細胞の増殖を促す新しい物質を投与して、大量の放射線を浴びたマウスの延命に成功したと、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)などのチームが3日、発表した。 浅田真弘主任研究員は「作用のメカニズムや安全性を調べた上で、今後万が一原発事故などが起きた際に薬として使えるようにしたい」と話し、放射線被ばくによる健康被害の予防や治療の薬剤開発に期待している。 チームは、がんの放射線治療後の副作用を治すために米国で使われている薬に注目。この薬の成分に似た構造をもつ別の2種類の物質の遺伝子を使い、体内のあらゆる細胞で安定的に働く新たな物質をつくった。 実験では、マウス8匹のグループに致死量の8シーベルトに相当する放射線を浴びせると13日後に全てが死んだ。しかし、あらかじめこの物質30マイクログラムを注射したグループは、全て死ぬまで19日かかった。