携帯「2年縛り」解消見送り 料金引き下げ道半ば
SIMロック15年度解除 総務省最終報告書
総務省は8日、国際的に割高な携帯電話の料金を引き下げるための制度見直し案を決めた。端末をほかの携帯会社では使えないよう制限する「SIMロック」の解除を来年度から義務づけ、格安スマートフォン(スマホ)へ乗り換えしやすくするのが柱だ。契約を2年単位にして解約しにくくする「2年縛り」などの見直しは見送った。利用者が望む低価格で自由に選べる携帯サービスへの移行は途上だ。
通信サービスの向上を議論した総務省の有識者会議が同日、最終報告書をまとめて提示した。同省は同報告書に沿った電気通信事業法の改正案を来年の通常国会に出す。
総務省はNTTドコモなど携帯3社のスマホ料金が割高と指摘してきた。データ通信をあまり使わない利用者でも日本は通話料や基本料金などを合わせて月7000円強を支払っており、主要7カ国で米国に次いで2番目に高かった。
料金の引き下げに向け、報告書には新規参入を増やして競争を促す制度改正案を盛り込んだ。柱はSIMロック解除の義務づけだ。ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社は現在、利用者の端末にSIMロックをかけており、ほかの携帯会社に乗り換える際には高価な端末を買い替えなければならない。
総務省は2015年度から解除を義務づけて、携帯サービスを乗り換えしやすくする。端末を買い替えずに格安スマホ会社に移れるほか、海外で自分の端末を使って現地の割安通信を利用することもできるようになる。
SIMロックを解除しても大手3社が利用者を囲い込む手段は残る。各社の利用者との契約期間は2年が基本で、2年契約を結ばない場合は利用料を割高にしている。2年契約の途中で解約すると高額の違約金が発生することも多い。報告書では「2年縛り」の商慣習の見直しは盛り込まず、利用者の乗り換えが進まない可能性がある。
大手各社は「新規顧客を獲得する現金還元を続けている」(携帯販社)。原資には長期利用者からの収入が充てられており、料金高止まりの一因ともされる。総務省はとりわけデータ通信をあまり使わない利用者の料金が割高とみており、報告書では16年ごろ始める第4世代携帯から、低利用者向けに低額プランを設けるよう求めた。
通信業界に詳しいA・T・カーニーの吉川尚宏パートナーは「料金を引き下げるにはインパクトが小さい」と見直し案を厳しく評価する。有識者会議のメンバーである明治大学の新美育文教授も「今回は地ならし」と述べ、15年の法改正以降、もう一段の見直しを議論する可能性を示唆した。