インパクトのある副題だ。登場人物が物語の中で「突然歌いだす」ことはミュージカルに慣れない人が一番面食らうところ(自分もそうだ)で、その問いに答えてくれるのかと思って手にとって読んでみた。本書はコンパクトな新書だが、ヨーロッパにおける音楽劇史を抑えた上で、アメリカでそれがどのようにミュージカルとして成立していったかが丹念に追われる。案外ガチガチの歴史書なのだ。 期待は半分外れていて、半分当たっていた、というべきか。「なぜ突然歌いだすのか」というキャッチーな副題から、初心者向けにおもしろおかしくミュージカルを解説してくれる本かと思ってしまうのだが、そういうライトな読み味を想定すると面食らうかもしれない。一方で、そのように語られるミュージカルの歴史自体がとてもおもしろい。ある時期にはアメリカの音楽ビジネスの要として、流行歌を生み出す一種のメディア(ロックンロールにおけるラジオみたいなもんである)
ゴシックからブラックへ、アフロ・マニエリスムの誘惑── “暗黒批評”家が紡いだ異貌の黒人音楽史|後藤護 『黒人音楽史 奇想の宇宙』インタビュー 黒人音楽の精神史をひもとき、アフロフューチャリズムも飛び超えるアフロ・マニエリスムが浮き彫りにする新たな黒人文化論。気鋭の“暗黒批評”家・後藤護の新刊『黒人音楽史 奇想の宇宙』をめぐって。 気鋭の“暗黒批評”家・後藤護が新刊『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社)をひっさげて、従来の黒人文化やブラックミュージックの歴史を挑発した。 2019年刊のデビュー作『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン)では、日本ではお馴染みの耽美的なゴス趣味を縦横無尽な博覧狂気ぶりで凌駕して大きな話題となったが、今回は肉体偏重が横行する黒人文化のパブリックイメージを覆し、知性と暗号と隠喩から奇想の宇宙に彩られた地表の下に眠るディープ・ブラックネスの系譜を掘り起こす。
上野千鶴子/鈴木涼美『往復書簡 限界から始まる』 幻冬舎plusで立ち読み・購入 Amazon 楽天ブックス 紀伊國屋書店 セブンネット 「上野さんは、なぜ男に絶望せずにいられるのですか」? 女の新しい道を作った稀代のフェミニストと、その道で女の自由を満喫した気鋭の作家が限界まできた男と女の構造を率直に、真摯に、大胆に、解体する。 「エロス資本」「母と娘」「恋愛とセックス」「結婚」「承認欲求」「能力」「仕事」「自立」「連帯」「フェミニズム」「自由」「男」――崖っぷちの現実から、希望を見出す、手加減なしの言葉の応酬! 幻冬舎plusで立ち読み・購入 Amazon 楽天ブックス 紀伊國屋書店 セブンネット 鈴木涼美『愛と子宮に花束を 〜夜のオネエサンの母娘論〜』 幻冬舎plusで立ち読み・購入 Amazon 楽天ブックス 紀伊國屋書店 セブンネット 「あなたのことが許せないのは、 あなたが私が
「モーツァルトよりメタリカを聴け!」 脳科学者・中野信子の最新刊『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』がKADOKAWAから2019年1月30日に発売されます 以下プレスリリースより サイコパスからいじめ、不倫まで、人間社会のさまざまな事象を読み解いてきた脳科学者・中野信子が次に選んだ驚きのテーマ。 それはヘヴィメタルです。 重く激しいサウンドとダークな世界観で熱狂的なファンを生む一方、その音楽性やスタイルゆえに世間から疎まれがちなヘヴィメタル。しかし様々な研究によって、このサウンドが持つ“効能”やファンの特性が明らかになった結果、世界中の科学者からポジティブな評価を得るに至っています。 -ヘヴィメタル- その特徴を端的に表すと「天才が好み、天才を育む音楽」であるということ。“良識的”な人々が眉をひそめるヘヴィメタルには、認知機能や知的好奇心、ストレス耐性の向上など、知育に欠かせない数々の効
