以下の文章は、1994年末、愛知県で起きた「いじめ自殺事件」の直後に、「いじめ」の当事者である全国の中高生を読者に想定して書かれ、いくつかの出版メディアに持ち込まれたが、「過激すぎる」などのトンチンカンな理由で、結局発表する機会を得られないまま現在に至ったものである。その後「いじめ」問題を扱った出版物が何十冊と刊行されたが、もしこの文章が執筆直後に、つまり「いじめ」論議ブームの早い段階で公にされていたならば、その内容はまったく別の展開を見せたに違いないと悔やまれてならない。 オウム事件について、吉本隆明はこんなふうに書いた。 「わたしは自民党と社会党が差異を失って浮遊しながら国政権を掌握している現在の政治社会状況と、サリンによる無差別殺傷が犯罪として出現してきたことと、大手の新聞やテレビ報道機関が無差別に法的確定の以前の段階で特定の個人や集団を犯罪者として葬ろうとする出鱈目な言説をふりまい