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TOTOのトイレ製品、欧州で狙う「華麗な地位」

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 日本の輸出品といえば車と家電だけかと思ったら大間違い。生活用品をはじめ、実に多くの日本製品が海外で使われている。欧州のトイレ市場に参入を図るTOTOの試みを見てみよう――。本連載「日本ブランドが世界を巡る」では、日本で売れている製品の工業デザインやパッケージが、海外進出の際にどう変化しているかに迫る。ものづくり企業のマーケティング担当者や製品開発者をはじめ、多くのビジネスパーソンに役立つはずだ。

水周り製品の総合メーカーTOTOは2008年4月、ドイツのデュッセルドルフに「TOTO Europe GmbH」を設立し、ウォシュレットを中心に欧州での販売を強化し始めた。2010年5月には英国ロンドンに欧州初の直営ショールームをオープンし、現在も販路を拡大中だ。

ロンドンのTOTOのショールームがあるのは、東ロンドン・クラーケンウェルエリアのセントジョンズストリート。デザイン事務所や建築事務所などクリエーティブ産業の事務所が多く、高級家具ブランドのショールームも急速に増えている。毎年秋に行われるロンドンのデザインフェスティバルの中心地でもある。

高級感を演出する理由

東京で言えば青山や六本木のメーンストリートにTOTOのショールームがあるようなものだ。実際、製品をカタログ然と並べる日本のショールームとは異なり、高級ホテルやコンドミニアムなどを思わせるぜいたくな空間を演出し、水周りメーカーというよりは高級インテリアメーカーのショールームのようだ。

高級感の理由は、TOTOが海外ではターゲットをハイエンドに絞っていることにある。海外ではまだ普及していないウォシュレットや汚れの付きにくいセフィオンテクト加工など、高品質と技術を前面に出していくことでユニークな立ち位置を確立しようと試みている。

家具ブランドのようなショールームのインテリアは、建築家やインテリアデザイナーに単品だけ見せていてはイメージしてもらいにくいため。インテリアと組み合わせることでイメージしやすくする。

加えて、「日本と欧州のトイレのとらえ方の違いを反映している」と渡井朗・TOTOヨーロッパロンドン支部ジェネラルマネージャーは言う。

欧州ではトイレを単体でとらえない

「欧州ではトイレを単体で考えるのではなくバスルーム空間で考える。つまり衛生陶器というジャンルではなく、インテリアや家具と同じ感覚。「ネオレスト」という名称も日本では便器と便座がセットとなった商品名だが、日本以外では、トイレ、便器、洗面器ほかのバスルーム用什器を合わせた空間演出のブランド名として使っている」(渡井氏)。

ウォシュレット便器単体ではなく、バスルームとして周囲を固めていく。TOTOはこの手法をさらに広げ、2011年にドイツ、フランス、イギリス、ロシアで「MH」という新しいシリーズを発表した。「欧州の中でもバスルーム空間に対する考え方が一様ではなく、サイズバリエーション、家具の品ぞろえもさまざま。頻繁に器具を換える消費者も多い」という背景から、洗面台、キャビネットなどの商品サイズをモジュラーで組み合わせやすくした。

内閣府の消費者動向調査によれば、温水洗浄便座の日本国内での世帯普及率は73.5%(2012年3月時点)に達する。しかし欧州ではまだ出荷数が非常に少なく、人口普及率1%未満の国が大半を占める。ウォシュレットなんて見たことも聞いたこともない、という消費者も多い市場の中で、TOTOは奮闘中だ。

(ライター 渡部千春)

[日経デザイン2012年2月号の記事を基に再構成]

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