交付金縮減に人口減…住民の絆育んできた地区公民館は枠組み含め曲がり角 地域支える新しい自治会像探り関係者苦慮

2025/02/10 18:00
大勢が詰めかけた妙円寺地区公民館の夏祭り花火大会=日置市伊集院
大勢が詰めかけた妙円寺地区公民館の夏祭り花火大会=日置市伊集院
 鹿児島県日置市は本年度から、小学校単位で26カ所ある「地区自治公民館」への地域づくり推進事業費交付金(ソフト事業交付金)を廃止した。地区自治公民館は、住民に身近な自治会でつくる広域組織だ。各種事業の見直しを迫られ、花火大会など中止したイベントや縮小した行事もある。市は将来の人口減を見据え、自治力の向上や地域活性化を担う人材育成を重視。来年度以降、地区自治公民館の枠組みを改め、再構築を模索している。

 東市来、伊集院、日吉、吹上の旧4町が2005年に合併した日置市。公民館を活用した健康づくりなど社会教育が充実していた吹上地区をモデルとし、2006年から各地に共生・協働の地域づくりを推進する地区公民館を設置した。

■総額半減

 市は、国からの借金である合併特例債を原資に基金26億円を積み立て、ソフト事業交付金に充当。ただ、借り入れは25年度に終了するため基金が枯渇する恐れがあり、同交付金の廃止に至った。

 昨年度までは地区公民館が抱える人口規模に応じて、市から年間約180万~790万円、計6000万円のソフト事業交付金のほか、主に市の一般財源から人件費などに使う地区自治公民館活性化事業交付金約3540万円の計1億円超を拠出していた。

 市などによると、人口規模が同程度の出水市だけでなく、1.5倍を超える人口の姶良市を上回る手厚さだった。本年度からは活性化事業交付金に一本化し、総額は約5000万円とほぼ半減した。

■「つながり薄れる」

 「花火打ち上げを続けないと、住民のつながりが薄れ、吉利がすたれるとの声はあった。ただ、高齢者の見守り事業など優先すべき事業がある」。2010年以降続けてきた8月の打ち上げを断念した日置市日吉の吉利地区公民館の永田信一館長(69)が語る。花火代は例年30万円を要し、大会の総事業費は計46万円かかる。ソフト事業交付金約260万円が削られ、本年度の交付金は例年の半分以下の175万円に減ったため、実施を見送った。

 ただ住民からの「地域で花火を見たい」との声は根強く、地元有志が寄付を募って秋祭りの際に打ち上げた。地区公民館は近く来年度の事業計画を話し合うが、自主開催は見送らざるを得ないという。

 2300世帯、約6400人が暮らす団地にある妙円寺地区公民館は、ソフト事業交付金の打ち切りを控えた23年度に特別部会を開いた。年間30に及ぶ事業内容や必要性を洗い出し、「活性化の取り組みがなえないよう従来通り活発に取り組む」ことを確認。交付金以外に、住民が自治会に支払う会費から月額200円を新たに調達、500円にした。自治会費は据え置いた上で122万円を集めた。

 毎年8月に地域内外から約3000人が詰めかける夏祭り花火大会では約850発を打ち上げている。ソフト事業交付金廃止を踏まえ、20を超える企業や団体から寄付を募り、例年同様に70万円を確保した。外部講師を招いた終活セミナーは市の出前講座を活用したり、報酬なしでの運営に切り替えたりした。有川誠館長(80)は「これから地区公民館をどのような形にするつもりなのか、早く示してほしい」と注文を付ける。

■難しい新規事業

 日置市日吉の扇尾地区公民館は本年度、花火打ち上げを取りやめたほか、恒例だった「深固院祭り」の規模を縮小、地区住民対象で開いた。「しんこ団子」発祥の地とされ、新型コロナ前までは住民が手作りする香ばしい団子を求め、買い物客が詰めかけていた。

 諸正隆志館長らは昨年、雑木が生い茂って立ち寄れなかった洞穴「蛇(じゃ)の窟(あな)」周辺を予算をかけずに伐採した。今年は巳(み)年に当たり、話題性が高い洞穴の整備協力に市が理解を示したのだ。観光客を呼び込むため、諸正隆志館長(68)は東シナ海を見下ろせる山頂周辺の伐採も目指しているが、「限られた予算では新規事業は難しい」と明かした。

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