脳に磁場あて喫煙欲求抑制 理研など
薬物依存症治療に道
理化学研究所の林拓也副チームリーダーとカナダのマギル大学の研究チームは、脳の一部に磁場をあてて、たばこを吸いたいと思う欲求を抑えることに成功した。衝動をもたらす脳の部位を絞り込んだ。薬物やアルコールなどの依存症の新たな治療法に道を開く成果だ。米科学アカデミー紀要(電子版)に29日掲載される。
喫煙の欲求には認知などを担う大脳前頭前野の腹内側部や背外側面が関係している。詳細な役割は不明だった。
研究チームは10人の喫煙者に喫煙シーンのビデオなどを見せて脳の活動を測った。視聴後にたばこが吸えるとわかっていると、背外側面が盛んに働いた。
この背外側面に磁場を約30分あてると、吸いたい気持ちを表すとみられる活動が収まった。詳細に調べると、背外側面は周囲の状況に応じて欲求を促す働きをしており、その影響で腹内側部が喫煙したい衝動をつくっていた。実験では脳機能を調べる「経頭蓋磁気刺激法」の磁場を利用した。
ほかの依存症でも同様の仕組みが関わっているとみられる。今後は詳細に仕組みを解明し、効果的な治療法の可能性を探る。