原発事故 残留汚染の危険性 [著]武田邦彦[評者]長薗安浩[掲載]週刊朝日2011年6月3日著者:武田 邦彦 出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 1,050 ■原発推進派の客観的な視点 東京電力の福島第一原発で事故がおきた直後から、ネット上では武田邦彦のブログが注目されてきた。私も何度となく読んでみたが、そこには今回の事故の原因分析をはじめ、日本における原子力開発の根本問題、放射性物質の影響などに関するレポートが記されていた。時々刻々と報道される被害状況をふまえ、武田はデータやグラフも添えて丁寧なコラムを書きつづけた。それらの内容は、素人が読んでもわかりやすく、客観的な視点に立っていると感じられるものだった。 だが、そもそも武田は原発推進派の科学者である。最近では環境学者としてテレビにもよく登場しているが、かつては旭化成のウラン濃縮研究所の所長や内閣府原子力安全委員会の専門委員をつとめた。本