ふだんは会議室に使っているという広い部屋に、ケータリングの食べものと軽いアルコールの匂いが満ちていた。戦前の建物を造り替えたのだそうで、床は焦げ茶に変色した木材だった。それは大量の靴の通った様子を残していた。視界の端に同じ会社の後輩の姿が映った。若い男から熱心に話しかけられている。 部屋にいる私たちはみんな同じような仕事をしていて、だから同じような苦痛や苛立ちを抱えていた。そういう話題があれば初対面でも親しいような気になれる。 同じような仕事をしていて、だからそれがもたらす美しい感情をもとに親しい会話ができるかというと、そういうことは少ない。時たま誰かが(私ななんかが)仕事の好きなところを口にすると、ほかの人たちは無知な子どもを見る目でほほえみ、いいですねと言う。そのあとのことばに排斥のほかの意味はない。いいですね、若いって。いいですね、優秀だからでしょう。いいですね、運がいいんですね。あ
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