小学生の頃に父の寝床にあったミステリ短編アンソロジーのひとつ。
小学生の頃にはこれに恐怖しながら頁を繰っていたものだが、そんな感性を持っていれば読書は楽しくて仕方ないだろうと思う。
作者もタイトルも覚えてないので、もう二度と会えない作品でもある。
ネタバレも糞もないけど以下あらすじ。詳細はたぶん色々と違ってるはず。
ビジュアルのよい若い女性である事もあってマスコミは色めき立ち、連日週刊誌やワイドショーで引っ張りだことなる。
当人のキャラクターと裏腹に作品の内容は重く暗いものだたが、選考委員を唸らせるだけの内容のあるものだった。
狂言回しの編集者はマスコミに出る女子大生の軽い言動と作品の乖離に違和感を覚える。
一方、彼女が写ってる写真や取材の映像で高頻度である男が背景に写り込んでいる事に気付く。
そんな事をしているうちに、彼女は受賞後第二作を発表、これも受賞作ほどではないが高い評価を得る。
このペースで内容の伴う作品を連続で書くのはベテランでも無理だろう、
何かあると調べて行くと、文藝マニアの知人が、彼女の二作品と戦後まもない頃にデビューして注目されつつも病か何かですぐに姿を消したある新進作家の作品との類似点に気付く。
その作家のデビュー作はそれなりに注目されたため巻頭で近影が掲載されたが、その顔は彼女の背景に写り込んでいる男の顔そのものだった。
そこに辿り着いた時点で、彼女が交通事故に遭い意識不明の重体とのニュースが飛び込んできた。出版社に第三作の一部を届けに行く途中の事故だった。
同僚の担当編集と共に彼女が搬送された病院に行き、ICU前で彼女の家族から聞いたその作品の内容は前二作と文体も内容もかけ離れたものだった。
「ある文学部に通う女子大生が授業のレポートで、何の気なしに戦後の頃のあまり知られてない作家を取り上げてみる事にした。
それから暫くしたある日、彼女の元に差出人不明で手書きの古びた原稿用紙の束が届く。どうやら文芸作品のようだ。
原稿と一緒に「これを世に出して欲しい」とのメッセージも入っていた。訝しんだが文芸方面で名のある出版社に投稿すると、その女子大生の素性も相まって大々的に売り出される事になった。
そこからしばらく、差出人不明で礼を述べる手紙等が届き、次に発表する用の原稿も届く。
女子大生は世間からちやほやされて浮かれてたが、送り主から「メディアに出過ぎるな」「露出を控えろ、喋り過ぎるな」と警告されるようになる。
彼女は常に監視されている事に恐怖を覚え、この事を世間に発表しようとする。」
話はその書き掛けで止まっていた。
そんな事を編集者たちが考えていると、ICUの扉が開き、そして告げられた。
「彼女が息を引き取りました」