かって丸山真男は、自らの日本政治思想史研究を「本店」とし、時事的な発言を「夜店」と称した。そして日本経済思想史を「本店」とし、時論的な活動を「夜店」として精力的に活動した人物を、僕は少なくとも四人知っている。四人とは、元同志社総長であり日本経済思想史の先駆者であり戦前から戦後まで広汎なジャーナリズム活動を行った住谷悦治、その子息であり河上肇研究や民族学研究まで幅広い「日本学」の探求をしつつ、戦後の平和活動や経済問題について発言し続けた住谷一彦氏(立教大学名誉教授)、そして本書(『石橋湛山の経済思想』)の著者であり元東京外国語大学学長の長氏である。最後の四人目は想像におまかせする*1。彼らの「本店」と「夜店」をめぐる活動は、日本の経済学者の活動の中でも特異点を形成している。丸山がそうであったように、しばしば「夜店」は「本店」を飲み込み、「本店」の評価とその影響をも決定してしまう。もちろん「本