以前コンサルティングをしていた巨大企業にS島さんという中国ビジネスの達人級のプロがいた。Sさんは、中国政府、中国共産党、企業、大学に独自の人脈を持ち、Sさんなかりせばその会社の中国ビジネスはまったく進まない状況だった。 その会社は、第二、第三のS島さんを育成しようと躍起になっており、その教育プログラムづくりの一環としてS島さんの能力特性・行動特性を調べてくれと筆者に依頼してきたのだ。 Sさんには、リーダーシップ、対人関係能力、イニチアチブといったコンピテンシーには人を抜きんでたものが備わっている。しかし彼に潤沢にあって、他の中国ビジネス担当者に不足しているものは、ある種の濃密な中国古典と中国社会に対するインテリジェントなオリエンテーションだった。 彼は10代のころから漢文、漢籍に親しんでいて、中国の要人と接するたびに仕事のことはさておき、中国古典に関する意見、知見を交換してきたのだ。わから