JR九州、債務返済に基金充当 上場へ国交省が報告書
国土交通省は27日、九州旅客鉄道(JR九州)の完全民営化に向けた報告書をまとめた。取り扱いが焦点となっていた3877億円の基金は、新幹線使用料の前払いや借入金の返済に充てて財務基盤を強化する。上場後の債務負担を軽くし、安定的に収益をあげられるようにする狙い。2月下旬にもJR会社法改正案を閣議決定し、通常国会での成立をめざす。
JR九州は2016年度にも東証1部に上場する予定で、全株式を持つ独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有株を一括売却する方針だ。JR会社の上場は1997年の東海に次ぐ4社目で約20年ぶり。
報告書によると、基金のうち2205億円を新幹線使用料の一括前払いに充てる。九州新幹線を運行する同社は線路や駅舎を持つ鉄道・運輸機構に102億円の使用料を毎年支払っている。このほか800億円を借入金の返済に使い、残りの872億円は路線網を維持するための資金に回す。
ローカル線を引き受ける代わりに基金を与えられたJR九州は、その運用益で鉄道事業の赤字を補ってきた。財務省は上場で経営の自立をめざすなら基金を国庫へ戻すよう主張し、基金の活用を求める国交省と平行線をたどっていた。
基金の活用で財務基盤を強化できれば企業価値が高まり、高値での株式売却も見込めるようになると折り合ったようだ。基金の消化でローカル線が廃止にならないよう国交省は路線の維持を求める指針をつくり、JR九州に順守を求める。