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2024-03-30

ザコ園芸家の3月

3月園芸趣味とする人びとが待ちわびた季節。

柔らかな日差しに誘われて、国道沿いのホームセンターにカチコチに乾燥した水苔を買いに園芸趣味者たちが群がる季節。

大小さまざまな植物の即売イベントがいたる場所で開催されて、奇妙な蘭に、雄々しいユーフォルビアに、グルメ食虫植物に、大いなる眠りから目覚めた塊根植物に、それから…なんだかよくわからない多肉植物にも、冬の間に貯めこんだ札束が飛び交う季節。

園芸趣味者のXを見れば氷漬けだった2月の頃が嘘のような狂乱騒ぎが繰り広げられている。

だがタイムラインの百花繚乱をよそに、ザコ園芸趣味者はボサッとしていた。ザコ園芸趣味者だからだ。

ザコ園芸趣味者の朝は遅い。

起きたらベランダの窓を開け、曇天の続く空をギラリと睨みつけ、空気匂いを疑わし気に嗅いだあと「まだ寒い」と一言つぶやいて窓から顔を引っ込め、布団に再び潜り込む。

しかに、背後ではいよいよ植え替えせねばならないアンスリウムが列をなしている。だが!まだ今日はその日ではない。

植え替えは根に負担が掛かる。そこにこの3月花冷えが悪さをしたら…考えただけでも恐ろしい!春はともあれ、慎重が一番なのだ

から苦渋の決断を下し、布団の中でスマホを眺める。

じっさい、ザコ園芸趣味者の「庭」はこのapple社製の数インチスマホの中にあるといっていい。

立ち並ぶサムネイルは確かに春が到来していることを告げている。

同じころに園芸を始めたはずのあの人はいつの間にかマダガスカルから輸入されたベアルートの発根に取り組んでいるし、別の園芸素人自称するあのひとは自宅で細胞培養するための無菌培地づくりに悪戦苦闘しているらしい。

多肉植物のために家の隣の空き地を買って温室を建てたり、熱帯植物のために加湿器を鉢の数ほど並べてフル稼働させていたり、YouTubeを始めたり、3Dプリンターオリジナルの鉢を印刷していたり。

しかしザコ園芸者は焦らない。どうせまだ―何らかの不思議な力によって―私の家まで春は来ていないのだから

そうは言ってもせっかくの休みなので何か園芸趣味者らしいことをしたい。

うそう植え替えの準備をしなければ。赤玉土はまだあったはず…あれ、なんでパーライトが二袋もあるんだ?いやこりゃゼオライトじゃないか鹿沼土は中粒はあるが、小粒が無いな。しまったまた買ってこなくては。

ザコ園芸趣味者は去年の今頃の記憶を掘り返して何を揃えなければならないかリストを作る。自分の頭はどれほど掘り返しても「水はけがよく、水持ちがよい用土」にはなってくれない。

コストコレシートのように長いリストが出来たら、せっかくだから車で1時間くらいの大型園芸品店まで繰り出そう。

細君が椿を育てたいというから助手席に乗せて、行く途中でスタバによって、春限定のなんか良くわからない甘いやつをドライブスルーで買ってもいい。たいていピンク色をしている。

ところで、園芸趣味者はたいていのもの罹患している病気がある。うどん粉病と、この世のすべてのもの園芸用品に見える病である

セリアメッシュキッチンツールスタンドを見ては「こういう鉢なら根腐れ防止にいいかもしれん」と唸り、アウトドアショップの合わせ焼き網を見ると「間に水苔を挟んだら立派な着生材だ!」と喜び、食器を見ると「味のある素晴らしい器だが…残念なことに底に穴が開いていないな」と心底悔しそうにする。

一切万事がそんな具合だから、ほんもの園芸店に入るとしばらくは感動で身震いが止まらない。

買わなければならない諸々のリストをほっぽり出して店内の隅から隅まで踏破しなければ気が済まない。

ついてきた細君は腕組み位置がどんどん高くなる、が、あの高さならまだ大丈夫。先週はフランフランで同じように待たされたのだから、気にすることはない。

散々待たせた挙句、買ったのは近所のホームセンターでも買える用土の類ばかりだ。

あきれて無口になってる細君に向ってザコ園芸趣味者は満足げに言う「立派な亀甲竜があったね!うちのほどじゃないけど」

家に帰るとザコ園芸趣味者は買った椿に水をやる細君に講釈を垂れるのを忘れない。

「おやおや水をやるときはちょろっとじゃいけないよ。鉢底から水がしっかりあふれるまでじゃないと。そしてよく乾くまで水をやるのは辛抱すること。今日買ったのは花芽のついた枝差しから今年は開花するだろうけど来年からは…」

すべての講釈を聞き流した妻が適当に世話をした椿がつぼみを綻ばせるころになっても、ザコ園芸趣味者が丹精込めて世話をするオペルリカリア・パキプスは休眠からなかなか目覚めてくれない。

