外国為替市場で、一時は1ドル=109円台に乗せ、リーマンショック前の水準まで円安が進んだが、日経平均株価はあまり反応しない。1万6000円台には乗せたが、その後は一進一退だ。これについて日銀の黒田総裁は「何か大きな問題があるようには思っていない」とコメントし、当面は見守る考えを示した。 しかし国際協力銀行の渡辺博史総裁は「これ以上円安になること自体がどちらかというとマイナスになる産業が増えてきている感じがする」と述べ、岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)はブルームバーグのインタビューで「これ以上の円安は自国窮乏化になる」と指摘した。 普通は、為替レートの切り下げは「近隣窮乏化政策」と呼ばれる。輸出品の外貨建て価格を下げて、輸出は増えるが、他国の輸出は減るからだ。しかしこれは古典的な貿易だけを考えた場合である。現代のグローバル企業は生産拠点を全世界に置いているので、本社のある国