030001
PROFILE : peanut butters
2017年12月 楽曲制作を開始。 コンポーザー” ニシハラ” とボーカル紺野メイによるプロジェクト。誰もがきゅんとしてしまうキャッチーなメロディーと、ローファイポップ・ロックサウンドが特徴。
2019年 7月 宅録で仕上げた初音源「Peanut Butter」をリリース。 2020年 6月 Vo.紺野メイ(あみのず)を迎えた「ツナマヨネーズ/夕方5時」をリリース。「ツナマヨネーズ」はリリース直後から海外メディアのプレイリストに 取り上げられたり、SNSでシェアされるなど、多くの反響があり国内外問わず中毒者が続出。
2020年11月 UK.PROJECTによる新レーベル “highlight(ハイライト)“の第1弾アーティストとして、 デビューシングル「びーちQ」をリリース。 2021年6月 peanut butters ニシハラが敬愛するPOLYSICS × the telephonesの2マンライブに オープニングアクトとして出演。現体制初ライブとなる。 2021年9月 ファーストアルバム「peanut butters」をリリース。 また自身初のレコ発企画「Peanut Night」を新代田FEVERで開催。チケット発売開始と同時に即日SOLD OUTとなる。
■公式Twitter:https://twitter.com/peanut__butters
■公式オンライン・グッズ・ストア:https://peanutbutters.stores.jp/
PROFILE : グデイ
2020年7月の終わりに始動した、ミ米ミ・室井ゆうによる超自由音楽ユニット。自由に好きなことを好きなように。あなたの日常を少しだけGoodDayに。「あ、なんか良い。」をあげる2人組。
■公式Twitter:https://twitter.com/Gday_official
■公式HP:https://gdayofficial.wixsite.com/gday/
PROFILE : シャンモニカ
2018年結成、サヤカ(guitar&vocal)、メイ(guitar)、ノブ(bass)、テツマル(drums)による男女混成4人組バンド“シャンモニカ”。吉祥寺、下北沢周辺でライヴ活動を開始するとともに結成同年に1st EP『ひかえめな告白』を発表、翌2019年には「りんご音楽祭」のオーディション枠“RINGO AGO-GO2019”にも選出されるなど注目を集めるようになる。
2020年には2nd EP『変形』を発表、2021年4月に田中ヤコブ(家主)、豊田亮平(ユメリアソラ)、bearstapeといった多彩なゲストが参加した初のフルアルバム『トゲトゲぽっぷ』をP-VINEよりリリース。
■公式Twitter:https://twitter.com/syanmonika
■公式HP:https://syanmonika.jimdofree.com/
■公式オンライン・グッズ・ストア:https://syanmonika.thebase.in/