新型コロナウイルスというグローバルな感染症が脅かすのは、私たち一人一人の身体だけではない。政治学には古くから、一つの政府の下に統合された国民と国家を人体に例える概念がある。body politic、「政体」という考え方だ。グローバルな感染症はこの政体をも脅かす。日本も例外ではない。 (上智大学国際教養学部教授=中野晃一) 新型コロナウイルスの脅威に直面した日本の政体、とりわけ人体に例えると頭部に当たるであろう安倍政権に、これまで表れた“症状”を整理すると、第一段階は「水際作戦の幻覚」が見られ、第二段階では「国内外から批判を受けたことによる“発熱”」と「感染対策のコストとリスクを他者に押しつける外部化衝動」が観察される。このように病に侵されている日本の政体は、私権制限を伴う緊急事態宣言を可能とする特措法成立がとどめとなって、いよいよ死に至るかのようである。 ▽軽視された国内感染 第一段階では