お得なのは「100円のS」 コンビニコーヒー徹底検証
2013年、セブン-イレブンがいれたてコーヒーの「セブンカフェ」を本格展開し、一気に浸透したコンビニコーヒー。2014年の大手5社の販売計画は合計で13億杯と、前年の約2倍に拡大。中でも年6億杯の販売数を目指すセブンは、「2013年夏はアイスコーヒー用の氷の供給が間に合わず、後半かなりの需要を取りこぼした。氷の仕入れ先を2社にしたり、マシンの複数台設置を進めたりと、今夏は万全な体制で臨む」(セブン-イレブン・ジャパン常務の鎌田靖氏)。
消費増税後もセブンはホット、アイスともにレギュラーサイズのコーヒーを税込み100円に据え置いた。ファミリーマートやミニストップは、アイスコーヒーのSサイズ(税込み100円)を新たに投入して対抗している。
コンビニ各社が夏向けの新メニューを投入
いれたてコーヒー以外の魅力的なカフェメニューはローソンの独壇場だったが、2014年夏は他チェーンも参入。代表例が、ファミマの「カフェフラッペ」(税込み250円)だ。ミルクコーヒー味のかき氷にエスプレッソ抽出のコーヒーを注ぐ商品で、「先行発売した沖縄県では、通常のコーヒーに上乗せして1日平均20杯が売れた。全国展開で一気に杯数を伸ばす」(ファミリーマート商品本部の藤崎洋一氏)と意気込む。
その他、ミニストップがSサイズのアイスコーヒーにソフトクリームを載せた「コーヒーフロート」(税込み180円)、サークルKサンクスが「大和園 ジャスミン茶」(同154円)などを追加しており、基本のコーヒーに絞るセブンに対し、各社が工夫を凝らす。
実はコストパフォーマンスが高い100円の"Sサイズ"
とはいえ、夏場に最も売れるのは"王道"のアイスコーヒーだ。2014年、ローソンやミニストップは豆のブレンドや焙煎度合いを変えており、サークルKサンクスは上級ラインの「バリブレンド アイスコーヒー」(税込み185円)を追加。そこで大手5社の最新の味の傾向を、東京・駒沢のスペシャルティコーヒー店「LARE(ラルー)」店主で、高いテイスティング技術を持つ礒部潔氏とチェックした。
結果、缶コーヒーがコンビニの定価で税込み123円、大手カフェチェーンのアイスコーヒーが同220円することを考えると、いずれも納得の味ではある。その中で味の方向性が対極にあるのが、エスプレッソ抽出したローソン、ファミマのアイスコーヒーと、ミニストップの新ブレンドやサークルKサンクスの上級版バリブレンドだ。「前者は苦みが際立ったインパクトのある味わいで、男性的な印象。後者は苦みが控えめで後味もすっきりとしており、ブラックでも飲みやすい」(礒部氏)。
セブンはこの2つの中間に位置する印象で、苦みや飲み応えを出しながら、後味も多少クリアだ。サークルKサンクスの通常版は唯一、「ロブスタ種特有の麦を焦がしたような風味が多少出ている」(礒部氏)という。
ただ、各社のアイスコーヒーを異なる2店舗で購入し、計量したところ、サークルKサンクスの通常版は税込み120円という価格ながら他社の大きいサイズと同等の量で、割安感はあった。その他は同等のサイズのなかで全体の重さ100g当たりの価格に大きな差はない。また、セブン、ファミマ、ミニストップは大小2サイズを選べるのだが、計量すると、いずれも「全体の重さ」の100g当たりの価格は、意外にも小さいサイズのほうが若干割安だった。
ローソンのアイスラテはスタバ級?
一方、大手5社でいれたてのアイスカフェラテを買えるのは、ローソンとファミマだけだ。試飲した礒部氏によると、「いずれもアイスコーヒーをブラックで飲むと苦みが強めだったが、ミルクが加わるとほろ苦く、バランスが取れている」という。特にローソンは濃厚なミルク感があり、スターバックスなどの専門店と遜色ない味という評価。一方のファミマは、少し時間がたつとミルク感が弱まる印象だ。
これは、ファミマのマシンは熱いコーヒーに加え、温かいミルクを氷に注ぐためだろう。ローソンは、「溶けた氷でミルクが薄まらないよう、マシンを改良して冷たいミルクが出るようにした」と、MACHI cafe推進部の吉澤明男部長は話す。価格はローソンが税込み216円、ファミマが同180円。ただ、ローソンは共通ポイントの「Ponta」会員なら常に30円引きになるため、実質は同程度の価格といえる。
ローソン以外の各社でも、いれたてコーヒーと併売率の高いパンやスイーツとのセット購入を条件にした割引キャンペーンを比較的頻繁に実施しているので、うまく活用したい。
(日経トレンディ 勝俣哲生)
[日経トレンディ 2014年8月号記事を基に再構成]