特別鼎談:大谷能生×鈴木淳史×栗原裕一郎 「音楽」で読み直す2010年までの村上春樹・前編 『村上春樹の100曲』の発売を記念して、2010年に発売された『村上春樹を音楽で読み解く』(日本文芸社)に収録された、大谷能生さん、鈴木淳史さん、栗原裕一郎さんによる鼎談を特別公開します。『村上春樹の100曲』とあわせて読むと、この8年間で村上春樹の作品中の音楽の扱いがどのように変化していったかがわかるかもしれません。それでは、じっくりとお楽しみください。 栗原 えーと、まずはお疲れさまでした。今回は実は、大谷さんに無理を言って村上春樹を読んでもらったんだよね。 大谷 頑張りましたねー。全部読みましたよ。 栗原 短篇まで? 大谷 短篇も。ほぼ全部。 栗原 えらい!(笑) 鈴木 それまでは全然? 大谷 読んでないですね。でも『1Q84』のBOOK1でやめました。そこで力尽きました。どうせ先を読んでも同
kenzee「今さら「定本・風俗営業取締りー風営法と性・ダンス・カジノを規制するこの国のありかた」永井良和(河出ブックス)を読んだ。日本の風俗営業を取り締る風営法、正しくは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」を巡る歴史と問題系を一冊にまとめたもの。無論、近年の「クラブ規制」問題にも触れている。法律にはマッタク無知はボクだけど、普通に「ラブホテルとシティホテルを分類する基準」とか近年、爆発的に増殖している無店舗型風俗、ホテヘルやデリヘルはナゼ認可制ではなく届出制なのかとか2015年の風営法改正で「ダンス」が法律の条文から消えたってんで音楽関係者快哉をあげたワケだけど、その代わり「遊興」というそれまで風俗取締りになかった概念がでてきて余計にどうなの的な状況のクラブ規制問題とかいろいろ面白い本でした。そこでね、ボク、新しいビジネスを考えたの! 聞いてくれる?」 司会者「(ハ、ウサン
さて本編ですがソ連電子音楽の元祖、ヴィチスラーフ・ミシェーリン。あのガガーリンも宇宙でミシェーリンの音楽が頭で流れたほど、ソ連で人気。 いきなり2番目に出てくるのが、ハバロフスク近郊のナナイ族出身の口琴テクノ、コーラ・ベルドィ。見た目がジミー大西風で、それだけでインパクトあります。本人は意図せざる民族音楽テクノみたいな事になっていました。 ソ連では有名ミュージシャンが欧米の人気曲を、クレジットを表記しないで自分たちのオリジナルソングとして発表する事も横行していました。情報が限られていたのでバレにくいという事もありますが、そもそも著作権の概念も曖昧で、当局も西側の音楽を「退廃的」だとして非難していたからです。
小学生の頃、同じマンションに住むピアノの先生の家に週に一回、通っていた。自分の家にピアノがないのに習うというのは、今考えるとかなり無謀な挑戦だった。練習に使用したのは、赤い表紙のバイエル教則本。正直、つまらなかった。赤を終えると黄色になったが、依然としてつまらなかった。同じことの繰り返しで飽き飽きした。 少し楽しくなってきたのは、父親が電気オルガンを買ってくれてから。発表会に向けて課題曲も決まった。テオドール・エステン作の「人形の夢と目覚め」。静かでゆったりとしたメロディーで始まり、途中から軽やかなテンポに変わる。まさに眠りから覚めた人形が突然踊り出すような可愛らしい曲だった。 転居先の町でも引き続きピアノ教室に通った。だが、私のピアノはここで練習したチェルニー教則本で終わる。シャープやフラットの数が増えてわけがわからなくなったためだ。いや、もっと決定的な理由がある。ラジオから流れてきたビ
音圧アップのためのDTMミキシング入門講座! (DVD-ROM付) 作者: 石田ごうき 出版社/メーカー: リットーミュージック 発売日: 2014/08/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ぱっと見のカジュアルな体裁と「音圧アップのための」という枕から受けるお手軽感とは裏腹に、その実、非常に堅実で実践的な内容でちょっと驚きました。ミキシングの本というと、エフェクターを一通り説明したうえで、各エフェクトをどんな場面でどんな風に使うか、という点に終始しがちですが、本書で扱うプラグインは基本的にEQとコンプのみ!空間系エフェクトはあくまで補助的なものであり、フェーダーとイコライジング、ダイナミクスコントロールこそがミックスの基本と言えます。頭では解ってはいるものの、なかなか修得が難しいこの題材にガチンコで挑む良書です。 個人的に、特にポイントと思われる点を四つ挙げておきます。
