彼氏のいびきはすごい。 鶏を絞め殺すときのような、地をひっくり返そうとしているような、そんな音がする。 一緒に暮らそうと言われたのが先々月の中盤、必要なものだけ持って彼氏の家に転がり込んだのはその一ヶ月後。 これでおはようからおやすみまで一緒だ〜と浮かれていたのは最初の日のそれも昼の間だけ。 夜になってから一気に一緒に暮らしていく気持ちがしぼむ。 うるさい、うるさすぎる、この人と一緒に生きていけないかもしれない。 うるさいのは知っていた。連泊だってした。 その時も寝れなくて、でも一緒に居られることが嬉しくて、そして自分の家に帰ってから寝れるのが嬉しかった。 しかし今は一つしかない勢いで買ってしまったセミダブルのベッドが私の寝床だ。 隣には必ず彼が寝ている。 まだ一緒に住んで二週間も経たないのにもう別れることを考えている。 毎日たいして役に立たない耳栓を詰め直しながら白んでゆく空を眺めている