スマートフォンやタブレットから始まったディスプレイの高画素密度化は、PCディスプレイの世界にも波及。2014年にはPC向けの4Kディスプレイが台頭し、画面サイズ、解像度とともに、「画素密度」の把握が製品選びで重要になってきた。今回は最新の技術動向も含め、ディスプレイの高画素密度化をテーマに解説する。
PC向け液晶ディスプレイの市場動向を見ると、2000年代後半にスクエア画面からワイド画面への移行が一気に進み、昨今はより大画面へ、より高解像度へ向かっている。
2014年現在、液晶ディスプレイの売れ筋は1920×1080ピクセル(フルHD)表示に対応した23型モデルだが、その4倍もの解像度を誇る「4Kディスプレイ」が急速に台頭しつつあり、新たなトレンドとして画面サイズを大型化せずに高解像度化する(画素密度を高める)という流れも出てきた。
本稿では、こうした解像度と画面サイズの関係、画素密度について、最新の技術動向も含めて解説する。
今後数年をかけて、「フルHD」に置き換わる主流の解像度になると予想されているのが「4K」だ。4Kとは「4K=4000」という言葉が示す通り、横方向の画素数が4000前後の解像度を指す。現在4Kと言われる解像度には、「DCI 4K」と「UHD 4K」の2つの規格がある。
DCI 4Kは映写機で使われる2048×1080ピクセルの縦横2倍となる解像度(4096×2160ピクセル/約17:9)であり、映画業界の4K解像度だ。これに対して「UHD 4K」(UHDTV 4Kとも言われる)は、国際電気通信連合(ITU)が定めるテレビ業界の4K解像度であり、1920×1080ピクセルのフルHDに比べて、縦横2倍の解像度(3840×2160ピクセル/16:9)となる。
現在のPC向け4Kディスプレイは、4Kテレビと同じUHD 4K解像度が主流だ。ただし、EIZOが2015年3月に発売する映像制作用のカラーマネジメント対応ディスプレイ「ColorEdge CG318-4K」など、DCI 4Kを採用する製品も少数ながら見られる。
一方、現状ではまだ4K表示環境が過渡期のため、いくつか注意すべき事柄も存在する。その最たるものは、リフレッシュレートの問題だ。
現在市場にある4Kディスプレイで4Kの60Hz表示が行えるインタフェースは、21.6Gbpsの帯域幅を持つ「DisplayPort 1.2」に限られる。4Kの60Hz伝送には、16Gbps(3840×2160ピクセル、32ビットカラー、60Hz)もの帯域が求められるためだ。これはDisplayPort 1.1(10.8Gbps)をはじめ、HDMI 1.4a(10.2Gbps)、DVIデュアルリンク(7.4Gbps)の帯域も大きく上回る。そのため、現状ではDVI-DやHDMI接続時は4K表示が30Hzまでとなる点に注意したい。
ただしHDMIに関しては、新規格のHDMI 2.0(HDMI 2.0 Level A)で帯域が18Gbpsに拡大し、すでにHDMI 2.0入力による4Kの60Hz表示が可能なディスプレイ新製品も発表されている。今後、PC(GPU)などの映像出力機器側でHDMI 2.0のサポートが進むことで、徐々に状況が好転するだろう。
現状の4Kディスプレイ表示サポート | |||
---|---|---|---|
接続インタフェース | 帯域幅 | 4Kの30Hz表示 | 4Kの60Hz表示 |
DisplayPort 1.2 | 21.6Gbps | ○ | ○ |
DisplayPort 1.1/1.1a | 10.8Gbps | ○ | − |
HDMI 1.4/1.4a | 10.2Gbps | ○ | − |
DVIデュアルリンク | 7.4Gbps | ○ | − |
※HDMI 1.4の伝送帯域で4Kの60Hz信号を伝送できるHDMI 2.0 Level Bという規格も用意されているが、色深度がYUV 4:2:0となっており、色がにじむため、ディスプレイ表示には向かない。HDMIで4Kディスプレイの60Hz表示を問題なく行うには、HDMI 2.0 Level Aの普及を待つ必要がある |
またDisplayPort 1.2で接続しても、4Kディスプレイ側の60Hz伝送方式が問題になる場合もある。あまり知られていないが、現行の4Kディスプレイは60Hz表示をサポートするため、MST(Multi Stream Transport)かSST(Single Stream Transport)、いずれかの伝送方式を採用している。
MST方式では4Kが1920×2160ピクセルの2画面としてOSに認識されるため、GPUのドライバで1画面にまとめて出力することが必要だ。これにより、利用するGPUとドライバのバージョンによっては、画面の左右で描画タイミングに問題が生じたり、マルチディスプレイ環境で使えないなどの問題が生じていた。
わざわざ2画面に分割して映像信号を伝送するのは、4Kの60Hzを1画面として伝送できるディスプレイ用スケーラー(映像処理チップ)の供給が、4K液晶パネルの供給より遅れていたからだ。そのため、初期に登場した4Kディスプレイは、MST方式を採用する以外の選択肢がなかったと言える。
これに対してSST方式(Single Stream Transport)は、4K解像度をそのまま1画面として伝送できるため、内部で画像合成などを行わずに4Kの60Hz表示が可能だ。MST方式のような2画面分割による問題は生じないが、一部にDisplayPort 1.2搭載でSST非対応のグラフィックスカードも存在するため、購入時にはカード側の対応状況も確認すべきだろう。ちなみに、EIZOの31.5型4Kディスプレイ「FlexScan EV3237」はSST方式を採用する。
こうした互換性の問題は、4Kディスプレイが普及し、GPUやドライバのサポートが改善されることで遠からず解決するだろう。もちろん、これらはあくまでも60Hzで4K表示を行う場合の制限であり、30Hzであれば現状のHDMI 1.4aやDVIデュアルリンクでも問題なく4K表示が可能だ。
なお、ディスプレイの高解像度化は4Kにとどまらない。すでに「5K」対応の27型ディスプレイ(5120×2880ピクセル/16:9)も製品化が始まっている。5Kという非常に高い解像度を何に使うかだが、例えば、映像編集ソフトウェアで4Kコンテンツを表示しつつ、ツールバーなどを無理なく配置できるといったメリットがある。
ただし、現行のDisplayPort 1.2でも5K出力は非対応のため、今のところ5Kディスプレイは2本のケーブル接続で映像信号を送る特殊な仕様となっている点に注意したい。まだ製品化はされていないが、2014年9月に発表された新規格「DisplayPort 1.3」では、5K(5120×2880ピクセル)の60Hz表示や、デイジーチェーン接続によるUHD 4Kの2台同時表示に対応している。今後、DisplayPort 1.3対応のPC(GPU)が登場すれば、5Kの60Hz信号を1本のケーブルで出力可能だ。
さらに、4K、5Kの次として「8K」の世界も迫ってきている。総務省の発表によれば、8Kの試験放送を2016年に開始し、本放送を2018年に始める予定だ。映像関係の展示会やイベントでは、8K(7680×4320ピクセル/16:9)対応のディスプレイ試作機も見られ、今後も急ピッチでディスプレイの高解像度化、高精細化が進んでいくだろう。
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提供:EIZO株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月17日
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