異端のパンクレーベル「殺害塩化ビニール」を主宰するザ・クレイジーSKB(通称バカ社長)が自身の活動30周年突破を記念して『狂人白書 ザ・クレイジーSKB&殺害塩化ビニール伝説』を10月27日に上梓する。ライターの藤谷千明氏が、クレイジーでありつつもどこかユーモラスな彼のキャリアに迫る。 ーー「狂人白書 ザ・クレイジーSKB&殺害塩化ビニール伝説」が発売されますが、この本を作るきっかけを教えて下さい。 ザ・クレイジーSKB(以下SKB):「狂人白書」の構想は2007年からあったんですけど、3年前に「社長の30周年記念で本を出さないか」という話があって、「資料とかめちゃくちゃ多いから大変ですよ」「面倒臭いから嫌です」って言ってたんです。でも「いや、やりましょう」と編集者から口説かれて。自分ではやりたくないから「資料渡すんで、そっちでまとめてくれるんだったらやりましょう」っていう流れでOKしてプ
フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書) 作者: 浦久俊彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/12/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る Kindle版もあります。 フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか(新潮新書) 作者: 浦久俊彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/06/20メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 内容(「BOOK」データベースより) リサイタルという形式を発明した「史上初のピアニスト」フランツ・リストは、音楽史上もっともモテた男である。その超絶技巧はヨーロッパを熱狂させ、失神する女たちが続出した。聴衆の大衆化、ピアノ産業の勃興、スキャンダルがスターをつくり出すメカニズム…リストの来歴を振り返ると、現代にまで通じる十九世紀の特性が鮮やかに浮かび上がってくる。音楽の見方を一変させる一冊。 な
本書はその名のとおり、ファミリーコンピュータ以降のゲーム音楽の歴史を辿った概説書である。また紹介される音源の情報はすべて巻末のリストにまとまっているため、ゲーム音楽のレコードガイドとしても機能するだろう(絶版となっているCDは多いが)。 本書はその名のとおり、ファミリーコンピュータ以降のゲーム音楽の歴史を辿った概説書である。また紹介される音源の情報はすべて巻末のリストにまとまっているため、ゲーム音楽のレコードガイドとしても機能するだろう(絶版となっているCDは多いが)。 各章のタイトルにはそれぞれの世代ごとのメジャーなハードの名前が冠されている。また、それら以外のハードやアーケードのゲーム音楽にもふれている。歴史概説以外には植松伸夫、古代祐三、崎元仁という著名なゲーム音楽クリエイターのインタビュー、本書で登場した出来事の年表等が巻末に掲載されている(登場する作曲家の名前が多いため、敬称略と
本書は、2000年代以降のジャズを積極的に紹介した音楽ガイドである。監修をつとめた柳樂光隆は、『クロスビート』の最終号に「ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズのファミリー・ツリー」という記事を書いているが、本書はその記事をさらに展開した本だと言える。ジャズの新しい潮流をフォローした内容なので、最近のジャズに明るくない人などは、ぜひ新しい音楽と出会ってほしいと思う。僕自身も、聴いていない盤はこれから順々に聴きたいと思っている。しかし本書の意義はそのようなディスクガイド的側面だけにとどまらない。本書は、単なる音楽紹介以上に意欲的で挑発的で批評的だ。 重要なミュージシャンとしては、やはりロバート・グラスパーが挙がる。グラスパーは、『Black Radio』シリーズがヒップホップなど一部のクラブ・ミュージックのファンに支持されている一方、ジャズ・リスナーからは批判も多く、それ自体挑発的な存在で
当初の予定より少しずれこんでしまったのですが、4月4日取次搬入で無事発売の決定した新刊『オルタナティブロックの社会学』。この本は本当に、ポピュラー文化研究のメルクマールとなる記念碑的な一冊であり、研究者のみならずすべてのロック音楽を愛する人に読んでもらいたい、絶対的な自信作に仕上がっています。 改めて玉稿をくださった著者の南田先生に感謝申し上げるとともに、一人でも多くの方にこの素晴らしい本をお手にとってもらうべく、今回はこの本のお話をさせていただきます。 表題に「ついに」とあるのは、この本の出発が3年前にまでさかのぼるからです。担当編集である私が初めて著者の南田勝也先生(武蔵大学社会学部教授)にお目にかかったのは、2011年も終わりに近づいたころ。仕事柄大学の先生とお会いすることは多いのですが、ロック研究者(ジョン・ロックではなくロックミュージック!)とはどのような感じの方なのだろうとドキ
