日本人の座標軸(45)

どうしても許せない… 図書館に並ぶ漫画「はだしのゲン」

【日本人の座標軸(45)】どうしても許せない… 図書館に並ぶ漫画「はだしのゲン」
【日本人の座標軸(45)】どうしても許せない… 図書館に並ぶ漫画「はだしのゲン」
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私にはどうしても許せないことがある。平成25年10月、松江市立図書館で漫画『はだしのゲン』(全10巻)を図書館職員が、書架から取り除いたことに対して反対運動が起きた。

月刊誌『正論11月号』(平成25年)によると、そもそもの原因は松江市教委が「『はだしのゲン』を市立図書館の閲覧棚に並べることをやめる」と決定したことにあった。

実際にこの漫画本がどんな内容かを見ていただきたいところだが、紙面が汚れてしまいそうな気がして載せない。この本を見たら純真な小学生はどう思うであろうか。想像しただけでゾッとする。

それほど残虐な内容で、とても見るに耐えない。誰だって図書館に置くのは、いかがなものかと思って当然である。小学生をお持ちの親御さんなら、こんな本を読ませたくないと思われるに違いない。

『正論11月号』は、「はだしのゲン許すまじ!」を総力特集していた。件の部分を借用する。

《創刊40年特別号の記念すべき最初の論文を、かくも醜悪なマンガの描写で汚さなければならないのは、これが第2の教科書運動になると確信してのことである。(中略)この本が今も全国の公立小・中学校の図書室に置かれ、日教組の教師らによって子供たちに読むことを勧められている-(正論編集部)》

『はだしのゲン』は、反戦思想の父を持つゆえに地域や学校から阻害され、いじめられていたゲンが、原爆によって父と姉弟の命を奪われながらも、生き残った母と幼い妹を助け、原爆孤児の仲間たちとも助け合って、被爆地の広島で懸命に生き抜くというストーリーである。同誌は続けて-

《このストーリー自体に何ら問題はない。子供たちに悲惨な実態を伝え、平和の大切さを教えるのは大切なことである。だがその内容は、「児童の発達段階を考慮」し、「社会的事象を公正に判断できる」史実に基づくことが大前提だ。ところが、ゲンが伝える「悲惨な戦争」は、中国共産党のプロパガンダそのままである。(中略)

ゲン「やかましい。天皇が無謀な太平洋戦争をやれとゴーサインをだしたおかげで日本列島は焼け野原にされ、この広島も長崎も原爆までくらって、わしの家族をふくめ日本人300万人以上が、もがき苦しんで殺されたじゃあないか。わしゃ許さんわいっ。君が代なんかだれが歌うもんか、クソくらえじゃ。君が代なんか、国歌じゃないわいっ!」(以下略)》

この漫画本のほんの一部を載せた『正論11月号』をある婦人に見せてあげたところ、顔をそむけながら、「ヒャー。話には聞いていましたが、小学校の図書室に置く本ではないですね。私の子には絶対読ませたくないです」と仰った。

それほど図書室に置くなどあってはならない本である。とても冷静な内容とはいえない。にもかかわず、市教委は「棚に置け」と主張する圧力団体に屈して、これまで通りこの漫画本を置くことにしたのであった。

皆さん。あなたのお子さんが通っておられる小学校の図書室や町の公民館に、この漫画本が並んでいるかどうかご存じですか。もしあれば、ぜひ、撤去するよう要請していただきたい。

足立勝美

あだち・かつみ 兵庫県立高校教諭、県立「但馬文教府」の長、豊岡高校長などを務め、平成10年に退職。24年、瑞宝小綬章受章。『教育の座標軸』など著書多数。個人通信「座標」をホームページで発信。養父市八鹿町在住。鳥取大農学部卒。

足立勝美氏は5月8日に死去しました。ご冥福をお祈りします。

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