そんな感じでザコ園芸趣味者の3月は終わってゆく。

2023-09-15

anond:20230914182108

胡蝶蘭、最高だよね。

すぐ枯らすという人は大抵は根腐れが原因。胡蝶蘭のあのラピュタみたいなカッコいい根っこは、水を吸うだけじゃなくて、空気中の窒素を固定する菌が共生している場所でもあるの。だから、水に触れる必要もあるけど、ほどよく空気にも触れる必要がある。空気に触れないと窒息しちゃう

うちでは根腐れて死にそうな子は、コルクの樹皮に一握りの水苔と一緒にくくりつけて窓辺にぶら下げている。よく売っているビカクシダみたいな感じ。水苔がカサカサになったら(2日に一回くらい)適当に水をかけて、週に一回は水をはったバケツ10分くらい浸けて水を飲ませている。たまにバケツの水にハイポネックスを入れてやると、翌日に急に葉っぱが伸びたりしてかわいい。この育て方だと超元気になる。根っこがのびてくると、コルクの樹皮を自分で抱えるみたいになっていい感じだよ。毎年ちゃんと花が咲くけどぶら下がって咲くから支えの棒もいらない。

今、白くて大きい花を咲かせる胡蝶蘭が三株ぶら下がっている。花が咲いている時は圧巻。うちの子たちは2月から8月ごろまで咲き続けるよ。

2023-09-14

胡蝶蘭かいう狂った植物

胡蝶蘭自体が狂ってる訳じゃないんだけどね(蘭の生態がユニークであるということは同意する)

狂ってるのは値段だ。

一般的開店祝いなどで送られる贈答用の胡蝶蘭は花が一つついている毎に5000円くらいの価格がする。

5つ花がついていれば2万5千円とか。

かなりの高級植物だ。

そんな胡蝶蘭も当然植物なので花が終わる。

花屋などに仕入れられ、売れ残ったまま花が終わってしまった胡蝶蘭いくらで売られているか知っているだろうか?

概ね300~500円だ。投げ売りにもほどがある。

ついこの前まで2万5千円で売られていた植物が300円で買える。狂ってる。

大体、2万5千円で売られているときのあの着飾ったような仕立て方は、胡蝶蘭植物としての魅力を損なっている。

花の数で値段が決まるなんて馬鹿げている。花なんか飾りだ。

胡蝶蘭は何といってもビシッとした濃緑の葉っぱ。そしてタランチュラのような獰猛な根っこが魅力。

特にこの根っこはすごい。根っこを水苔で包んで板付けしてみればその良さを感じられるだろう。

わっさーーーーーーーー!!!とぶっというどんのような根っこが生えてきて、さながら天空の城ラピュタ

こんなにかっこいい植物中々無い。

上手く育てれば来年も花が楽しめる。

とにかく、花屋さんで日の当たらない適当場所投げ売りされてる胡蝶蘭があったら買ってみてほしい。

ワンコイン以下で、根っこも葉っぱも花も楽しめる最高の植物。それが胡蝶蘭

2022-01-28

シンボルツリー ビカクシダ

部屋にはシンボルツリーとなる大きな植物ひとつ置くとぐっとオシャレになる。シンボルツリーというくらいだから存在感のあるサイズ必要なので、当然、部屋のサイズに比例してシンボルツリーサイズは大きくなる。大体、六畳部屋でも8号か9号か・・・10号鉢くらいの植物でないとシンボル存在にはならないだろう。とすると、重さもそれなりで陶器鉢になると鉢だけで10キロにもなる。最近では鉢の下に置いて移動できるキャスター販売されているが、キャスターに乗せる作業で腰を抜かしそうだ。ビッグサイズを置きたいものの、そんなことを思い、私はシンボルツリーとなる植物も置かず、日々、気分屋な私の模様替えに簡単に付き合ってくれるサイズ植物たちと長らく生活していた。

あるとき山梨旅行した際に掛川花鳥園へ立ち寄る機会があった。大の鳥好きの私は存分に鳥とふれあい、帰ろうとしたときに出口付近の園芸ショップで大きな緑の葉が目に止まった。コルク板に張り付いて前方に約40センチほど胞子葉を伸ばしたビカクシダだった。値札には3000円、そこから更に2割引で2400円・・・なんという地方価格。ビフルカツムとはいえ、このサイズがこの値段で手に入ることは大阪ではまず無いだろう。気付いたらレジに並び、列に並ぶ後ろのおばさんと2割引っていいですよねぇと微笑みあっていた。

それから3年、我が家のビカクシダは年中休みなく胞子葉と貯水用を交互に増やし続け、前方だけに留まらず、左右と上方へも50センチ近く胞子葉を伸ばし、立派な姿になった。鉢と土の代わりにコルク水苔管理しているこの大きくいびつ植物はなんと重量1キロ未満だ。まさに私の追い求めていたシンボルツリーである

 
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