「デヴィッド・ボウイ、絶対に読むべき100冊を発表」 http://ro69.jp/news/detail/89822?rtw この記事を参考にし、邦訳が刊行されているものについてリストアップしました。 (翻訳家の牧原勝志様、作家の図子慧様、Twitterアカウント @r_vert 様がご協力くださいました♪) 読書の秋に、素敵なリストをありがとう、ボウイ様!! ボウイ様100選のブックフェアなどいかがでしょうか? > 書店さま ※間違いや、「邦訳なし」としていても実は邦訳があるよ、などという本がございましたら、Twitterの @kazuyo_fuku またはFacebookの https://www.facebook.com/fukudakazuyo までお知らせくださると嬉しいです。 それでは、良い読書タイムを!! The Age of American Unreason, Susa
アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで (講談社選書メチエ) 作者: 大和田俊之出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/04/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 8人 クリック: 92回この商品を含むブログ (53件) を見る 大和田 俊之のアメリカ音楽史読了。 アメリカ音楽というのは他者に偽装することである。黒人が白人のふりをしたり白人が黒人のふりをしたりと単純な構造もあるが、ヨーロッパ社会においてあまり良い印象を持たれていなかったユダヤ教徒が白人になるために黒人の仮装をしたり、白人が黒人を演じていたのにいつのまにか黒人がその役割を担うようになったり、他者に"偽装する"というテーマで複雑に互いの文化が混淆していく構造がある。 1950年代に入り、ビルボード誌のチャートでそれまでみられなかった動きが目立つようになる。当時の業界はポピュラー音楽の三
このドメインは お名前.com から取得されました。 お名前.com は GMOインターネットグループ(株) が運営する国内シェアNo.1のドメイン登録サービスです。 ※表示価格は、全て税込です。 ※サービス品質維持のため、一時的に対象となる料金へ一定割合の「サービス維持調整費」を加算させていただきます。 ※1 「国内シェア」は、ICANN(インターネットのドメイン名などの資源を管理する非営利団体)の公表数値をもとに集計。gTLDが集計の対象。 日本のドメイン登録業者(レジストラ)(「ICANNがレジストラとして認定した企業」一覧(InterNIC提供)内に「Japan」の記載があるもの)を対象。 レジストラ「GMO Internet Group, Inc. d/b/a Onamae.com」のシェア値を集計。 2023年5月時点の調査。
kenzee「ボクはレコードのジャケットがたくさん載ってる本が大好き。ジャンルは問わず。その手の本を音楽聴きながら日がな眺めて一杯やるのが幸せな時間だヨ。最近ヒットしたジャケ本はコレ。「ラグジュアリー歌謡」(DU BOOKS)。 こんな中身。 いったい「ラグジュアリー歌謡」ってなんだんねん。こういう定義のよう。 おもに80年代の、バブリーな予算と楽曲のクオリティが幸せな正比例をしている音楽。テレビドラマ、アニメ、CMなどのブラウン管から浴びた、お茶の間感覚の親しみやすさもありながら洗練された楽曲。どうしても漂ってしまう上品さ。アイドル歌謡でありながら、洋楽志向のジャパニーズ・ポップスだけがもつ、カフェではなくパーラーな感覚……。そうした要素を「ラグジュアリー」という言葉に込めたつもりです。(前掲書・まえがき(藤井陽一)) マ、言わんとするところはわかります。シティポップスとなにが違うの?と
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