性質がそっくりな水と「重水」を従来の100倍以上の効率で分離できる多孔性材料の開発に世界で初めて成功したと、京都大の北川進特別教授らの研究グループが発表した。重水は原子炉で核分裂を起こしやすくする材料(減速材)として使われるが、分離に莫大(ばくだい)なコストがかかる課題があり、実用化が期待される。研究成果は9日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。 活性炭などに代表される多孔性材料は極小の穴(細孔)が無数にあいた物質で、細孔にガス分子を吸着する性質を持つ。研究グループはこれまでに、細孔の構造やサイズを自在にデザインできる多孔性材料の一種「多孔性金属錯体」を開発。また内部に開閉する扉(ゲート)の役割を持つ分子を組み込み、流れを制御することで特定の分子を分離・貯蔵する仕組みの構築にも取り組んでいる。 自然界の水の中に約0・02%の割合で含まれる重水は、原子炉や放射線治療の減速材、科学研究の