アジア投資銀、北京で設立協定署名式 7カ国が署名せず
【北京=大越匡洋】中国が主導する国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立協定の署名式が29日午前、北京の人民大会堂で開かれた。創設メンバーとして参加を表明した57カ国のうち、フィリピンなど7カ国が今回、署名せず、運営を開始する年末までに対応を決める。中国は議決権の26.06%を握り、重要な案件で事実上の拒否権を持つ。
昨秋、アジアの21カ国が設立に合意したAIIBはその後、英国など欧州勢が相次いで参加を表明し、創設メンバーは57カ国まで膨らんだ。米国と日本は参加を見送っている。今回、50カ国が設立協定に署名した。
フィリピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイの7カ国は29日の署名を見送った。AIIBの設立準備事務局は「年末の運営開始まで7カ国の署名を待つ」としたが、署名見送りの理由は説明しなかった。
中国の楼継偉財政相は署名式で「AIIB構想はアジアの経済成長の促進、世界経済の回復という客観的なニーズに適している」と強調した。AIIBの資本金は1千億ドル(約12兆3千億円)。全体の75%をアジアなど域内メンバー、残る25%を欧州を含む域外メンバーに割り振ったうえで、原則として国内総生産(GDP)の規模に応じて分配する。
中国の出資額は297億ドルと最大だ。資本金の一部は割り当てが決まっていないため、中国の出資比率は30.34%となり、8%台で2位のインド、6%台で3位となるロシアを大きく引き離す。
本部は北京に置く。組織運営の中心となる理事会は域内9人、域外3人の計12人で構成する。理事は運営コストを削減するため、北京に常駐しない。任期5年の総裁は初代ポストを中国が握り、金立群・元財政次官が就く見通し。総裁ら執行部の権限が大きく、その分、中国の影響力が増す。
組織運営を決める各国の議決権は出資比率に基づいて算出し、中国が26%を確保する。理事会の構成変更や増資など、設立協定で最重要と位置づける案件は議決権の75%以上の賛成を必要とする。25%超の議決権を持つ中国が反対すれば可決できず、中国が事実上の拒否権を持つ仕組みだ。
アジアのインフラ需要は2010~20年に8兆ドルに上ると試算されるが、既存の世界銀行やアジア開発銀行(ADB)は必要な投資資金を賄い切れていない。